アーカイブ:6月2021

やったー!!
メガネのはなし

21.06.29

ようやく、探していた資料が見つかりました。メンクラの眼鏡号です。

80年代〜90年代にかけて、まだ眼鏡がアイ“ウェア”として扱われる前の時代には、どんな眼鏡がファッションに適合しているとされていたのか、いまいち掴めずにいました。人伝に聞くくらいしか無く、もっと客観性のある物が欲しいなと開店時から探していました。そうでした、メンクラでありました。

初版が87年で、第2版が90年です。定番が半年からもって1年で消費される現在と違って、なんか良いですね。

時代的にアランミクリはやっぱりという感じですが、イケてる眼鏡コーナーのピックアップ品は大変興味深いです。特に、BADAの紹介がしっかりとされている物を初めて見つけることが出来ました。

ここで、papa Hemingwayが出てくるか〜という印象です。そして、やっぱりあのヘミングウェイかぁ〜という感じで、papaってなんだ??という疑問は依然として残されました。ビアードパパと同じパパですかね。それは一般的なパパと同じ、父のパパなのでしょうか。

最後ゴルチエでした。この写真、流石に物が分からなすぎるので、カッターマットの上で正面から撮影するべきですね。

大きめのボストン
ヴィンテージのメガネ

21.06.27

ついに、販売となりました。70年代のオリバーゴールドスミスの大きめボストン眼鏡です。

毎年これくらいの時期になりますと、大きめのボストンが〜とか、クリアの抜け感の強いボストンが〜とか、最近覚えたての言葉を羅列すればレンズサイズ大き目がギークでカッコいいよね〜的なことを言っていたと思います。なんだかんだ毎年定番が変わってしまい、去年の夏はアレだったのに今年はコレかあ…定番とは???ではなくて、結局しつこいですけど毎年コレです。

ちょっとクリアレンズでは物足りないとのことでしたので、緑の10パーセントの濃さのレンズを入れました。コバにほんのり色がついて、いい感じですね。

こっちが販売となりましたので、ようやくもう一方の全部クリアのボストンを自分用にします。

明日は12時から14時まで
営業案内

21.06.22

明日の水曜日は14時以降で検眼になりました。12時から14時まで通常営業します。

そして金曜日と土曜日は休みます。そういえば家の方の引越しでした。

ポストモダン
雑記

21.06.16

お客さんに教えて頂いて、とりあえず第1章の名古屋編読みました。私は、正確には三河育ちで名古屋を語るなんて恐れ多いのですが、クスクス笑いの連発でした。今はこっちに住んでいますが、書いてある通りだなと思います。

グリーンベルトの草ぼうぼうって、他所では無いですかそうですか。

ピタッと収めるために
修理とメンテ

21.06.16

お持ち込みでした。超カッコいいですね。ミッドセンチュリーのカッコいい家具みたいな雰囲気出ています。

横のリベットも、カッコいいの付いています。

何だかんだ私もガラス信者だったりしますから、これに先日紹介したガラス1.52の単層コートのレンズをはめていきます。

今回のブツは、2つ難しかった点があります。一つ目は、察するにこれくらいの精度だったのかなと、古い物だからしょうがないかなという感じですが、スタートからリムのネジが潰れていました。

傷も全く無く、メッキが剥がれていないのでおそらく初めからこんな感じだったのかなと。このフレームに限らず、何度か同じようなネジで同じような溝の処理が甘いネジを見かけたことがあります。グッと押し込んで回すと、頭が飛ぶことがあるので、出来るだけオリジナルパーツを残すためにも超音波洗浄かけたり温めたりしてゆっくりと回していきます。

もう一つは毎度おなじみの、眉パーツがリムに被さってしまっている点です。度数が低ければ問題なしですが、度数が高ければ眉パーツと干渉してしまいます。

今回は遠視系の方で凸レンズ(真ん中が一番厚く、縁が薄いレンズ)でしたが、実際に加工機から上がってきたレンズを見ますと、それなりな縁厚です。よって、干渉してしまいました。

