カテゴリー:無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

バッファローホーンカスタム第2弾
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

24.10.04

オール銀無垢のサーモントの改造第2弾です。前回同様、バッファローホーンによるテンプルエンドの差し替えと、特大鼻パッドの付け替えです。

第2弾はホーンの指定をしました。職人さんの所持しているバッファローホーンの中で、一番柄が多いのか何なのか、とにかく手持ちの中で一番荒々しい物で改造して下さいとオーダーしております。

ちょっと濁った感じのグレーなのか茶色なのか、カーキ色っぽいイメージ通りのバッファローホーンでした。ほとんど斑は入らず、良い職人さんで良い素材しか扱わないということなんでしょうね。荒々しさは無く、今回も非常に美しく仕上がりました。

やや濁りがある為、芯の透けが抑えられます。これの方が全体が美しく見えて良い気もします。

裏テーマ
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

24.09.25

テンプル裏に手彫りをしましたが、狙いは他にもありました。それがこれです。

テンプル裏に手彫りをする際に消えた、レーザー刻印を表側に再度施しております。

最後の最後で、もう一度工芸品からプロダクトに引き戻しております。本来は裏側にあるものが表にあるだけで強烈な違和感です。さらに違和感を高めるために、手彫りを裏面に施したというのも一理あります。

レーザー刻印が鮮明になるように画像を撮りました。実際はまあまあ分からないです。離れて見たらほとんど分からないと思います。その分かるわからないの具合も最適だなと思いまして、レーザー刻印を表に出してみました。

 

以前、工場に見学に行った際にレーザー刻印の説明を伺いました。そこでは、銀は光の反射率が高いため、レーザーの熱が入っていかない云々ということで、刻印ひとつ取っても難しいと伺いました。

難しいのであれば、せっかくだから前面に出したいよなぁとは考えていました。手彫り、プレス模様とは異なる第3の表現として、レーザー刻印による何かしらカッコいい装飾というものを模索していました。ヴィンテージにはあり得ない表現を会得するチャンスですしね。

そんなこんなで過ごしておりましたところ、昨年だったかフラグメントデザインとオークリーのコラボで、フロッグスキンが発売されました。それはテンプルの表にレンズサイズ等々の印字が施されておりました。ヴァージル・アブローの3%プロセスを彷彿させる、プロトタイプだったりプロダクト感を強調した格好良さが付加されておりました。

ファッションとしましては、やり過ぎない方がカッコいいのは重々承知の上で、私としてはちょっと物足りなさを覚えました。それは、上の画像のような検眼用のメガネの存在が頭の片隅にあったのかもしれません。カッコいいんだけど、この“NOT TO BE USED AS SUNGLASSES” はむしろ off-white 的でむしろめっちゃカッコいいんだけど。いずれにしても、メガネの印字をテンプル表に出すという、模様をデザインしないというデザインを施すとして、もう一捻り加えて何とかしたいなぁというところで、この着地となりました。

手彫りを後ろに下げるためにレーザー刻印を前に立たせたとも言えますし、レーザー刻印を際立たせるために手彫りをしたとも言えますし、それらの逆も言えそうです。いい感じに手工芸と工業製品が混じり合ったのではないでしょうか。

手彫り
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

24.09.25

畳みの姿を最大限に美しくするということで、テンプルの裏側に手彫りをしてみました。

フレームの要所要所が、割とシンプルな幾何図形で構成されています。半円のレンズ、半円のブリッジ、ピラミッドスタッズ(四角錐)等々。それに合わせて、模様は三角形とそれを埋め尽くす放射状に延びる線で構成された模様にしました。

モンドリアンパターンは、直線による分割と色と云々あるのでそれとこれとは本当は異なりますが、このメガネと手彫りの組み合わせではそれの実現を狙いました。フレームの構造と、あの柄が合わさったときに、あのような見ていて軽快な気分になるような、思わずリズムを口ずさんでしまうような感じに仕上がっていると思います。思って頂けるととても嬉しいのですが。

