カテゴリー:メガネのはなし

街ですれ違うくらいなら、多分わからない
メガネのはなし

24.02.21

TR90のアーネル風のレンズ交換しました。グレーの50パーセントです。

やはりアレみたいですね。初見では「ん、あれ?え?ん、ん??」みたいな反響が多いみたいですね。そうですよね。

その反応の後に、ディテールのチェックと正誤確認を経て、これはヴィンテージちゃうわみたいなことになるみたいですね。

ここからブルバキの製作に繋げるのであれば、細部の手を抜いて良いということでは無くて、まずは大枠を掴むことが大事で、ディテールの追求はその後ということでしょう。むしろ大枠を掴んでいなければ、ディテールの追求が意味を成さない可能性もあるということでしょう。

フロントだけでいえば、ダイヤのリベットでは無いので即時にアーネルちゃうわと認識出来るんですけど。復刻とかそういうことになったときに大事なのはどうやらそういうことではなくて、局所の分析とそれらの統合では掴めない何かが大事っぽいですね。

年明けから木のフレームを始めました。黒檀でイギリスのヴィンテージフレームを再現してラインナップに加えております。何を再現するかの選定の時点で、実際は目と手をすぐ離せる題材を選ぶというのも、ちょっと理由としてはありました。めちゃくちゃあのフレームが好きなのは大前提で、補足として木で再現してもっとよくなりそう、そんな読みがありました。

木で再現すると、フロントからテンプルにかけてのボリュームや立体感が足されます。木の材料でそれらの要素が足されると、完成品は物凄く高級感が出そうというのはすぐにイメージが湧きました。そうイメージしたときに、例えばアメリカンヴィンテージの類を題材に持ってきてしまうと、その雰囲気が再現に際して足され、結果違うものになってしまうのかなと懸念されます。欲しかったカッコ良さはそこじゃないみたいな。そんなことも考えてイギリスのフレームを、木で再現することの第一弾の題材として選んでいます。

なので、物凄くコントロールしたら黒檀アーネルみたいな物が作れるのかもしれませんが、なんとなく想像の産物のような気もします。今のところブルバキではアメリカンヴィンテージやその周辺は、木で作ることは無さそうです。木で作るという選択が、アメリカンヴィンテージの大局を掴むには適していなんじゃないかなという素材からの予想と、やはり日本はキッチリカッチリな製作が得意なので、そうじゃないものを無理して掴もうとしなくてもいいかなと、今のところ思っているからです。掴みやすいところを掴めば良いでしょうし、それは楽しているとかでは無いじゃないですか。緩くラフな時代なのは承知で、緩くラフに見てもらえるような工夫は込めて、作るものはキッチリカッチリ続けたいですね。

 


メガネのはなし

23.12.10

木をはじめます。

今まで銀無垢だ不変だなんだかんだと言いながら、木もめっちゃ好きです。家具に近い感覚をメガネに接続させるなら、木でメガネが出来たら最高ですよね。

お金が高い物となりますと、ヴィンテージとかあれこれ背景やら文脈やらストーリーやらソフトな部分も大事ですけど、まず物質として良い素材が欲しいところです。とりあえずヒュレーです。だから銀無垢でしたし、これからも銀無垢ですし、今後は木もやります。

 

インスタの2019年の2月6日の投稿にも、木は載せています。

一番上のモデルが、トップ画像と同じモデルです。工房樹さんの凛之十七です。木も選べて、以前拝見したときは黒檀でした。今回の入荷は黒柿でした。真ん中の丸メガネは、樹之十九というモデル名で、これも良いですよね。王道のセル風の丸メガネ。

突然のアレでしたので予算の都合で今回は見送りました。仕入れ出来るように頑張ります。これこそ、黒檀で作ったら藤田嗣治であり、デイヴィット・ホックニーであり、わくわくさんでもあると。知的にも見えて、でもクール過ぎずにややイジられつつ笑いも取れる万能なメガネになりそうです。個人的には、この前の銀無垢のファイヤーパターンにも通ずる話なんですけど、メガネはちょっと笑われるくらいが丁度良い気がしています。だからわくわくさんという構成要素は大事です。とりあえずまた手元に届きましたら載せます。

 

ちなみに2019年2月のブルバキの状況を思い出してみますと、銀無垢のサーモントの開発がどちらも一切進行していない状況でした。そもそも開発が出来るのかどうか何も分からない状況でした。もし開発出来そうとなり、ことが進んだときにお金がどれだけ必要となるのか未知という状況のため、あれこれ手を出すことが出来ず、あのときも当店へ紹介があったのにも関わらず“ごめんなさいnothingで”と、なっていました。それと新品は、銀無垢だけじゃ無いとブレるかな?とかその辺も気にしていたと思います。