右側の眉がパシッとハマった状態と比較しますと歴然です。左側の鼻付近、パーツが3ミリほど浮いています。これくらいの干渉となると、レンズ周囲の面取りを増やしても干渉を回避できそうにありません。そこで眉パーツをリムのラインにはみ出さず合うように削り、全てがキッチリカッチリ収まるように調整します。この作業がひたすらに長いです。全部が上手くいくと、トップ画像みたいにピタッと決まります。

あまり何度も書くと根に持ち過ぎだろと思われてしまうのでアレなんですけど、サーモントの枠入れ時に眉を外す必要無いでしょと言われたことがありました。確かに仰る通りで、はめるだけならそうです。

例えば今回の場合、眉を外さずに枠入れをしますと、レンズ上部はフレームの金属部分が保持するのではなく眉部分がレンズに接地して保持することになります。また、はめ込んだレンズがガタガタ動かないためにはコンマ何ミリのレベルでレンズが大きい必要があります。それにより内側から枠を圧迫する必要があります。今回のケースにおいて干渉がそのまま未処理の場合、上部の眉パーツを内側から圧迫することになります。眉パーツはプラスチックです。固定するためのネジ穴付近は余白も少なく、どう見ても脆弱そうです。中古のヴィンテージ眼鏡のサーモントを観察しますと、ネジ穴付近が割れてダメになった物が多いです。そこでその原因に対しての推測をして、眉パーツへの干渉を0にした状態に持っていこうと考えて、いつもパーツを外して枠入れをしています。それだけです。

あと眉パーツを外す理由としましては、めちゃくちゃどうでも良いことですが、アメリカのサーモントの試行錯誤が垣間見えるところが面白いです。どういう構造が優れているのか、色々試した形跡があります。特に今回のボシュロムは、耳側が一味違った眉パーツの固定方法でした。おかげさまで、わたしは初めて遭遇出来ました。まさかのスライド式です。

レトロポップ
ヴィンテージのメガネ

21.06.13

メガネ業界に、なんだかんだでもうすぐ10年くらい埋もれていることになるんですけど、史上最高のブランド名に出会いました。

『今…六本木』

です。凄くないですか、『六本木』でも『今?六本木』でも『今、六本木』でも『現在(いま)、六本木』でもなく、『今…六本木』です。どうですか、この“…”に含まれた躊躇い、戸惑い、そして恍惚の予感…。とにかく、眼鏡業界に天才がいました。

そもそも、ひとに「いいメガネだね、どこのブランド?」みたいに尋ねられたときに、「『今…六本木』だけど」ってストレートに返事をしてしまうと、「うん」ってうやむやな返事が返って会話が切断され、ついでにヤバいやつかなと思われる可能性大です。

ディスコブームを調べてみると、結構深くて混乱します。78年のサタデーナイトフィーバー周辺のディスコなのか、80年代のマハラジャ出店ブームを指すのか、91年のジュリアナ東京開店を指すのかで、想起されるイメージが全然違いますね。そうか、ジュリアナ東京は90年代なのか。アンティーク調のメッキがしてありますし、玉型やレンズサイズと鼻幅の関係、クリングスのロー付け具合からしますと70年代は考えられず、80年代のフレームでしょう。そうか、青山より六本木の時代か。

タグから読み取れるのは、wave・axis・square bld・forum、でした。一個読み取れなかったのは、high sensitivity frame の重なる部分が、なにroppongiなのかなんですけど、位置関係から分かる方、詳しい方教えて下さい。とりあえず読み取れたwave他すべて、今流に言えばカルチャーに関わる施設なんですね。おしゃれワードの羅列というのが全然おしゃれじゃない感覚になってしまったシンプルで丁寧なこの時代に、ありきたりな表現ですが一周回って、今…最高におしゃれです。

困ったことに『今…六本木』のアイデンティティが、タグとデモレンズのシールとテンプル裏の今にも剥がれ落ちそうな白の印字の3つだけです。

何となく全体から漂う雰囲気は、当時のゴルチエやニコル(MATSUDA)に近いです。あとはBADAのメタルもこんな雰囲気です。例えばこのテンプルの作りをみて『今…六本木』にしかない雰囲気かと言われると、全然他にもありそう…と、正直に答えざるを得ません。