そして白々しく三角形と放射状…模様と書いておりますが、従来の模様で指定して手彫りをしています。この模様の名称は菱松模様です。言葉の響きや文字の力は凄まじくて、和の伝統的な柄という観念が擦り込まれていましたが、柄だけ眺めたときに結構ポップな感じだなと、つい最近気づきまして、今回テンプルの裏に彫って頂きました。何を組み合わせるかで意味が変わってくるというのは、今読んでいるラカンの本からの応用なんですけど、それはまた気が向いたら書きます。

今までのブルバキでしたら、テンプルの表に手彫りを施すところでした。ですが、このピラミッドスタッズのフレームの完成時に書いたブログの通り、このフレームでは「職場でバレずに掛ける」ということを目指しておりました。オフィスでは腕はスマートウォッチで控えめだけど、メガネは実はジュエリー寄りみたいな。そしてさらに、より一層のスリルとこっそり感を楽しむということで、手彫りで工芸品の要素を足しました。足すのですが、こっそり感の死守のため、裏側に秘めております。

別に悪いことしているわけでは無いんですけどね。何から隠れているのか、一瞬分からなくなるときがあります。お家に帰ってメガネを外して畳んだときに、その美しさが最大となる瞬間が訪れるようにしてみました。

眉の新色
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

24.09.13

作ってみました。銀無垢のサーモントの新色です。眉が黒マットです。

いまのマットブームにさらに乗ってみました。ただ、銀にしてもサンプラチナにしても、金属の肌理と光沢がやっぱり好きなんだよねってことで、まだまだ金属部分を積極的にマットな質感にするのは私には躊躇いがあります。この前のテレビの『マツコの知らない世界』における金特集も、ピカピカの光沢があるものが多かったですしね。貴金属のマックス光沢の、あの目が吸い込まれる感じが堪らないんですよね。

そんなこんなで、スッとそのまま波に乗らないのがブルバキです。ということで眉だけにしました。眉はプラスチックなので。砂うち加工でマット仕上げに。

現代的なラグジュアリー感がめっちゃ足されました。モノリシックな存在感が出ました。これはこれでめっちゃ良いですね。

 

自転車で通勤しておりまして、行き帰りの往復でジープの四角い車や、ベンツの四角いごっついのをぼちぼち見かけます。気にすれば確かに、あれはカスタムなのか純正カラーなのか、黒マットを見かけます。本当に全てがマットな場合もありますが、金具やらなんやら光沢を残しているバージョンを見かけまして、特にその光沢とのコンビネーションを何台か眺めたときに、黒マットが高級に見えるということが真に納得出来たんですよね。それでメガネも、もっとやってみようと思い立ちました。

直近のインスタの時計もそうですが、基本的には私はスコーンっと軽快にしたいタイプです。ミニ四駆は肉抜きしてなんぼの世代です。そして今回は自分の趣向とは逆をやってみようとしております。ちなみに、この銀無垢のサーモントの初披露時は、慣例通りの黒(光沢あり)と異例なクリアグレーを作りました。軽快さを目指したクリアグレーです。重厚感と軽快感で対比させて、実際にはクリアグレーの軽快感が強く打ち出されるようにしました。

クリアグレーと黒(光沢あり)。

参考にしたのはゴツい四駆でしたが、眉のカッティングが効いているのでメガネ全体としては現代のスーパーカーっぽい雰囲気になったと思っています。重厚感があり存在感強めですが軽快さが全て失われたということもなく、良い感じです。

2年ほど着用したフレームにも、黒マットの眉を乗せました。黒マットにするとあれですね、眉のカッティングのラインが際立ちますね。スッと左右に延びるのがよく分かります。それでスーパーカーみたいに見えるのかも。クリアや光沢ありのときは、ここまで正面視での眉のラインに目が向いていませんでした。

