流石に、こんなムードなので店が静かになってきました。ということで、前々からやってみたかったレンズ形状の変更をしました。
初めはこんな感じで納品されています。オーバルです。
メーカーさんの提案のオーバルもバランスが良くて、一旦満足していたのですが、月日が経つにつれて、まだあるだろうと。もっといいパターンが存在するだろうと燻りはじめまして、ずっと考えていました。
気になっていた点は2つでして、
⑴ブリッジ全体の位置
⑵ブリッジの縦のラインのソリと、レンズの鼻側のラインの一致具合
この2つです。
まず⑴に関しては
以前の持ち込みのヴィンテージをとりあえず参考に。ブリッジの一番上のラインが、リムのトップラインよりも下であってもおかしくは無いです。歴史的にも、見たバランス的にも。
ただし、元ネタの80年代のダンヒルではどうなっていたかを、もう一回振り返りますと
リムとほぼ同じか、ちょっとブリッジの方が上かなぁくらいです。この、凛々しくバキッと反り上がった感じ、ブリッジが引き起こす目線の移動を考慮に入れますと、確かにブリッジを上の方に配置した方がダイナミック且つ、自然な気もしてきます。
というわけで、ブリッジを上に配置しても不自然で無いレンズシェイプにするという制約条件が、⑴で加わります。
⑵は、元々のブリッジのデザインと他パーツとのバランスに、もっと尊敬を置こうというところから思い至っています。
もう一度、先ほどと同じ写真を載せました。ブリッジのラインが先に決まってレンズの形が決まったのか、レンズの形があってそれに沿うようにブリッジのラインを決めたのかは判別がつきません。一つ分かるのは、写真のこの部分に限れば、やはり元々のラインが一番しっくりときて美しいです。
ただ、アレコレ操作してみると分かるのですが、この鼻側のラインを尊重すると、割とレンズシェイプの変更が効かないです。とにかくいい形が浮かばない、仕上がらない、全然ダメという感じです。なので、ラインの完全一致とはいかないまでも、オーバルよりも、一層ピッタリとブリッジとリムのラインが沿った感じにするという制約を⑵で加えるということにして、最終的に、新しいレンズの形をどうしようかと悩みました。
そこで、今回はこれらを使いました。
前データで頂いた、AOのカタログです。これのS-104が先ほどの条件⑴⑵を満たすかなと思って、手で型板を削ろうと思っていたところに、この鉄の塊を頂き、尚且つラッキーでS-104と近い物がありまして、それからレンズをとりました。
カタログ中のS-104より、全体がウェリントンっぽいです。
ここが、コクの部分です。そういえばヴィンテージの眼鏡屋だったので、それを基にしました。おそらくこのブリッジも、30年代のデザインが基で、それに80年代の雰囲気と技術の飛躍によって加えることができた立体感や鋭さが合わさっていますから、雰囲気は合いそうです。
ツーポのキャッチを弄ってもよいのですが、一旦そのままでレンズの水平が保てる位置で穴あけをして取り付けしました。制約がクリア出来ているかチェックします。
ブリッジのトップはややリムよりも下ですが、ほぼ一直線です。⑴は満たしていそうです。
⑵はどうでしょう。ややブリッジの下端とリムの幅が広がっていますから、ラインの完全一致とはいっていませんが、気になる程度では無いと思われます。どうですかね?ヴィンテージのレンズパターンを弄らずにある程度⑴⑵を満たしているのであれば、今回は個人的には万々歳です。
あとは、これは前も書きましたが手彫りのパターンは、ボシュロムの古いプレスパターンを基に、手で完全再現してもらっています。
鼻パッドのみチタンで、あとはサンプラチナの無垢です。ほぼ、劣化は無いでしょう。手彫りで工芸品のような要素も付加していますから、より保存されやすい形式に変換出来たかなと思っています。そこまでして初めて、何十年後かに次のヴィンテージとして加るのではないかと、そんな風に思うのでそこまでしています。