アーカイブ:9月2016

日本人の眼
目のことレンズのこと

16.09.30

装丁がきれいです。後ろは、縦半分が布で、半分が紙です。前と後ろでパターンが違います。

目について、一般向けにちょっとだけ詳しく書かれた本です。現在でも通用する内容です。この時代に、ある程度視力についての理解が形成されていたということが分かります。

ただ、乱視に関しては「病的眼」という記述があり、そこはどうかなと思います。水晶体の歪みによる乱視は、普通に起こりえます。水晶体は柔らかいので、完全に乱視が無い人がそんなにいないくらいです。特に倒乱視と呼ばれるものの場合、英語では with the rule と呼びます。ここで言う rule とは、重力の自然法則です。年齢とともに、ある程度形が球体から潰れることは自然に起こりえます。

メガネ屋さんそれぞれの考えがあり、どれが正しいとは言えません。ただ、ブルバキとしては乱視は割としっかり矯正したいですね。近くも遠くもはっきり濃く見えます。その上で、遠く近くの球面度数を落としてあげて、眼の調節力を緩ませてあげたいなという感じです。球面度数が下がれば、レンズは薄くなります。仮枠の時間を十分にとって、空間等の歪みを感じないか、十分にチェックすることが大事になります。

メガネの日と目の愛護の日
雑記

16.09.30

明日10月1日は、10/01の表記がレンズとテンプルの組み合わせに見えることから、メガネの日です。目出度いですね。

そして10月10日は、90度傾けた姿が眉毛と目の組み合わせに見えることから目の愛護の日だそうです。歴史は割と古くて、こちらは1931年から。

ここで、冒頭の本の登場です。1942年、対戦中に出版された貴重な本が手元にあります。発行部数は5000。石原式と書くと、業界人には通じるかもしれません。

ここには、9月18日を「眼の記念日」とすると書かれています。明治天皇のエピソードとともに、明治11年(1878年)に定まった様子が描かれています。

ただ、ウィキペディアでも載っておらず、こうやって風化していきつつ新しいものに塗り替えられて歴史の層を作っていくんだなと感じる次第です。

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新しいメガネ
ヴィンテージのメガネ

16.09.29

イブサンローランのヴィンテージメガネ。80年代。

80年代ですと、ホンダのスーパーカブですら、フロントライトを含めて各パーツがカクカクになる時代ですからね。レンズの大きさにまずは時代感が出ますが、全体の雰囲気やデザインのムードが他のモノとリンクするので、そこも判断の決め手です。

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ただ、「おそらく」と前フリしたのは理由があります。ゴシック体みたいな、ゴツくて太い「YSL」のロゴがサイドに付いているのですが、そのロゴの時代が分からないので、ひょっとして70年代かなという気もします。

古着の軍モノに合わせたいです。ティアドロップに近い形ですが、流れるような美しさがこのフレームにはあります。アセテートですが、黒のツヤが綺麗です。全体を合わせたときに、粗野になりすぎない決め手になると思います。

フルレストア メガネの再メッキ
修理とメンテ

16.09.29

お客さんのメガネです。上の写真は、レストア後です。20年くらい使い続けたオリバーピープルです。おそらく、最近限定モデルと称して、または復刻モデルとして出ているものと同じ型です。ただし、こちらの方がカーキのセルとアンティークゴールドの組み合わせで渋いです。また、クリップオンのレンズカラーが、かなり遊びが効いています。リムがアセテートなので、縮みも無くテンプルとの隙間が生じず、ガタつきもなくて良好です。かなりグッときます。

①セルの磨き

②フレームの再メッキ

③クリップオンのレンズ交換

④先セル交換

⑤クリップオンカバーの交換

をしております。

①に関しては、表面がくすんでいるだけで問題なしです。本当に劣化しているときは、アセテートの場合、ビネガーシンドロームと呼ばれる酸っぱい匂いがします。あとは、水が浮き上がってきます。