全部重くても軽くても良いですし、どこかを重くどこかを軽くでも良いですし、ぜひお好きにどうぞ。それこそ、上の2年着用のメガネは、眉がクリアグレーのときはライトブラウンのレンズでカッコいいなぁと思えたんですけど。黒マットにした途端、個人的には鮮やかな青とかで軽快さを足したいなと、結局バランス取りたいなぁとか思いはじめています。

 

重い腰が軽くなった今日このごろ
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

24.09.07

テンプルを交換しました。ケーブルテンプルオンリーで展開しておりましたが、モダン付きのテンプルも作ってみました。とりあえず各1本ずつ製作です。

最近の90年代ブームだったりY2Kブームだったり、何となくざっくりの所感としまして、着想源が古ければ古いほどカッコいいというわけでも無くなってきたということでしょうか。それとも元気なアラフォーの実感のある最も古い着想源としての90年代〜Y2Kということなのでしょうか。個人的にこの流れは、あの頃のミニ四駆がトミカになったり、楽しいことばかりで嬉しいですね。

今回載せました枠無しフレーム、もう4年か5年前?の開発の段階では、まさに古いほどカッコいいという価値に則ることを目指しておりました。80年代のフレームのブリッジからサンプリングをスタートしまして、あれこれ変えながら、完成の雰囲気が30年代のアメリカの枠無しメガネになるように、近代メガネの黎明期にあたる時代のフレームになるように作りました。古ければ古いほどのルールですね。

それから4・5年経ちまして、むしろ4・5年しか経って無いんですけど、世の流れも変わってきておりますし私自身の感覚も変わりました。ケーブルテンプルじゃ無くても良いかなと思えるようになりました。プラスチックパーツがある方が90年代のツーポフレーム感があります。ヴィンテージっぽいガチ感が薄まってライトな感じが今は逆に良いのかなと。そのバンドが好きだからバンドTを着るのでは無くて、知らないくらいで着る方がなんか良いみたいな感じですかね。

余談ですが私は、バンドTは着たことありませんが2年くらい前のユニクロの黒のロックマンTは着ています。でも実は、ロックマンはやったことがなくて、ロックマンX以降しかやったことがありません。

 

まずご紹介するのはブリッジもテンプルもサンプラチナVer.です。レンズは小さめのボストンで、ヴィンテージっぽい雰囲気を完全に除いたわけでは無いです。

特にこの完成が見たくてテンプルの付け替えを行ったんですけど、パッドと先セルをクリアにするだけで、一気に清涼感が足されて良い感じなんですよね。この手法は今年の上半期で925のカットリムに施したあれと同じです。あれの反響が大きかったですし、私もあれはとても良いなと思っていました。思いっきりスコーンってめちゃくちゃ爽やかに軽快にしてしまうのもアリだなぁと、あれで感動したことをこのフレームにも活かしております。

 

K18YGのブリッジとサンプラチナのテンプルVer.です。パッドも金無垢で作っています。レンズの形を細長い、サンプリング元の形に戻しています。ということで全開に90年代〜2000年頭の雰囲気に引き戻したのがこちらです。金と銀のコンビが、バブリーな90年代感を引き立てています。

とはいえ、レンズサイズは元々より横幅で5ミリ小さく49ミリで製作しており、完全に90年代に引き戻す手前に仕上げております。今いる地点がアメリカやフランスの大戦前後のヴィンテージの復刻等々でたどり着いた地点であるということから、レンズが小さくちいさくなりきったところから、さて今後はどうしよう?ということを踏まえての判断でそうしてみました。

K18ローズゴールドのブリッジと、サンプラチナのテンプルのVer.です。

これは、開発時の玉型のままです。ボストンとティアドロップが混ざったような玉型で横幅46ミリです。

趣を変えて、クリアグレーの先セルにしてみました。クリアで揃えても良かったんですけど、ピンクにグレーってメガネに限らず良い感じの色の組み合わせかなと思いまして。ローズゴールドの落ち着いた雰囲気に合わせて、軽くなり過ぎない先セルにしてみました。