使おうとすると一瞬で『今…六本木』のアイデンティティは全て無くなってしまい、ただのおしゃれメガネになってしまうため、今のところ個人コレクションとして保管です。

もう、そういう時代でしょ
修理とメンテ

21.06.13

もう引き渡して、手元に無いので書いておこうかなと。金無垢のフルリムの持ち込みでした。使えるかどうかはネジ次第ですし、開かなければネジ抜けばいいです。とりあえずは、食べ物とかと違って腐るものでは無いので、そして錆びるものでもないので、なんとかなります。汎用の金無垢のネジもそれなりにすぐに取り寄せ可能です。

芯金が金無垢のタイプです。上が持ち込み時で、下が磨き後です。金の値段がアレなんで、何だかんだ新品で買い換えるとどえりゃあ値段になりますから、磨いて再利用です。

計りも食品用ですし、鼻パッドのプラスチック部分が入っているので参考値ではありますが、グラムにするとこんなもんです。経験上、20グラム越えると凄いなと思います。現行物だと、同じような形でナイロールにする場合が多いのではないでしょうか。それで大体17グラム付近だった記憶があります。

20年くらい前に買ったというので、ちなみにで購入価格を教えて頂けましたが、なんかほんといい時代があったなあって思ってしまいました。定価なのかセール価格なのかは不明ですが、フルリムで20万円しなかったですって。もうその値に戻りそうに無いですから、悔しがってもしょうがないんですけど。田中貴金属で調べてみても、例えば2000年は平均1,014円/gですから、定価だったのかもです。

外務省のホームページ、キッズ外務省コーナーの世界いろいろ雑学ランキングに、ちゃんと金の年間産出量のランキングもあります。それを見ると、1位の中国が380トンです。グラムにすると380,000,000gです。これだと全然想像出来ないので、金の比重を19.3g/㎤として体積に変換します。これはただ電卓叩くだけなので、19,689,119㎤と出てきます。値が大きすぎるので、19.7㎥とすると何となくイメージが湧くかもです。それをさらに、記号がキーボードに無いのでややこしい書き方しますが、(x)^3=19.7となるようなxを求めますと((19.7)^(1/3)とグーグル電卓に入力です)、およそx=2.7と求められます。つまり、一辺が2.7メートルのサイコロくらいしか採れないということです。同じようにして、世界の年間採掘量が大体3,000トンらしいので計算していきますと155㎥となりまして、それでも大体一辺が5.4メートルのサイコロ程度の大きさしか無いですから、確かに少ないなと感じられます。

察するに、SDGsの流れもありまして1トンの岩石から数g〜程度しか採れない金ってどうなの的な見方もあるんでしょうけど、人間が頑張ってこれだけの量かって思いますと個人的にはやっぱり魅力的です。

ナイロンへの取り付け
修理とメンテ

21.06.09

出戻り。ちょっと前に載せた、アメリカの囚人用メガネです。老眼用で、鼻の造りがやっぱり常用をしようとするとダメみたいで、戻ってきました。鼻パッド(メタル足)の取り付けをしました。

実際に、ナイロンのフレームに足を埋め込むのは初めてです。素材としては粘り気があるのか、ヤスリの荒い番手では全然削れていく手応えが無く、細かい番手では薄っすら削れているかな?という反応です。とにかく埋め込む土台となる平面を用意するのに苦労しました。

基本、ナイロン系の素材はバフ磨き出来ないですから、ここからは力技的なやや無理やりな解決をとります。バフの種類とか粉とか回転数とか、あれこれ試行錯誤してなんとかこのレベルまで持っていけました。

