925silver

19.04.26

お待たせしました。先に彫金無しだけ頂きました。オープンからお渡し等々のご来店がありまして、ようやく夕方、一人になったタイミングでフレームの調子取りと鼻パッドを交換して、今これを書いています。曲を消して窓を開けて、街の雑踏を聴きながら、暫くボーッと眺めていました。想像を超えていました。

スマホで見ると、画面からハミ出すと思いますが、知っててそのまま載せます。タブレットだと、ちゃんと表示出来ますよ。ホームページの綺麗さよりも大事なことがありますから無視しますね。

一発目、どの玉型にするか迷いました。今回はトノー(44)と、オーバル(42)にしました。理由としましては、FPDの問題があります。皆さんが言うところのサイズです。

ブリッジの取り付け部の長さを調節することで、リムと干渉しないようにしているため、トノーでFPD68ミリ、オーバルでFPD65ミリです。おおよそ日本人の男性の瞳孔間距離(PD)が65ミリであるところから、このバランスにしました。実際、PD60付近の方でも、FPD65くらいであれば、掛けて大きすぎるという風にはそこまで見えないと思っています。女性であれば、やや大きめの方が可愛らしくて見える為、好まれる傾向にあります。男性でもFPD=PDは、光学的にはレンズが一番薄く仕上がるし、何となくヴィンテージメガネ界隈で正しい掛け方と言われているのは知りつつも、やっぱりちっこいから窮屈そうで好みではないと感じている方はいらっしゃいます。むしろ、ブルバキでは多数派ですが。結局FPD=PDというだけでは、メガネの掛け方として正しいかどうかまでは言えず、またそこに緻密さを要求していないというのも、この2つを選んだ理由です。

また、昨今はレンズの縦横比1:1くらいの物が好まれる傾向にあります。要は、丸だったら欲しかったのに、と散々言われそうなはずなのに何でオーバル?みたいな話をさらに以下でします。

簡単には直観なんですけど、バランス悪そうかなと。1920年代のコートランド等々も、リム形成時の精度の問題もありますが、真円とこの楕円の間くらいな柔らかい丸です。ごはんですよ感が極めて少ない丸です。

また、まん丸ですとレンズサイズ40ミリか38ミリが、一山のフレームでは売れました。42ミリ以上になりますと、クラシックでキリッとするというよりは、フニャッと可愛いお爺ちゃんみたいになるからでしょう。日本人の眼の大きさも関係ありそうです。

そのときにブリッジ幅が23ミリ、レンズ幅40ミリだとすると、FPDは63ミリになります。男の人の瞳孔間距離の平均値よりマイナス2ミリです。だいたい女性の平均値です。やはり初めの一発は、ピッタリ派が多い男性の真ん中を作りたかったわけです。

では、ブリッジサイズを2つ設ければ良いかと問われると、それもまたやってみないと分かりません。金銭的な問題もありますが、それよりもブリッジの一番上の部分、横に真っ直ぐな箇所を2ミリ伸ばした時に、縦幅をキープすればブリッジ自体の縦横比が崩れます。一方、縦幅を比率を崩さず変えれば、全体が大きくなります。その時に、オリジナルに対して忠実に再現できているか?同じような雰囲気が維持できるか?この二点は保証出来ません。おそらく、この絶妙なバランスで保っている以上、崩れると予想出来ます。ならばブリッジのすべての要素は変えない方が良いと判断し、レンズサイズと形状によって、FPDのバリエーションを設けることにしました。

あとは、横長の方がこちらの都合が良いからです。乱視には角度があります。様々な要因で乱視になりますが、重力によって、弾力性のある角膜や水晶体が潰れても生じます。軸180度の乱視です。個人的な検眼の感覚ですと7割型はこの180度では無いでしょうか。確かに英語ではw.t.r.(with the rule)と分類されるはずです。ルールとは則ち自然法則であり、重力という話です。

では、180度の乱視(マイナス度数)は、レンズにするとどこが厚く仕上がるかと言えば、それは上と下です。しかも上下は左右よりも眼球運動が苦手な為、そこまでレンズ幅が要らないのに、そこが厚くなります。欲を言えばガラスのレンズを積みたい!として、残念ながらテンプルは細くて摩擦が生まれにくいです。であれば、少しでも重さを減らすために、不要な厚くなる部分は切り落としたいというのが、掛け心地も含めた美しさを考えたときに念頭にありまして、横長の玉型2つにしました。

以上、なんでこのレンズ形状?について書いてみました。以前もどこかで書きましたが、ただの眼鏡屋が、0からデザインをしようなどとは考えておりません。まずはヴィンテージを、保存出来る形式に変換することが第一です。その過程の中で選択に悩んだ時に、眼鏡屋として合理性のある方を選びました。ちなみに合理というのは、冷たい無機質な要素ではありません。例えば植物、生きるために不必要な器官は何一つ備えていません。つまりは、植物も合理の塊です。本で誰かが書いていましたが、忘れました。

お気づきと思いますが、美しさの秘訣みたいな、美魔女の種明かしみたいなことは書いていません。私もそこまで分かりきっていない、そもそも分かるとは畏れ多いという感じだからです。ですからそこは見ていただいて、それぞれに判断して頂ければと思います。

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