もちろん横もピチっと合わさっています。

この前のペルソールと同じで、クラシックに突き詰めるも良し、このモダン付きのテンプルでちょっとライトにするも良しですね。いかようにも出来ますから、あとはお任せします。

リム前面のみ
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

24.08.10

銀無垢の新製品ですが、当初は2型2色の4パターンでバーンっと発表してインパクトを出す予定でしたけど、塗装がズレて入荷ということと、私も発表を待ちきれない我慢できないということで、順次フワッとぬるっと発表することになりました。それで塗装バージョンが届きました。

銀無垢に対して、初めて塗装をしてみました。お試しで流行りの黒マットです。

製作に関して、メタル版ジャックデュランを作るということが念頭にあったと、以前のブログに書きました。あの記事で6,000字くらいあって、どの辺に書いたか忘れましたが。その要素を強めようということで、リムをマットにすることで光沢を抑え、より控えめなメガネが作れるのかなという算段です。

全体的にぺったんこな作りですが唯一ブリッジに段差があり、リムが落ち込んでいます。塗装でそれを強調してみました。ブリッジは銀無垢(白色)で光沢有り、リムは黒でマット光沢無しです。このアクセントをつけることで、ぺったんこなのに立体的でボリュームを感じられるようになったと思います。色と光沢の二つの対比が上手く作用したように思います。

それに、流行っているなら取り入れない理由はないですからね。ただし、全体を黒マットにしてしまうのは素材と素材を活かした作りであるフレームに対してどうなんだろう…という懐疑がありましたので、リムだけにしております。

せっかくの塗装であることと、せっかくの銀無垢であること、そしてせっかくならリムとブリッジの谷間が燻されていく変化の余地は残したいということで、リムのオモテ面だけに塗装してみました。これは好みで変えられまして、従来通りリム3面全部に塗装も可能です。

どこに着眼するかなんですけど、パーツが強調されて、より力強いメガネになった気もしますし、全体の光沢が抑えられて掛けやすい世を忍びやすいメガネになったのかもしれません。お好みでどうぞ。

薄リム
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

24.08.09

更新が開いたので、結構忙しかったのかもです。

サンプラチナの比較です。塗装があるので分かりにくくなっていますが、リムの幅が異なります。

上がMI-0901で、下がMI-1076です。この1076が今年出ていたフレームで、玉型とブリッジが同じでリム線が細いタイプです。

細かいところでは、パッド足の取り付けが違いました。

品番忘れてしまいましたが、リム線の比較。細いです。

多角形の場合は、お好みで多角形の面白さを厚いリムでバーンっと主張しても良いし、他人とちょっと違うと薄いリムでこっそりと主張しても良いですね。

チョップドルーフ
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

24.07.27

銀無垢の新製品ですが、玉型が二つあります。オーバルと半月型です。

有難いことに、元々はオーバルしか考えていなかったものの、ほかの玉型も作りましょうと提案していただきました。そこで、自分から一番遠いメガネを作ろうということで半月型のリーディンググラスにしました。近視の男(自分)のメガネでは無くて、遠視の女性をイメージです。もちろん男性が掛けてもめっちゃカッコいいんですけどね。

あとは、せっかくブリッジがご馳走なわけですから、全部見せたくなるよねって、そんな願望も生まれて当然だなということで半月型にしました。

リムとスタッズの緊密さが際立ちます。強いリーディンググラスってあんまり世に無さそうで良いですね。度数とか用途を無視すれば、個人的には半月型がよりカッコいいと思っています。

あとは、元ネタがラウンドとオーバルの組み合わせで存在しております。

正直、ラウンドもオーバルも人に与える印象としましては結構近いのかなと思っています。新商品で並びで見たときに、もっとインパクトが欲しいなあということで、車の天井を低くするとカッコいいという文化を知ったので、それを転用してみました。チョップドルーフって言うらしいです。オーバルをチョップして、遠近の遠を切り落としたイメージで作りました。