セルの一番厚い物くらいの厚みがあります。結構迫力があるんですけど、木の風合いで威圧感が抑えられ、最後はほっこり感が勝ちます。

フレームにナイロールのガイドが取り付けてあります。レンズはナイロール加工で枠入れです。これが天才のひらめきで、美観としては外付けのネジや切れ込み等々が無く(フロント裏面に、ナイロールガイドを止めるネジが左右1本ずつあるのみ)、ほとんどセルのフルリムに見えます。

バネ蝶番です。バネ蝶番の埋め込みも綺麗です。メガネを畳んだ姿がとても美しいです。置いた時のメガネの佇まいも、なんだかんだ大事ですよね。

セルフレーム的な鼻盛りっぽい木片を取り付けてあるパターンもありますけど、とりあえず店頭はアーム付きにしました。このアームが嫌いとか意見が分かれるところですけど、木の鼻パッドがかわいくないですか?本体とおなじ黒柿で合わせてありますし、これかわいいんですよね。とりあえずアーム有りが店頭にあります。

 

ちょっとまだ時期とかあれこれ決まっていないんですけど、丸っこい何かをオリジナルで作っていただく話をしています。それで一旦、既存モデルのまん丸をパスしています。

デザインソースのフレームは、私が消費者だった頃に買ったフレームです。もう10年以上前ですね。そのときから眼鏡業界の人間ではありまして、工房樹さんも存じ上げておりました。当時からアレは木で作ったら最高なんじゃないかと思っていまして、使わないのに青田買いしたフレームでした。まず図面の確認があるんですけど、とにかく図面が待ち遠しいです。

ソースはイギリスのフレームです。昨今の銀無垢の開発のときに「アメリカがアメリカが」言いすぎて、そんなにアメリカ好きなんですか?と訊ねられるくらいなんですけど、メガネで言えばアメリカのヴィンテージはほとんど買ったことがないです。金張が2回くらい。セルは店でもオークションでも買ったことないですね。

銀無垢のサーモントの開発において、どこかにアメリカの要素を組み込むというのは、ルールに従ってみようという試みでした。論文は英語で書くみたいな感じです。ルイヴィトンやその他諸々がアメカジの時代ですから、メガネもやるべきだなと思ってアメリカを要素に、特にカジュアルになる方向で組み込もうとしたのが銀無垢のサーモント2型でした。ということで、どこの国が好きとか嫌いとか考えたことないですね。そして今回は、あれこれ文脈無視して一番自分の好きなセルフレームを木で作ってみる予定です。

こってり感が良いです
メガネのはなし

23.04.14

リザードの型押しのケースが、いつものよりさらにウルトラギリで入庫って感じです。

今日も算数
メガネのはなし

23.02.03

金張りの厚みって実際どうなん?ぶ厚いとは言うものの。気になりませんか?

後世の資料の為にと思いまして、電動カッターで切断しようと思っていました。ところが、気づけばこんなところに切断面が…というのでインスタにも載せております。ヤスリで整えて、バフで面を綺麗にしました。

母材、銀ロウ、ニッケル、金の順番に層状になっているので、上の写真で爪くらいの薄さに見えている層が全て金とは限らないでしょうね。また、メッキと違って取り上げる箇所によって厚みも異なり、一定ではありませんので。とりあえず母材との境目ははっきりと写せました。

そういえば、重さを計ったことがありませんでした。ネジ無し、パッドはカシメなのでそのままにして、7.4グラムでした。

刻印があり、“AO 1/10-12KGF”とあります。結局、どれくらいの金(24金換算)を使っているんでしょうね。計算してみます。

またまた70年代のHOYAニュースから。これに則って計算すると…

0.37g(24金換算)

となります。ちなみに、金は1㎤あたり19.32gですから、体積だと

0.01915㎤

になりまして、これは一辺が0.2675㎝の立方体です。つまり、一辺が2.7㎜のサイコロをイメージすればよく、それかちょっとデカめの鼻くそ(すみません)くらいの大きさということになります。改めて、金って物凄く延びるんですね。これは1/10の厚みの算出なので、70年代頭の1/20や、70年代後半の1/30の厚みになれば、それに準じて少なく・軽く・小さくなります。

 

Pierre Marly
メガネのはなし

22.10.31

書いたかどうだか忘れてしまったので、ひょっとするともう一回です。

70年代のHOYAの広報誌をずっと見ていまして、フレームの年代がざっくり70年代でちゃんと合っていたなとかあれこれ裏が取れて嬉しかったんですけど、全く知らなくて驚いたのはこれ。ピエール・マーリー(Pierre Marly)のメガネコレクションが日本に来て巡回していたことです。