②に関して。あまり知られていないかもしれませんが、メガネは再メッキ出来ます。綺麗に出来ます。

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元々は、アンティークゴールドのメッキでしたが、剥がれて銀色の地金が見えております。

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メッキ後。見事に全体が復活しました。

③レンズに関して。今回の紫のカラーは、現行のレンズメーカー共通のカラーパレットに無いモノでした。ただ、これもあまり知られていないかもしれませんが、プラスチックレンズは特注でどんなカラーでも作れます。

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見分けが付かないほど同じように染めています。日本のメーカーは凄いですね。今回はサングラス感を大事にする為、ハードコートにして白の反射光まで再現しました。

④ちょっと前の記事をご参照下さい。

ブログ:先セルの交換

⑤黄ばんでいるので、こちらも交換です。④での写真の黄色の虫みたいなのが交換したシリコンチューブです。

今回もお持ち込みでのご依頼でした。もちろん、大歓迎です。メガネだって、長く使ってあげたら良いですよね。その為には、ある程度直しがきく素材のメガネということになってくると、ちょっと良いメガネということになるのでしょう。あとは、わたしたちメガネ業界人の姿勢も大事になってきますね。修理を試す前から、お断りするケースも多いでしょうから。

タイムリープから思うこと
雑記

16.09.28

ものすごくベタに、映画「君の名は。」を見ました。確かに、綺麗な映像でした。特筆すべきはツヤ感と、光の透明感ですね。良かったです。

タイムリープ(時間跳躍)が仕掛けとしてあって、それに関してあれこれ見た人同士で議論がなされていると思います。

一つ、全てが上手く説明いかないのは、物理学的な時間解釈が完璧に時間を説明し尽くせないからでしょうね。一本の線で表現する「過去・現在・未来」のアレです。

ベルグソンという偉人がいます。1900年ごろに活躍した哲学者です。自然科学が世界を変え始めたときに、それでもなお、自然科学では解析し得ないものは何かを探求し、自然科学に抵抗しました。人間性みたいなものが、科学で全て説明出来るわけないだろうという感じです。時間もそのテーマの1つ。

ニュートン以降、時間は一本の線で表されるとされてきました。アインシュタインの誕生で、時間と空間が同一と見なされ「時空」と扱われるようになりましたが、概ね変わりはありません。私たちは、時間を左から右に流れる直線として想起します。

ベルグソンは、そういった時間の解釈を知りつつも、独自の時間論を提起します。それは、単位を持たず、互いに並列可能でない、直線ではなく融け合った時間です。つまり、一人ひとりの人生と切り離せない、融け合って後と先を区別できない時間です。純粋持続と言います。

確かに、自然科学は社会に大きな影響を及ぼしています。時計に従えば、みんなが同じタイミングで集まることが出来るので便利です。ですが、便利で有用だからと言ってそれが本質・本来の在り方とは限らないのでは無いでしょうか?

時間から飛躍させて。例えば目の前に、異なる質のメガネが2本あります。ただそれは、質の違うメガネが2本あるというだけなんです。さらに、例えば1000円と10000円だったとします。でもそれは、2本のメガネを見る、さらにそこから1本を選ぶという際に、本当は関係のないことかもしれません。もちろん、買う際には社会で決められているステップを踏まなくてはいけないので、支払額の差はあります。ブルバキも、もちろん価格の差はあります。ですが眼前には、あくまで質の違うメガネが2本あって、それは価格が10倍違うから、他方より10倍良し悪しということとは、別の話であるという考えも出来るわけです。

ものすごく長くなりました。要するに、理想論ですが、モノのあらゆる要素を数値化して、数値であるが故に比較が出来ると思い込んでいるだけなのかもしれません。そうではなく、あくまで質の違うそれぞれが眼前にただ在るという考えもありますよということです。

自分がそうでした。数値とか言語化された要素の多さで比較をしがちな人間でした。ただ、質に集中するようになって、惹かれる方を選べるようになりました。比較して良し悪しではなく、それがどう良いのか?に目が向きやすくなったという感じです。そうすると、予期せぬ良いものに出会える機会が増えて楽しいわけです。