実際には女性の平均pdと近用であること、さらにプラス度数での外形指定で薄型加工を全開にすることを考慮し、オーバルが48ミリで半月型は45ミリです。

新製品(925)
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

24.07.27

大変長らくお待たせ致しました。銀無垢メガネの新作です。

案自体は割と前から持っておりました。寝かせておいたおかげで良いタイミングでの上梓となったと思います。ブリッジの感じとオーバルレンズのおかげで、フィンチメガネっぽい、今までのメガネの傾向であったクラシックの流れを程々に受け継ぎつつも、ちょっと流れを変えて90年代っぽい大きめなレンズで優しい雰囲気のメガネになりました。今っぽい横長メガネとも捉えられそうです。

装飾は控えめにブリッジ上部とテンプルエンドのみです。掛けると、分かりずらい箇所に意匠が込められています。パッと見て、普通のメガネに見せたかったんです。銀無垢で値段も高いですから、すぐに流されるような物にはしたくないですし、そうしてはいけませんから、その観点からもパッと見で普通を目指しました。

色々な生活があって、色々な職場環境があって、ファッションの要素をふんだんに込めながらも仕事にも使えるメガネを作ったつもりです。例えばオフィス等の内勤でもギリギリバレずに掛けられるのでは、というラインを狙いました。それがちゃんと実現出来ているか、出来上がったいまは心配です。

毎日がオフであるさすがの私も、保育園の送迎やお迎え、区役所に行ったり病気なら病院に連れて行ったり、世間と交わる機会がめちゃくちゃ増えて(それで店を休みまくっていますが)、自分一人なら良いけどメガネが目立って私の近傍にいる人が悪目立ちしないようにしなくてはなぁと思う機会が増えました。休みの日で公園等で遊ぶとなれば、遊びのエクストリーム具合に依っては銀無垢のメガネを掛けることを諦めて、TR90のメガネを掛ける機会も出来ました。

結局、一番自由にメガネが安全に気兼ねなく掛けられるタイミングは仕事中じゃないかなと。そして私を含めた多くの大人は、おそらく仕事の時間が人生で一番長いじゃないですか。そしたら仕事にこそ掛けていきたいメガネが例えばコレであって欲しいですし、所謂オンのときに躊躇なく掛けられるようなメガネにしたいなと思いました。今までの一山のシリーズとそのパッド付きが該当しますが、それよりはやや攻めの姿勢で、でもやり過ぎない、それを狙ってみました。

このメガネのこっそり充実感で、仕事を含む出来れば全ての時間がスペシャルになることを願っております。

 

 

 

出来上がった物が良く見えなくなってしまうかもしれないので、もうこんな感じで書くのをやめようかなとか考えましたが、結局いつも通り以下で残しておきます。実際の開発の動機付けや道のりは以下の通りです。

MIZで出るということで、この数年私はかけうどんを作ることを意識しています。ブルバキらしさの消去です。今回はある感動からスタートして下記で挙げた2方針を満足させつつ、一見普通な感じのメガネを作るということでして、何だかんだでたぬきうどん?くらいなメガネが出来ました、という感じです。しかも今まで携わってきたラインナップに無い、普通っぽいのに、まさにトゲがあるメガネです。

 

一部のお客さんにはお伝えしておりましたが、構想自体は2021年の8月、メガネ大学という鯖江の組合主催の工場見学イベントで、せっかく製作現場を見せて頂いたからとその場で仕入れをした、銀無垢のツーポのメガネからスタートしております。まずは、ここで遭遇したテンプルエンドへの感動が着想源です。

そのツーポのメガネのどこが気に入ったかと申しますと、なんと言ってもテンプルエンドなんですよね。幾何学的な意匠で、なおかつ立体的でめちゃくちゃカッコいいなぁと感動しました。MIZのメガネは、貴金属なのに工業的な仕組み・構造が組み込まれている面白さがありますが、貴金属のメガネにジュエリー的な意匠が乗っかると、改めてめっちゃ良いなぁと感動しました。今までの製作で避けていたことでもあります。そして、このテンプルエンドを活かしたメガネを作りたいとその場で直感し、サンプルが無くなっては困るということもあり、コロナイヤーでめっちゃキツかったんですけど仕入れをして、店で陳列しておりました。