1975年4月号

Amazonでローラーかけても、メガネ関連の図鑑は10個あるか無いかだと思いますが、そうして集めた図鑑のどれを見てもだいたい海外の図鑑のクレジットでピエール・マーリーに遭遇します。いまいちよく分かっていませんでしたが、コレクターのトップだったんですね。日本にも関わりがあって、しかも実物見られる機会がかつてあったとは。いまはエシロールの博物館にピエール・マーリーコレクションとして収蔵されているみたいです。

愛知は名鉄が会場でした。照明かわいい。

編集後記がすごい良くて沁みます。先を急ぎすぎたので後ろのことが気になってきましたという表現がおしゃれです。

「クラシック、ベイシックなものが、どのように生まれ、育ち、消えていったのか、確かめてみることは、むしろ必要な作業といえるでしょう。」

昨今のねじ事情
メガネのはなし

22.09.14

びっくりしました。クロムハーツのメガネもトルクスネジになっていました。たしかに、クロムハーツで言うところのスター(六芒星)でしたっけ?アレに見えるので、美観の相性めっちゃいいですね。すごいカッコいいと思いました。

メガネに対してトルクスネジが要るのかどうかは、おそらくまだ決着が付いていないです。もっと増えそうな予感はしています。

ネジ頭を舐めずに締め上げしやすいということは、トルクスネジ自体のデザインでして、メガネのデザインになるかは別です。蝶番に頭が舐めにくいネジが入ったときに、メガネ全体としてどんな良さが付加されるのかを考えてみなくてはいけません。そもそも蝶番はそんなに締め上げるものかと言われれば、そうでは無かったりします。

ネジ製造の仕事をしてないのであれですが、ネジはキツく締めれば締めるほど緩みにくくなるわけではありません。私も、つい2年くらい前まではそう思っていました。ぎゅっぎゅしていました。絞めすぎで起こる非回転緩みにも気をつかわないといけないです。何事も共通して、過ぎたるは猶及ばざるが如しということなんでしょうか。とにもかくにもネジを緩ませる要素は多々で、締め上げ量に比例して緩みにくくならないのが何とも腹立たしいですね。

ここまで考えておいて、今回のお持ち込みのメガネの蝶番が実際は緩まないのか、はたまた何年かで緩むのか分かっていないですけど、レンズ枠入れと鼻盛りでブルバキとしてきっちり関わった以上、いつかの緩みに備えてトルクスドライバーを常備しました。多分、みなさんのご家庭に無いですよね?しかも大きいトルクスネジのt8くらいからなら100均でもドライバーが手に入りそうですけど、t3やt4くらいのメガネに使う小さいネジ用だと100均では無さそうです。ちなみにモノタロウで500円〜1,000円くらいなので、ホームセンターでも多分それくらいです。

ひょっとしたら、10年後の日本製メガネはトルクスネジが主流になっているかもしれません。今のところは業界でも普及していないことも重なって、ユーザーとメガネの関係において何が具現化されたのか、まさにそれがトルクスネジをメガネに使用することで得られたデザインということになるんでしょうけど、ちょっと弱い気もします。メガネ屋に行くのは面倒且つ買い替え接客されそうで億劫であり、家でパッとネジくらいは締めたい派の方も多いと思います。まさに自分も家でちゃちゃっと締める派だったので、強く締め上げられることが緩み止めに必ずしも直結していないのであれば、現時点で色々な面でお手軽なプラスかマイナスで良いかなと思っちゃっています。

ネジ自体がカッコいいのでデコレーションとしてトルクスネジを使い、細部までカッコ良さを追求する姿勢をデザインしましたという意味合いっぽいクロムハーツはとてもいい感じでした。実際、持ち込んでくださったお客さんも、トルクスの使用をご存知でなかったので。サラッとトルクスを使っているみたいでした。

せっかくなので、ネジのデザインをメガネのデザインにもっと乗せようとするには、他に何が考えられるかと想像を膨らませてみます。膨らませると言っても、メガネのネジはあとレンズ留めか鼻パッドしか無いので瞬時に終わります。

レンズを留めるリムのネジ(たしかブローチネジ)を、トルクスネジにするのは良いかもですね。深く考えていないただの思いつきではありますが。ユーザーがなかなかリムを開けられず、レンズが脱落しにくいように適切に締め上げやすく尚且つドライバーが逃げにくいのでレンズを傷つけにくく、ネジが舐めにくいのでレンズの交換も何世代もしやすく真のSDGsです、みたいなことがネジの特性と結びついて謳えそうです。

