アーカイブ:11月2022

七宝塗装を剥がす
修理とメンテ

22.11.29

お持ち込み。チタンフレームに七宝塗装が施されていました。使用して3年ほどで塗装が一部剥離とのことで、装飾がダメになった程度で捨てるのも勿体無いので、いっそ七宝塗装を全剥がしして、チタンの素朴なメガネにしてみました。

写真撮るのを忘れていたんですけど、リムの鼻側に剥離が小さくあって、そこからペリペリ落としました。リムの上側に、七宝がまだ残っています。

基本的には、やり方が分からない場合はまず根性でいくんですけど、2時間で左右のリムの下側の七宝が剥がせれた段階で、爪が死にました。このあたりで根性論が間違っていたことにようやく気づきます。いつも気づくのは遅めです。七宝を剥がしてもっともっと長く使いましょうと、こちらから提案した手前、諦めることも出来ないんですけど想像以上に七宝塗装を落とすことは困難でした。

とにかく塗装が脆くならなくて、熱加えようがアルコール振りかけようが全然ビクともしないんですよね。あれこれ薬品使って、メッキが痛んでもダメですし、想像以上にペリペリ剥がすのに苦労しました。全部塗装を落として、ピカールで軽く磨いて上の感じです。母材がチタンですし、日本製であればメッキの下処理も綺麗なはずなので、やはりベースは全然ダメになっておらず綺麗でした。

鼻パッドとか、先セルとかネジとか、汎用品だと都合がなおのこと良くて新品同様に戻せます。元々はリムのデミブラウンに合わせて先セルもデミブラウンだったんですけど、今回はフロントのシンプルさに合わせて先セルもクリアにしてみました。

ちなみに、切羽詰まるとあれこれ試行錯誤するようになりまして、最終的にはメッキを傷めず高速でガリガリ削ぎ落とす道具としてテレカが適していることに気づけました。メッキの質や状態にも依ると思いますが、今回は小傷も付いていないくらいガリガリ削ぎ落としていまして、一応ピカールで肌理を整えましたという感じです。

ピンク色のレンズ
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

22.11.28

自分用で使っている銀無垢のサーモントのレンズを変えてみました。

変える前はこんな感じでした。原因不明ですけど燻されるスピードが速いみたいで、同じく4、5ヶ月使っている方と比較してもブリッジやリム周りの黒ずみ方が著しくて、それによる重厚感の演出もちょっとだけ多いなあと思うようになりました。

対処としては2つ。フレームを磨いて綺麗にするか、レンズの色を変えてG.I.グラスのイメージを取っ払うかです。せっかくのエイジングを無くしてしまうのももったいないので、今回はレンズの色を変えてミリタリー感を減らすことにしました。

今まで、サーモントが主流だった60年代〜70年代におそらく行われなかったであろう色にして、とにかくサーモントの醸し出す威厳みたいな雰囲気をふにゃふにゃにしてみようというのも狙いの一つです。その成果がトップ画像のあのピンクです。ピンク色で、最後どかーんと威厳も重厚感も全て、壊れちゃうとそれもいけないから壊れる手前で共存出来ないかなと思って、あんな感じです。

ちょっとまえに、度無しのクリスタルピンクがどうのこうの書いたと思います。多分2、3ヶ月前だと思いますがあれくらい前から探していました。妖艶な感じの少ない、ポップなピンク色です。この前のお客さんの表現が的確でそのまま貰っちゃうと、オレンジ色っぽいピンクを探していました。それなら銀無垢のサーモントにもギリギリ合いそうだなと。オレンジ色っぽいピンクの着想は、アメリカンヴィンテージの、フレッシュ(flesh)カラーなんですけどね。レンズカラーでヨーロッパ式のサーモントフレームに、アメリカを混ぜることを今回も念頭においています。且つポップで軽やかにしたいということで、オレンジっぽいピンクです。

(向かって左もノンコートです。レイガード435のスイート(PK))