2024年のいまは、ジェントルモンスター的なメガネがファッションのフロントに立つようになり、Y2Kな細くてスタイリッシュなツーポがカッコいいと言って頂ける機会も増えました。ただ2021年の段階では、クラウンパントやアーネルみたいな物のピークだったこともあり、広く多くの方に見てもらうには少しの改編が必要だと感じておりました。この段階では、テンプルエンドにあのブリッジを組み合わせることを思いついておりません。テンプルエンドへの感動と、それを活かしてなんかしたい(未定)くらいな感じでした。

ただ2021年のブルバキといえば、銀無垢のサーモントの開発の話が通ってはいるが、進展がない状況でした。その状況で、このテンプルからなんか開発をしたいという話をしたときに、銀無垢のサーモントの話が後ろに後ろに流れてしまわないか心配になりました。そのため、サーモントの開発が終わるまでは、このゼルダの伝説みたいな(トライフォーステンプルとします)を開発の軸としたメガネの製作の話は一切しませんでした。あのときはカッコいいよりも、まず、大げさに言ってしまえば人類はここまで出来るぞという到達点を示したかったんですよね。銀無垢のメガネの複雑さの極限と質量の極限を実際に目にしたかったんですよね。あと、サーモントが出来たときに書いたブログにあるように、アメカジの文脈云々も理由としてあります。

それで色々形になって落ち着いた2023年の10月、IOFTのときにトライフォーステンプルを活用したトゲトゲメガネの開発を打診しまして、今日に至っています。やりとりがあれこれあり、図面の完成が2023年の11月21日です。

今回の開発は、トライフォーステンプルの感動からスタートしました。それがここまでの内容です。では、そのトライフォーステンプルに何を合わせるか?つまりなぜこの結果としてのトゲトゲメガネという姿になったのかを書きます。トゲトゲブリッジの選択プロセスと、メガネ全体の雰囲気(方針)の決定プロセスを以下で書いていきます。あまり方針なんてものは立ててもしょうがないので、今回は2つにしました。

答えだけ書くと、トゲトゲブリッジを合わせることは、たまたま思いつきました。それで全体の方針はジャックデュラン的かつクロムハーツ的なメガネという相反するような2方針です。

結局2021年にトライフォーステンプルに感動したものの、それをどうしたら良いのか思い浮かんでいませんでした。ちょっと曖昧ですが、確か2022年の8月くらいまで何も思いついていなかったはずです。2022年というのは結構あれこれあった年で、銀無垢の商品でいえば2022年末のオール銀無垢のサーモントの完成の前に、セル眉のサーモントが完成しております。それが2022年の7月です。

それで、セル眉の銀無垢のサーモントを買って頂いたお客さんでしたか、その8月にカットリムの銀無垢を買って頂いたお客さんでしたか、ブルバキの次どうします?みたいなことを尋ねられまして、ヤバイなんも考えていないなぁとか焦っていたところ、なぜかとっさに閃きました。カミナリが落ちて、脳汁が出ました。コレだ!と。

作業場横のショーケースに飾ってあるゴルチエのフレームなんですけど、何度もなんども目にしていますし、レンズも自分で変えて何度も触っています。テンプルの飾りに気を取られてその時まで全く気にしていなかったはずなのに、次なに作るか?みたいな問いかけで「トライフォーステンプルを軸に何かしら作りたいですね」みたいなことを話しながらふと目にした瞬間に、このブリッジめっちゃカッコ良いし、トライフォーステンプルと相性バッチリじゃん、そもそもこれが銀無垢ならそれだけで最高じゃんと、本当にカミナリが落ちたんです。確かお客さんともその場で、それは良さそうと盛り上がった記憶があります。