加工する側になって分かりましたが、ネジの頭だけみて、パッとT3かT4か判別つきにくいですね。実は今回、それで目測外してドライバーを2本買っています。

カラー35% 見本
メガネのはなし

22.06.27

たまたま手元に揃ったので載せます。ともに、カラー“ブリーズグリーン 35%”です。向かって左が度付きで右が度無しということもあって、縁の色合いが違って見えるというのもあるんですけど、レンズの真ん中で比べても左が青っぽい気がします。おそらくコーティングの差で色の差も出たのかなと。どの波長が返っているかどうかの話なので、それがよく分かるケースということで載せてみました。

ということで銀のサーモント、まだ本当に届いてないです。この気配は、7月になりそうです。

やっと掴めました
メガネのはなし

22.06.18

金張りの1000分率の表示について、ちゃんと書かれているものをようやく見つけることが出来ました。厚み(1μ=0.001㎜)表示ということもあるそうですけど、金張りは金メッキと違って各パーツ毎に厚みが一定では無いので、総重量に対しての何かしらの金の割合で表示されるべきということを前提とした、1000分率の場合の説明が無いかなと思ってぼんやり過ごしていました。やっぱりありました。ぼんやり待ち続けた甲斐がありました。

微妙に違いますし、金においては大事な差かもです。どちらの表示も、メタル部分の総重量に対してという基準の設け方は同じです。ですが1000分率の方は、純金(24K)で換算です。張ってあるものが例えば14Kでも、換算は純金で行います。一方で、アメリカのよくある表示では「1/20 12K GF」とあったときに、12Kで使用量を換算し、張ってある物も12Kです。プラクティスが載っていまして、それが参考になります。

『1/20 10K GF を1000分率表示に直す』

途中に分母と分子に2.0833を掛けており、これが意味不明さを少々招くかもです。紙面の行数に制約があったのでしょうが、要は分母と分子にそれぞれ(1000/480)をかけているだけです。あるあるで、分数の割り算が意味不明すぎて分数全部が、分数の存在が嫌いになる場合がありますが、最後の計算まで分数のままの方が大体の場合、計算も理解もスムーズです。結果の量的感覚を掴むときに、最後に少数に直せばいいと思います。

演算結果が、20.833…/1000(10K GF)です。プラクティスが表記の違いによる意味の差を鮮明にし、理解を深めてくれます。

以下、同じように計算してみます。

『1/10 12K GF → 50/1000 (12K GF)』

『1/20 12K GF → 25/1000 (12K GF)』

結果を眺めてみますと、30/1000と40/1000の金張りの言いたいことがぼんやり分かってきます。

大歓迎
メガネのはなし

21.12.19

お持ち込みでした。ゲルノットリンドナーです。実物みるの触るの初めて。

このフレームに限った話ではなく、チタンのフレームでも多々遭遇する話ですが、フィッティングポイントを作るのやや大変。バチの部分の切断面が正方形のパターンです。おそらくですが、絞って作り込むかプレスで抜くかの違いで、切断面が丸か正方形か違いが出るのだと思います。正方形のタイプだと、対角方向の曲げが硬くて動かしにくいです。フィッティングの用語では、頭部への添わせが難しかったりします。添わせないと、摩擦が生じないのでメガネが下がります。とりあえず頑張りで曲げます。銀は頑張りです。チタンは硬すぎて諦めるときもあります。あとは、ひとそれぞれですが耳の付け根の後ろ辺りに骨のくぼみがあったり無かったりです。くぼみが有るとメガネとしては好都合で、圧迫ではなくメガネがスポンと引っかかるので下りにくくなります。上の写真はいまの要点を作り込んだ後です。

自分のところの銀のメガネと記念撮影。並べると分かりますが、結局どっちも細いんだなと。インディアンジュエリーや、クロムハーツその他諸々のシルバーアクセサリーの作り上げてきた銀の価値観と言いますかルールに則って試合をしようと思うなら、もっと質量を!ということなんですね。

ドイツもこいつもイタリアも
メガネのはなし

21.12.19

ローデンストックジャパン閉鎖と、今知りました。卸からエクスクルーシブモデルの新作カタログの案内が届いた時に、デリーゴジャパンのローデンストックから新作が…という文言になっており???状態でした。絵型だけの案内でしたが、リチャードの改変が出るので楽しみです。

ドイツのメガネをイタリアが販売するってことなので、『マーサの幸せのレシピ』じゃんって勝手に思っています。大学のドイツ語の講義のときに、ドイツ人とイタリア人の関係がよく分かるってことで観た記憶が残っています。

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