引き続き「人間の建設」から
雑記

16.09.26

もう50年くらい、物を生かすということを忘れた時代なんですね。

今読んでいる本
雑記

16.09.25

『人間の建設  岡潔 小林秀雄 新潮文庫』

奇跡の対談ですね。

小林「好きになることがむずかしいというのは、それはむずかしいことが好きにならなきゃいかんということでしょう。」

凄すぎる。2ページ目には、もうこの内容です。

メガネにおいて、良き導き手とはどうあるべきか考えさせられます。メガネに限らず、好きなものが増えることは豊かですからね。未知から既知に、さらなる未知を求めて難解な道に次々進む過程は良いものです。

ウェイファーラー
ヴィンテージのメガネ

16.09.24

レイバンではない、オマージュのウェイファーラーと述べておきます。おそらく80年代、日本のヴィンテージメガネです。

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この前の入荷の中にありました。ウェイファーラーの形をあえて足す必要は無いかと思ってパスしたのですが、やっぱり王道の良さが気になってレストア。まさかのセルロイドで、磨いた後の光沢が上品でした。

なんちゃってですが、作りはむしろ良いですね。仕上げが丁寧なのと、蝶番のパーツの精度が高い、あとはカシメがしっかりしていてグラつく気配が無いのが素晴らしいですね。

レイバンのヴィンテージは、反対にちょっと荒々しい作りでかっこいいのですが、蝶番がパタついたりネジ切れしたり、カシメが緩んだり、割と修理の依頼が多かったイメージです。意外に、使用に関してはちょっと繊細。

これはしっかりしているので、ラフに使えそう。

サイズも52□22で、しっかりとオリジナルに寄せています。傾斜はオリジナルより大分減らして、5°です。おかげで頬に突き当たる心配が無いです。

大体こういうパターンは綺麗に丁寧に作りすぎて別物になるのがオチですが、これはなかなかでした。サイドもフロントと同じリベットなので、逆にそれが80年代のウェイファーラーと同じなのもまた良しです。

赤いメガネ
ヴィンテージのメガネ

16.09.24

ここまでやり切って透き通った赤だと、最高にカッコ良いですね。ヴィンテージならではの生地の使い方かもしれません。

レンズ入れると、途端にメガネがシャキッとします。生命力みたいなものを感じます。なんとも言えないじんわりとした良い気分です。お渡しが楽しみですね。

オプチルのヴィンテージメガネ
修理とメンテ

16.09.24

茶色のレンズを入れてみました。透明で、メガネとして使っても良いかと思います。オプチルという素材です。70年代に多く使われます。型で作れるようになった、初めての素材です。透明感や発色性がよく、素材も強くて軽いです。独特なツヤツヤ感は、この素材ならではでしょう。男らしいフレームですが、粗野すぎずいいバランスです。ティアドロップまでは冒険できないけど、なんかワイルドなメガネもいいなと感じている方には適していると思います。

ちょっと困ったことに、このフレームは鼻側に隙間があります。カザールとかその他でも見かけたことのあるディテールです。当時流行ったんですかね。

デモレンズがあれば、それを用いてトレースをしてレンズ加工を行います。今回はデモレンズが無いため、型板を使って自分でデモレンズを作ります。

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まずは、フレーム自体の型を直し、歪みを取りさらねばなりません。幸い、オプチルは形状記憶性もあるので、加熱してあげると自然に元の形に戻ります。不思議です。メガネ上部のラインは、真っ直ぐかと思いきや、やや吊り目でした。

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紙でレンズパターンを写し取ります。隙間の部分は想像で繋げます。この瞬間、オリジナルが入ります。基本は滑らかに解析接続です。

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あとは、切り取ってヤスリをかけてすべすべにしたら終わりです。

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良さそうですね。初めの写真は、この右レンズの型板を元にレンズ加工をしたものです。

状態が良くても、こういったひと手間がいることも多々です。送り出すまでに時間はかかりますが、こちらとしてもやり甲斐があります。

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