そうしてブリッジもテンプルエンドもトゲトゲなメガネを作ろうという何となくの概略は浮かんできました。ただ、それだけでは弱いです。もう少しメガネ全体に関する方向付けがなければいけません。その青天の霹靂から開発のスタートまでさらに1年くらいありますが、その間はひたすら頭の中で転がします。転がすというのは、常に考えているわけでは無いんですけど、暇があったらたまに取り出してあーでも無いこーでも無いと、頭の中で会議させておくみたいな感じです。

トゲトゲブリッジを観察して、ざっくり二つの印象を持ちました。それがそのまま2つの方針に繋がっていきます。一つは見た目通りぺったんこだなと。これがジャックデュラン的だなと。そしてもう一つは切断したスタッズの指輪みたいだなと。これがクロムハーツ的だなと。

一つの目のぺったんこな印象を頭で転がしていたおかげで決まった方針として、全体の雰囲気をジャックデュラン的にしようというのがあります。

2023年の4月3日に、坂本龍一さんが亡くなられています。そのときに、水島眼鏡さんのインスタに追悼ポストがありました。それをみて、晩年の坂本さんはジャックデュランのメガネがトレードマークになっている印象がありましたが、MIZのメガネを掛けて欲しかったなぁと思ったんですよね。工場の人間では無い私が勝手になんですけど。そのジャックデュランというのは、フロントがフラットで、テンプルエンドの裏が立体的で畳の姿が綺麗で、装飾が最小限でとにかくカッコいい訳なんですけど。普通じゃ無いのに普通の極致みたいな。だったらそれのメタル版を作ろうじゃ無いかと方針が定まりました。《方針1》

この方針をもとに、レンズシェイプとレンズサイズ、また智の選択とテンプルの装飾の決定が行われております。レンズはサンプルに近いオーバルが、あの雰囲気が出そうということで決めました。オーバルの48ミリです。智はいつもの通りスパルタ智呼ばれるものですが、形状はオーソドックスな丸いものです。一山の銀無垢のフレームたちに組まれている、凹の曲線が美しいちょっと厳つい雰囲気の一個智ではありません。

優しい雰囲気に、そして《方針1》からテンプルは柄なしにしました。智の選択においては、智の部分にスタッズを配置することも検討しましたが、それは《方針1》に反するのと智を飾るのはブランドの仕事であろうと思い至りまして、プレーンにしました。先ほども書きましたがMIZ名義で出す以上、私の役目はかけうどんを作ることです。各方針よりも上層に、かけうどん的メガネを作るという大方針があります。そのため目立つ箇所には何も配置しないことに決定しております。とか言いつつたぬきうどんくらいになってしまいましたが、かき揚げはのせていないつもりです。先ほども書いたとおり、《方針1》と普通を意識してメガネを作るというのは重なる部分があります。

 

もう一つの指輪の切断という印象のおかげで決まった方針として、銀無垢のサーモントに引き続きクロムハーツがこういう銀無垢のメガネ作っておいてくれたら良いのに第二弾を実行しようというのがあります。

2023年の8月末にクロムハーツのフレームで、オールチタンのオーバルのメガネのお持ち込みがありました。それもちなみにオーバルの49ミリで同じくらいのFPDでした。それがすっごいカッコ良かったんです。そして私はスタッズの指輪の切断が、それこそクロムハーツの指輪の切断に見えていたので、じゃあ銀無垢で指輪の切断モチーフのブリッジでオーバルのメガネを作ろうという方針が決まりました。《方針2》

《方針1》と《方針2》は、ちょっと矛盾する部分があるようにも見受けられます。そこをまとめ上げて解決することが、今回のトゲトゲメガネのゴールです。絶対矛盾の自己同一のためには、《方針2》の適用が鍵となりそうです。