クリスタルピンクの弱点は、度無しオンリーなんです。度付きの場合は、それを元に見本染色で近似色で染めることになるんですけど、薄いカラーは特になのか都度微妙に変わりますし、仕上げのコーティングによってもズレます。どの光が入射して、どの光が跳ね返るかが色の理論なので、コーティングでもズレますし、なんなら完全には予測不可能なズレがそこで生じます。

そんなわけで、メーカー独自の何かしらのピンク色で、毎回安定したクリスタルピンクの近似色が無いかなと探していました。いつものこの店のこの味的な、そういう色を。それがようやく見つかりまして、今回のレンズ交換に繋がっていきます。そのピンクは、HOYAのレイガード435のピンクです。盲点でした。名称がレイガード435のスイートでして、そのスイートに惑わされていました。ピンクの中では、スイート感少なめのピンクだと思います。

比較で置いたクリスタルピンクとほぼ同じ色味だと思います。しかもヴィンテージメガネが好きな方なら、なんとなくアメリカンヴィンテージのフレームのあのピンクっぽくないですかね?ブルーライトカットの一環で出た色でして、青をカットしたピンクということで黄色っぽい、黄色とピンクが混ざってオレンジっぽさが出ています。

最終、コーティングで少し赤っぽさが出たかなとも思いますが、オレンジっぽいピンク感は健在です。フレッシュカラーのセルフレームはとてもカッコいいんですけど、例えばピンクのフレームにグレーのカラーだと、やっぱり仕事に依ってはダメかなとか、さすがの僕でも考えてしまいます。そこでグレーのフレームにピンクであれば、ピンクが薄くて肌に馴染む黄色っぽさがあればいけるかなと思って、見本をとりあえず用意したいという狙いもあって作ってみました。

レイガード435の濃度としては、15パーセントくらいでしょうか。手に置いた感じで、日焼けが少し濃く見える程度の、おそらく掛けた状態ではレンズに色が入っていますと言われないとわからない程度の濃さです。横から見たときに、コバの発色が綺麗でメガネ全体が一層綺麗に見えていい感じです。ロレックスのミルガウスの緑の風防も綺麗で素敵で憧れるんですけど、ああいうさり気なさもあって個人的には満足です。

2022/11/27は休みます
営業案内

22.11.25

11月27日(日)は居ません。店は休みます。

242
ヴィンテージのメガネ

22.11.25

先日のドイツ仕入れから引き続き。カザールの242です。

この辺も、店を始めてすぐのときは日本から出てきていたんですけどね。めっきり日本からは出なくなりまして、それでたまたま声が掛かったドイツから仕入れました。

ツーブリッジなんですけど、ミリタリー感パイロット感ゼロです。しかも200番代は元々は女性用だったというところでレンズが小さめ、フロントが小さめです。小さめと言っても男用のカザールに比べてです。レンズ幅は51ミリでして、現行のボストン型とかのメガネよりレンズは大きく、それなりにゆったりとしています。いまの観点からすると、大き過ぎないメガネということになります。

ツーブリッジで程よくゆったりなので、掛けると意外にもふにゃふにゃ野郎な雰囲気が出まして、90年代のエイリアン系映画で初めに食べられちゃう人みたいな雰囲気も出ます。だけどカザールなのでちょっとだけ強いゴージャスな雰囲気もあって、このmod.242は本当に万能なおもしろメガネだと思います。

宿命なんですけど、テンプルが短いです。いつの決定かまでは分かっていないんですけど、ボクシング表記におけるテンプル長は、ネジ穴中心から先セルの先端までを指します。ですので、カザールは智が長かったり色々なので先ずはそこは気にせずの方が良いです。130ミリでも、普通の135ミリくらいの感覚です。でも確かに短いので、足りなければ先セルを替えて、延長するなりで対応します。

フロントの彩色が赤とか緑っぽいマーブルとかは良く見ましたが、今回はベージュでした。なんだかこの色も今っぽいです。

4年もの
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

22.11.23

サンプラチナの丸メガネ。型直しのご依頼でした。販売して4年以上経過しています。

サンプラチナは色の変化はありません。ロー付け箇所が小さく黒くなるくらいです。全体にびっしりと小傷が入って、落ち着いた光沢を放っています。こういう感じも良いですね。

