カテゴリー:修理とメンテ

凝りに凝っている
修理とメンテ

23.06.16

ジュニアゴルチエの枠入れ。ワンオーナーでした。みんな良いもの買ってそのまま持っていますね。羨ましいです。

ベースのメタルフレームもゴツくてカッコいいですね。セル部分は、ねじ止めでメタルフレームの裏にくっついています。セル巻きでは無いです。あまり使用していなそうでしたけど、それなりにくすみがあったので磨いてみました。手で持っている方が磨き前です。

横も良いですよね。カットリムの薬研っぽい処理になっています。ちょっとヴィンテージメガネ好き向けの解説になりますけど、この辺の意匠がAOのコートランドを彷彿とさせますよね。ブリッジが上にあるのもそうですけど、特にこのリムの感じが。

 

いまのところベスト
修理とメンテ

23.06.12

フルビューのニューモント型のお持ち込み。

このレンズ掴み部分は、現代的な硬い掴みのときの距離感で合わせると、レンズがガタついてすぐに緩みます。板バネでしなるんです。もっとブリッジ側にベタ付けがナイスです。今回はレンズ交換とのことで、ついでに直せました。

このニューモント型は、ネジの入りが3パターンありまして、前から、後ろから、そしてカシメて外せないの3パターンです。何となく、後ろからネジを入れて、フロント前面に切ったネジ先が見えていることが多い気がします。中古を探すときは、レンズの固定方法にご注意を。

それで、そもそも長期の使用や何度もレンズを入れ替えて使用することを想定していなかったと思われますが、とにかくネジの頭が飛ぶ、受け側のネジ穴が広がって締め込みきれない、レンズの厚みが増してネジが足りない、何かしらのハプニングが起こるのがこのフレームです。もはや期待してしまう自分がいます。

 

最近ようやく、これが一番見た目が良い修理ではないかと、たどり着いたのが上の写真たちです。度付きの透明なレンズを入れました。

ふつうに供給されている、1.2ミリのヨーロッパ規格のツーポネジに、1.2ミリの底付きナットで締める方法です。そもそも、ネジ切りがドンピシャでスクリューが全く面から出ていないと、それも緩みやすくなる原因だったりします。例えネジ頭が飛ばなくとも、元のネジ穴が生きていても、その緩み易さやレンズの脱落に先回りで対処したいなぁということで、ネジは交換しておきたいところです。二重に締め上げれていれば、さらに緩みにくいですからね。

あれこれ書きましたが、でもそれはメガネ屋の都合だったりしますので、まず大事なのは見た目が崩れない変更なのか?ということが心配かなと思われます。写真を見てみますと、裏のネジ頭の収まりもなんだか妙に合っていますし、フロント側は少し底付きナットが飛び出ますけど、そんなに気にならないと思います。ヴィンテージの風合いが崩れていないので、オススメです。

 

 

ペルソール
修理とメンテ

23.06.05

保管していて、枠が広がってしまったとのことで、型直しとレンズサイズの修正をしております。

印字も綺麗に残っているくらいなので、そこまで使っていないはずなのに蝶番がパタパタする、ネジを締めてもパタパタするということで、コマの具合も調整しました。

とりあえず、幅を140ミリまで戻してみました。撮り忘れましたが、生地が縮んで変形し、薬研とかレンズカーブの具合で腕が閉じることも開くことも共にあり得るんですけど、今回は開ききっちゃうタイプでした。180ミリくらい開いていました。

これくらいの幅にしておけば、平均な150ミリ〜160ミリの側頭幅で、程よくテンプルがしなり、バネによる密着感を味わってもらえるんじゃないかなと思います。

リム切れ寸前なのでは?というくらいにキツくて、レンズを割って取りたいくらいでしたけど、やっぱりレンズの純正の刻印は捨てがたいよねってことで頑張ってみました。

 

