はじまりはコレでした925silver

19.05.01

載せるのせると言って多分載せていないので、久々に引っ張り出しました。今日からアレですから。

年代は不明ですが、30年以上前なのは確定です。私の前にバトンが渡されているのが、それくらい前なので。

金無垢K14、手造りの日本のメガネです。彫金は全て手彫りです。鼻パッドは擬似鼈甲の卵甲で作り直し、先セルは白鼈甲で挿し直して2年ほど使ってました。ちなみにこの先セルだけで、ブルバキの銀無垢2本くらい買える値段のはずです。耳だけでサラリーマンの夏のボーナス飛んだ記憶があります。鼈甲は白が強烈です。何もかも。

ろう付け部分のみあめ色に変化しています
鼈甲物には珍しく、芯入りです。終端にも手彫りが施されています。使用に伴う層状の経年劣化が見受けられます。
稲穂っぽい、有機的かつダイナミックな切削が見所です

そもそも彫金の辞書的な意味に“手で彫る”ということが書かれているはずなので、手彫りの彫金というのは頭痛が痛いや、まえだまえだみたいな重複になってしまっていますが、何でもかんでも彫金と言ってしまう世なので念のため手彫りの彫金と述べています。手造りに関しても同じくです。ネジを回す、磨く、そりゃどこかの工程に人間の手が入りますから、もちろんメガネは強いて言えば“HAND MADE IN JAPAN”なんでしょうけど。

これは、眼鏡業界に入って一年過ぎた時に頂きました。色々な方の順番を抜かして頂いた訳で、さらに言えばその人の息子さんを差し置いて頂いた訳で、物を介した継承という感動が、眼鏡を続けている原体験でしょう。いま振り返れば、全部ここから始まったと思います。

一応、ブルバキはヴィンテージ眼鏡からスタートしております。そこでは、楽しさやこんな物が商品として存在していたのかと、デザインと時代に対しての関心や興奮が得られると考えております。そして、そういったレガシーで散々遊ばせてもらった後に、もう一度普遍に戻るというのも悪く無いよねということで、現行品の無垢も細々と続けております。劣化しなければ、次に渡される可能性は高いですし、それはつまり皆さんが次のヴィンテージの生産者になれることを意味しております。そこに得体の知れない、自分がコントロール出来ない希望があります。

とか言いつつ、いきなり無垢物でも、もちろん良いんですけどね。私は25歳からずっと無垢かカザールか面白サングラスで生きてますから。それに、実際に20代前半のお客さんで、ほぼ初メガネくらいで買われる方も目立ちます。情報とイメージだらけで自分で何かを選択し決定しているのか何なのか分からなくなりそうな時代ですが、自分の眼と感動から選び取り、ブルバキへ共感を寄せてくれる方々がいらっしゃることはいつも救いです。ですから多分、令和もいい感じだと思っています。

早速、あのブリッジのメガネが販売になりました。ちなみに、初回生産で一桁です。工業製品で一桁です。ただただ請ていただいたメーカーさんに、足を向けて寝られない日が続いております。型代も考えますと、赤字は覚悟していませんが、今年度のキャッシュアウトはほぼ確定ですから、もはや諦念です。すでに来年も再来年もずっと頑張ろうという所存です。

手造りの上行く贅沢を、せっかく21世紀なんで、してみたかったんです。そこまで贅沢したら、よっぽど物が遺されると思いますから。

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