つい最近まで振り返りzakki

22.01.16

題名の通り、JJとその周辺の振り返りが出ていました。本の中でライバル誌との比較分析がされており、CanCamのめちゃモテが取り上げられていますが、それが2008年?とか何とかです。2000年代ってつい最近だった気がします。つい最近だったはずなのに、その中にいたはずなのに、渦中ではその取り巻く時代のエネルギーの出どころがよく分かっていなかったのだなと思いました。ファッションでは90年代ブームとかリバイバルとか言われて久しくなってきましたが、それもつい最近だなと感じていた矢先に、もっともっとつい最近がきた感じです。

『JJとその時代 女のコは雑誌に何を夢見たのか 鈴木涼美 光文社 2021年』

男だから読んでも共感できる部分少ないなぁとかは無いです。むしろ、JJという要素を薄めて雑誌とファッションの共犯関係の変遷とSNSの台頭くらいにやんわり読むと、なんと言いますか的確にいまの感覚を言い当てられているように感じてきます。

p.57
p.58

「近年の社会が目標とする多様性とは、基本的に横に広がる自由である。セクシャリティや人種、国籍やジェンダー、ファッション、教育、文化が横に広がり、そこに縦の優劣を認めない態度こそが、現在理想とされる世界のあり方だ。その際、個人の選択にはある意味拠り所がなく、個性や意志を問われ続ける。自由ではあるが、不安との戦いでもあって、どのように生きるのか、そのために今何をしているのか、自分の選択には何の意味があるのか、と問われ続ける。単純な優劣で縛られない代わりに、自分のしていることを、間違っていないと後押ししてくれるような規範は不在だ。」

ここでいう規範の一つが、かつてのJJであったというのが本の流れです。

p.83

「学生時代に惹かれる雑誌によって自分がどんな価値を信じる集合体に所属するのかを言い当てられる時代に比べて、自由度が格段に上がった現在、何をもって自分の選択を繰り返していくのかは、各々が自分の言葉で語らなくてはならない時代になった。自由に見えて実際はより小さいコミュニティに過度な連帯感があったり、多様化したように見えてファッションに面白みがなくなったりしたのはそのせいかもしれない。」

VERY妻の誕生のキャッチコピーの方が気になりますが、引用としてはその手前まで。VERY妻の誕生は、買って読んでください。雑誌=規範がない時代における自由と、自由にまだ不慣れなことによる弊害としての不自由が書かれています。また、私も創業時にそれを売り手が求め過ぎた期待し過ぎたと反省していますが、小さいコミュニティの過度な連帯感についてもサラッと触れられています。良いとも悪いとも書いてありませんが、敢えて記載があり尚且つ“過度”と注意が促されているので、あんまり良くは思われていないっぽいです。

p.248

「ファッションもまた、個人が膨大な情報の中から自分らしさや個性、着心地などを吟味して、雑誌や特定のファッションビルに頼ることなく選んでいるこの時代にあって、女性たちの洋服はむしろジャンルの垣根なくよく似ていて、人と同じがどうしても嫌だ、というような、かつての個性派雑誌が掲げた自分らしさやアンノン系雑誌が提案した高いファッションセンスともまた別の、ニュートラルで無難な格好が増えた。画一的な幸福の規定の喪失が、個性を伸ばしたというよりも大胆さや活力の減退を招いたようにすら感じられる。そして時代の気分を牽引する雑誌の吸引力がなくなったことにより、幸福や正しさの概念はむしろ通り一遍で変化に乏しく、なかったところに価値を見出すような幸福のイノベーションが起こりにくい側面もあるかもしれない。」

ちょっとページが飛びます。その間では、JJを深く分析するためにその土壌である高校生雑誌の分析がされています。ギャルとはそういう概念でそうやって生まれたと考えることも出来るのかと、ここの部分だけでも面白いです。ギャルもカウンターカルチャーっぽいです。

ギャルはさておき、規範が無くなることでトップダウンからボトルアップになったことで、それぞれが尖ってコーンフレークのパッケージに書いてあるような面積の大きな五角形を形成できるのが理想ですが、なかなかそんなことは起こらない現状が書いてあります。尖らずに真ん中の一点に収束しちゃいそうなのが今です。確かにリスク回避を重視すれば、それはそれで正しさを含みますからね。

都合よく引用してしまいましたが、こんな感じで今のファッションの感覚を雑誌の興亡という切り口で説明しています。なので、なんとなく近い感覚がある方は、読むと面白いかもです。そして、リアルガチで90年〜00年代のJJを愛読されていた方は、もっと面白く感じられると思うので、それはとても羨ましいですね。この本自体は、単純に雑誌の時代をもう一度的な主張をするわけでも無いので、その辺りも読みやすいです。

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