コマのガタつきは、何でなのかようわからんですね。そんなに使って無さそうですし、減ったとかそういうことでは無さそうです。

ある程度、蝶番をコネコネして隙間を埋めてみて、これ以上はコマ同士が水平に当たらなくなっちゃうなということで、ワッシャーを入れてみました。

そのままでは径が合わずに入らなかったので、ドリルでツンツンして穴を広げて、すぽっとワッシャーがハマるようにしています。

上の写真で、コマが5個重なっているんですけど上から1個目と2個目の間にワッシャーが入っています。

なんか引っかかっている感じもありまして、蝶番のあがきが優良可の良くらいなんですけど、ネジを締める手応えとガタつきの無さは優という感じなので、これで完了とします。

黒セルへの鼻盛り
修理とメンテ

23.04.29

ルノアの鼻盛りしました。

昨年、当店で枠入れしており、やっぱりまつ毛がレンズ後面についちゃうよねってことで、今度は鼻盛りしました。

幅はあまり変えずに高さだけ出したいので、外側いっぱいに取り付けて、はみ出した部分は削るとこんな感じです。

細くて華奢な感じを邪魔せずに盛れたかなと思っています。鼻盛りの主張が強いと、鼻!!って感じのメガネになっちゃいますからね。

J.M.M.
修理とメンテ

23.04.03

ついにここにも運び込まれましたね。ジャックマリーマージュです。

色々コンテクストがありますけど、そこに怖気付かずに物を見て触って、直接感じるべきことは、要は日本製のアセテートフレームということです。ここはひとつメガネ屋としてドシッと構えまして、フィッティング上、鼻盛りが必要であればいつも通り取り付けを行います。

 

 

 

取り付け前。モデルによっては、鼻盛りパッドが散斑で本体と共色だったりします。そうしますと、流石に鼻盛りは勿体ないなあと思うところです。今回は、透明のバージョンでしたので、そこは未練なく着手出来ました。

鼻盛りが終わりました。総重量がなかなかありますから、鼻の乗り具合は重要かもしれないですね。例え幅が合っており、オリジナルで下げ止まっていたとしても、もとのパッド面が小さいため圧を感じるのであれば、交換するのも手でしょうね。

カッコ良さの感覚としましては、車のレクサスとか新型のクラウンに近いものを感じました。元々のフレンチヴィンテージのクラウンパントは、角が立ってパキパキで、あれはあれで物の質量が際立ってカッコいいんですけどね。いま作るとなったときに値段なりのゴージャス感が欲しいなとなりますと、エレガントな感じも欲しいよねということになりまして、そうしますと曲線の優美さの出番なんでしょう。そういう、直線的な質量の表現と曲線的な流動体のような表現と、対極の融合が一つのフレームの中で起こっているように感じました。

ここからは余談で。触ったときの勘だけの話ですけど、クロムハーツのメガネと工場が一緒なのかなと思いました。いまはブルバキとして川下の産業に従事しておりますから、本当に触った時に感じた何となくの感想なんですけど。

作りがどうとかいうよりも、例えばメガネに対しての目の付け所が一緒な気がします。この前の話みたいに、ラグジュアリーなメガネを作るとなったときに、着手としては細部の作りからコツコツと積み上げるということになるんでしょうけど、その細部の組み合わせと言いますか、メガネに向ける視線が同じな気がします。同じ目線の違う表現みたいな。もちろん企画の会社が違うんですけど。製造が一部重なるとか、人間で言うところの癖が似ている感じがしたんですよね。まあ気のせいですね。

どちらのブランドのフレームも、是非他所の店頭で見てみると面白いですよ。

鼻盛りの追い込み
修理とメンテ

23.03.24

お持ち込み。既に鼻盛りの改造済みでした。それのブラッシュアップです。

かなり綺麗で、水平面もキッチリですし接着面に気泡も無いです。工業製品の観点からキッチリ綺麗ということですけど、確かに正面視の鼻パッドの迫り出しや、顔につける側の接着剤による面の揺らぎが、気になるといえば気になります。

となりますと、僕みたいな存在の出番と申しますか、時間かけ放題の店ならではの処理を施していきます。

こんな感じです。鼻パッドの余りを削り落として、あとはひたすら磨いています。

607
修理とメンテ

22.12.13

カザールのレジェンズです。MOD.607です。自分用で7年くらい前に買って、そのままでした。カザールのレジェンズって良いですよね。現代のメッキの技術は凄まじいので、金具の心配が全く無いわけではありませんが、プツプツしたメッキの浮きとか緑青が少ない気がします。カザールのレジェンズもナイキのエアジョーダンみたいな感じで、ずっと続いて欲しいですね。