ネジも、摩耗で緩くなる等々は見受けられず、とりあえずクリーニングと注油で終わりです。

これは!!
ヴィンテージのメガネ

22.11.22

おそらく、marwitzと言っても、いまの日本では名無しフレーム扱いに近いと思います。名無しフレーム扱いなら、それの方が都合が良いかもと思い始めまして、今回のこのフレームは特に先入観無しにインパクトが強くて面白いと思ってもらえるんじゃ無いかなと思っています。

ハイブリッジで、輪郭は六角形で、でもレンズの玉型は正方形で、リム周りは奥行きが出るように削り込みしてあって、まさにブラウン管時代のテレビっぽいです。色々な要素を詰め込みまくっていまして、メガネ界のおせち料理みたいになっています。それでいて破綻せず、めちゃんこカッコ良いので仕入れてみました。

60年代後半から70年代前半くらいなんですかね。オプチル素材が出ている時代であれば、そっちで作りそうなくらいに削りによる手間が掛かっています。

レンズサイズが先ほどに引き続き良くて、48□24です。レンズは小さめで、ブリッジを広く取ってFPD稼いでいます。ブリッジは広めですが、キーホールみたいにキュッとした部分が狭いので、十分掛かります。

クリアレンズだと、正方形のナードな感じが際立って使いやすいかもです。テレビジョンカット系のフレームは、目が見えないくらいの濃いレンズを入れるとたちまちモードの極み的な雰囲気が出ます。そんな感じにイメージを振っても良さそうです。

ヴィンテージフレームも、しばらく見ているとそれなりに既視感だらけになったりするものなんですけど、久しぶりにこれは!!ってなった1本でした。自分用もどれどれと思って2本入れたんですけど、そのうちの1本、グレーの方が検品の結果ダメだったのでショックです。

872
ヴィンテージのメガネ

22.11.22

店で取り扱うのは初めてです。カザールのmod.872です。

玉型とかプラスチック部分のバージョン違いがあと2型あって、型違いの方はレジェンズとして復刻もあります。これは復刻されていないはずです。このmod.872はオーバルで、玉型も90年代感が強めです。しかもサイズは53□15なので、レンズとブリッジの関係だけでいえば、中間くらいのメガネサイズです。カザールにしては大きくないという方が伝わるかもです。

物の満足感が凄いです。指示書とかどうなってるんですかね。セルの切り出しと、中のメタル枠の正確さと、ネジ穴の為の爪の取り付け位置と全部が正確でないと、セル枠に対して均一に余白が出来ないです。このデザインでこの作り込み具合は、後にも先にもやっぱりカザールくらいかなと思います。物のパワーは凄まじいです。

おそらく、茶色の目が見えないくらいに濃いレンズを全面で入れるとカッコ良いと思われます。

291
目のことレンズのこと

22.11.21

商品名が「くもり291」で曇りにくいということで、291は福井でもあるなあとか思いつつ、HOYAの防曇コートです。インスタでハァハァ言ってたあれです。

曇にくさは予想を超えていました。私のマックスのハァハァで曇らなかったですからね。

基本的には各社とも防曇となりますと、それしかレンズにコーティングされないことになります。傷防止とかのハードコートとかも掛けられていないので、傷に弱いです。

防曇も、こんな世の中なので進化しました。第1世代は専用クロスで1日一回レンズを拭かないと防曇効果が持続できないとかでした。それが無いので、曇るのが一番煩わしいのであれば有りかなと。

あとは、メーカーさんの提案まで気づいていませんでしたけど、度付きで染色でノンコート(防曇のみ)で出せる唯一の方法です。レンズの反射光が真っ白になります。ヴィンテージのフレームに相性が良いです。それは盲点でした。向かって左のレンズが、ブラウン10%の染色です。右のクリアも両方、LED(昼白色)の白色を白色のまま反射しています。