蝶番の削りも、ヤスリで削れて開いていかないので大変でした。電動カッターで溶かしつつ削ぎ落とす感じで開きを増やしています。

ここまで整えれば、問題なく装用出来そうです。

平成手前
ヴィンテージのメガネ

21.06.06

おそらく、平成レトロ手前と思われます。実売期間としては重なることも大いにあったと思われます。

ケントの溝安全枠です。現代だとワイヤーリムとかカッコよく言いますけど、80年代後半ごろのポパイの広告で、白山眼鏡の似たようなオリジナルフレームが溝安全枠と宣伝されていました。溝は見た目通りで、安全枠の安全は、踏んでもレンズが逃げて割れにくいというところから命名されているみたいです。何周も回って、安全枠というカテゴリー名がカッコいい気がします。

横がカッコいいですね。1世代30年と言いますが、まさにコレのチタン版が今のヨーロッパ系のフレームだなという感じでして、何でも30年くらいで1周回るんだなと物からも分かりますね。

抗う
雑記

21.06.06

久々に時間論です。帯見ても、カバーの裏見ても、「エレガンス!最高!」みたいな雰囲気が漂っていまして、例えば数学で「エレガント」な解法みたいなエレガント系賞賛のときは、本当にすらすら分かりやすい明瞭さを伴っています。ところてんを食べるときの感覚に近いですね。なので、そんな心持ちで挑んだところ、結構??が多くて戸惑いました。まあまあ噛まないとダメでしたね。式を使わないというポリシーが本に貫かれておりまして、それのおかげで読みやすい方もおられるのでしょうが、個人的にはそのせいなのか6章くらいまでフワフワしちゃいました。

この本よりも10年くらい前に、日本で出版された本があります。結論はほとんど一緒だと思われます。正直、「時間は存在しない(以後カルロ本)」の理解のためにこの「時間はどこで生まれるのか(以後橋元本)」を参照しまくりました。カルロ本は、専門家として時空に作用する要素として重力の考察があります。ただ、橋元本の相対論の理解がないと、「ごめん、その前に速く動くと時の流れが遅くなるってことに、まだうんって首を縦に振ってないんだわ」という感情が噴出して、この辺でギブアップしてしまいそうになります。エントロピーの部分の理解にも、橋元本の赤玉と白玉の交換の図が大いに役立ちました。

カルロ本の訳者あとがきにある通り、マクロな時間の源泉が、ある数学の非可換性のみで確保出来るのでは?という考察は、理解度50パーセントながらおぉーってなりました。

カルロさんも橋元さんも、マクタガートの時間系列A・B・CのA・Bは実存しなくて、Cだけあるよねって主義です。サイエンス的にはAもBも無いって言われても、現にいま私の心にたぎるAの時間はどうしてくれるわけっていう心の落ち着かせ方は微妙に異なります。ですが、ざっくりな理解ではあんまり変わらない気がします。それはエントロピーの増大と意志が鍵になっているという主張はおおよそ一緒なはずです。

カルロ本と橋元本では正反対な題名なんですけどね。橋元本で始めに引用される、マクタガートの分類を適用すれば、どの時間が存在しないのか、そしてどの時間がそれでも尚、生まれてくるのかというのが分かります。

橋元本の初版が2006年です。カルロ本(日本語版)は2019年ですから、少なくとも13年ほど、この「あってC系列くらいだわ」という派閥が存在しているということに安心しております。私が橋元本を始めて読んだのがおそらく2010年ごろです。ブルバキを始めるときには、橋元本のエントロピー増大が云々それに抗う意志が云々みたいなことが、頭の片隅にありました。今はサンプラチナもやってますけど、とくにブルバキを始めるにあたり銀無垢がどうしても外せなかったことは、この辺に関係しています。当時は、普遍性とか言っていた気がします。

この5年で、ヤフオクだけでは無くてメルカリやら何やらも普通になりましたし、なんならebayも普通になりつつあります。頻繁な売り買い・物の出し入れでエントロピーの増大に抗うってのも一つの方法ですし、基本はそれが推奨された行為なんでしょうけどね。でもやっぱり動かないっていうのを何とか作りたいなぁという気持ちは今もちゃんとありまして、今年もなんか作ります。

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