《方針2》をどのように適用して意思決定をしたかと申しますと、ブリッジにボリュームを足すということに変換して適用させました。このときに、解決策としてそれっぽい具体的なモチーフをのせてしまうと、ただのニセモノになってしまいます。そして特別な模様等を乗せる行為は《方針1》に反してきます。なので、何か特別な柄をブリッジに乗せるとかでは無い《方針2》の実現が求められます。

そこでクロムハーツの良さといえばということで、あれこれありますけど、一つはとんでもない質量という点が挙げられると思うんです。質量による迫力ですね。ただメガネとしての質量のマックスは前回のオール銀無垢のサーモントで実現しておりますから、ある程度の質量をプラスで持たせるということで、《方針2》を実現します。迫力が出過ぎるとそれで付加される印象だけで《方針1》を脅かしかねません。

ブリッジを単純に太くすべきなのかどうなのか…と考えた末、結局のところ自分では解決策が思い浮かびませんでした。ブリッジを太くすると、リムとの関係を気にしなくてはいけなくなります。リムが太くなると、智との関係が…と連鎖します。下手すると全部が太くボテッとして野暮ったくなり、カッコ良く無くなってしまうことが予想されます。

そこまで考え尽くして自分では思いつかないのであれば、あとは頼ろう(そもそもいつも頼っている)と、2023年10月のはじめての開発の打診の際に「ブリッジに迫力をもたせたい」ということだけをお伝えし、あとは寝て待ちました。その返事がまさに果報でして、上がってきた図面がスーパーウルトラハイパーマーベラスな解決策で、それも感動した覚えが残っています。

端の処理が変わり、リムに覆い被さっています。それだけでゴツさが加わって迫力があります。使用による変化でリムとの段差に黒ずみが加わると、より一層立体感が加わって良さそうです。この解決策のすごいところは、ブリッジの太さ、幅が変わっていないところです。

逆に言えば、サンプリング元の金色の方の凄さは、終端の処理を上手い具合にすることで、細く華奢に見せつつ、最後までスタッズが続いているかのように見せているところです。金色で細くて、ちょっとエレガント路線だけど、上から見るとスタッズで実はちょっぴりスパイスが効いているのが元ネタです。

端の処理を変えたことで、スタッズとリムの間が空いてしまったのでスタッズの数を左右1個ずつ増やしています。リムと飾りが緊密である方が吸い込まれるような感じが強く演出されて、見ていてドキドキするかなと思いまして。それもこれも、あの覆いかぶせる処理を思いついて頂いたおかげです。元のヴィンテージの印象のまま銀無垢になった雰囲気もありますし、ボリュームが増したことでエレガントな感じが薄れて男臭くなった雰囲気もあります。元々上手く処理してあったものを、上手く処理していない風にゴツく荒っぽく、上手ずに解決・処理して頂きました。それがカッコいいのかなと感じています。スタッズのトゲの一つ一つが割と鋭いのもカッコいいポイントだと感じます。

 

おおよそこんな感じで開発が進み図面と言いますかディテールは詰めていきました。2023年の11月に図面のオッケーを出したものの、結局智とテンプルの決定が良かったのかどうか、時間があるとまた頭で転がしてしまうんですよね。ウジウジと悩んじゃうんです。そのときに自分の生活を振り返りつつ、これまでの銀無垢の開発で出来たことと、逆にまだ出来ていないことを考えて、これこそが程よい意匠を持つ普通のメガネだなと思い至り、これくらいのトゲトゲの散りばめ具合で決着しております。

あっさり系
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

24.07.20

玉型変更と、先セル交換をしてみました。

ヒルトンクラシックの四角から形をとりました。ヒルトンクラシックじゃ無くても良かったんですけど、ちょうどいいサイズのウェリントンの玉型がそれしか無くて、そこから作りました。

前回はオーバルで横長を作りました。それでもっと細長い、カクカクの四角にしようかなとか、キャットアイのツーポにしてみようかなと考えもしましたが、レンズの掴みの問題がありまして断念。そもそも皆んな細長くなりたいわけでも無いので、ウェリントンのツーポにしてみました。

あっさり良い感じです。

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