ただ、現代におけるハードコートは生活で言うところのインフラみたいな位置付けでして、ハードコート無しのプラスチックの傷つきやすさは中々だと思います。曇ることが一番の主訴であれば是非。

250
ヴィンテージのメガネ

22.11.21

海外からの入荷は、あとはカザールとカザールに準ずるものです。時間があるときにぼちぼち載せます。

カザールのmod.250です。カザールの200番代で、一番好きかもです。これがリストにあったので、今回の仕入れを受けたと言っても過言では無いです。4年ぶりに入りました。待っていれば、まだ何とかデッドストックで出てくるもんですね。メッキも、塗装も、印字も全部かすれていないなかなかの美品です。

値段はまあまあいきまして、ブルバキではこれで最後かもとか思っています。もう本当にドイツでも見つからんのかなと思っています。

赤黒のカラーは初めて。力強くてカッコいいです。

出典が見つからないんですけど、岡本太郎が「個性的な物の方が、普遍的である」みたいなことを何処かしらで述べているはずです。とりあえず載っていた本が見つかっていないんですけど、カザールはまさにそれを体現できたメガネだと思います。初めてみると、斬新さとか、作り込み方の尋常じゃない感じとか、とにかく感動します。一度見たフレームでも、時間を置けば新しくまた見え始めたりして、常に鮮度を保っています。常に鮮度があるという普遍性を持ち得た珍しいブランドです。

カザールといえばヒップホップという方もいらっしゃるかもしれません。おそらくそれはレジェンズとして復刻がされている600番代のゴツいやつかと思います。特にヴィンテージのカザールで200番代となると、意外に線が細くて装飾もコッテリしておらず、イケイケ感が少なかったりします。それも良いんですよね。

「何掛けているの?」と聞かれて、カザールと答えたときに

「マジか!?」とか言ってもらえると、

ちょっとだけ気持ち良くなれます。あまりにもカザールとヒップホップが結びついて、実際のフレームのラインナップとは離れてイメージが固定されてしまっているので、そこをちょっと裏切るだけで人に驚いてもらえます。

ほかの仕入れもそんな感じで、ナードなのにゴージャスみたいなやや捻れた属性のカザールをチョイスしております。

入荷その2
ヴィンテージのメガネ

22.11.18

ティファニーのセルです。これも90年代とクレジットが付いていましたが、CEのマークはやはり無いので93年以前かと思われます。

サイズは45□20です。フレンチヴィンテージやその周辺に近いサイズです。今っぽいサイズ感です。クラシックな雰囲気になる、セルでは小さめのサイズです。これが作られた時代、80年代後半から90年代頭となると、52□18とかもっとレンズが大きくてもおかしくないです。ティファニーの他に、アルマーニもこの時代はクラシックテイストで、当時としてはレンズが小さい、それが今となっては丁度いいサイズ感みたいなことが起こりがちです。

しかもストレートテンプルです。何だかんだストレートテンプルで太いと、それだけでカッコよく見えます。これも手元用だからレンズが小さくて、着脱しやすいようにストレートテンプルなんでしょうかね?用途と一体化しているかどうかまでは判然としませんが、ストレートテンプルだとカッコいいです。ストレートテンプルで企画してくれてありがとうです。

メタルの蝶番になっておりますが、これがフロントが狭いことに対しての対策として働きます。このメタルパーツの曲げを開いて側頭幅まで合わせれば良いので、フィッティングは簡単です。カザールの607とか、80年代のフレームにはよくあるセルフレームの蝶番への装飾方法なんですけどね。

金属はシャーリング加工がされていて、ピカピカではないです。生地の綺麗さを邪魔しない程度に光沢を放っている感じです。

生地の色も透明感もフレンチヴィンテージっぽくて、30年前もあの辺のクラシックは参照されていたんだなと感じ取れます。ティファニー名義なので、アメリカで言えばF.D.R.とかですよね。何度もおんなじこと言っちゃいますけど、時代はグルグル回っているんですね。

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