削る前を撮り忘れました。これは鼻の部分を削って、鼻盛りの土台を作った状態です。削る前はもっと尖っていまして、鼻盛りの接地面が無かったんですけど、深さ0.5ミリか1.0ミリか、それくらいヤスリで削ると、幅1.0ミリくらいの接地面を設けることができました。この607も問題なく鼻盛り出来ますね。

結構違和感なく仕上がりますね。鼻盛りしないと、鼻に乗せる部分が広すぎて下がり、頬でメガネを支える感じになります。それが不快で、結局使わずに寝かせていました。

もっと早く処置していたら良かったです。鼻盛りしたらいけます。トップ画像に載せましたが、レンズ込みで50グラム超えていますけど割と調子良いです。テンプルの幅が広いお陰で、摩擦でしっかり止まっている感覚があります。ということで607も全然違和感なく掛けられます。

ちなみに、テンプル長が140ミリ表記ですがヨロイが長いので、テンプルも実際は長いです。ネジ穴中心から終端の長さなのでそうなります。普通のフレームだと150ミリくらいの感覚です。まず長さが足りないことは無いと思います。

七宝塗装を剥がす
修理とメンテ

22.11.29

お持ち込み。チタンフレームに七宝塗装が施されていました。使用して3年ほどで塗装が一部剥離とのことで、装飾がダメになった程度で捨てるのも勿体無いので、いっそ七宝塗装を全剥がしして、チタンの素朴なメガネにしてみました。

写真撮るのを忘れていたんですけど、リムの鼻側に剥離が小さくあって、そこからペリペリ落としました。リムの上側に、七宝がまだ残っています。

基本的には、やり方が分からない場合はまず根性でいくんですけど、2時間で左右のリムの下側の七宝が剥がせれた段階で、爪が死にました。このあたりで根性論が間違っていたことにようやく気づきます。いつも気づくのは遅めです。七宝を剥がしてもっともっと長く使いましょうと、こちらから提案した手前、諦めることも出来ないんですけど想像以上に七宝塗装を落とすことは困難でした。

とにかく塗装が脆くならなくて、熱加えようがアルコール振りかけようが全然ビクともしないんですよね。あれこれ薬品使って、メッキが痛んでもダメですし、想像以上にペリペリ剥がすのに苦労しました。全部塗装を落として、ピカールで軽く磨いて上の感じです。母材がチタンですし、日本製であればメッキの下処理も綺麗なはずなので、やはりベースは全然ダメになっておらず綺麗でした。

鼻パッドとか、先セルとかネジとか、汎用品だと都合がなおのこと良くて新品同様に戻せます。元々はリムのデミブラウンに合わせて先セルもデミブラウンだったんですけど、今回はフロントのシンプルさに合わせて先セルもクリアにしてみました。

ちなみに、切羽詰まるとあれこれ試行錯誤するようになりまして、最終的にはメッキを傷めず高速でガリガリ削ぎ落とす道具としてテレカが適していることに気づけました。メッキの質や状態にも依ると思いますが、今回は小傷も付いていないくらいガリガリ削ぎ落としていまして、一応ピカールで肌理を整えましたという感じです。

完成しました
修理とメンテ

22.11.15

鼻盛りの完成です。

これが、昨日の段階です。本当は4・5時間で固まるはずですが、念のため一晩寝かせて固まってから磨きます。今回は幅をさらに狭めたかったので、内側ギリに設置しています。その関係上、透明がはみ出しています。このアングルから覗かれることもないので、このまま磨いても良いのですが、物としてはあと一息欲しいところなので、はみ出した透明を削ってから磨きます。

無事に仕上がりました。良い感じに出来たので、今日もドクター・キャピタルを1つ見て気分よく眠れそうです。

いまこんな感じです
修理とメンテ

22.11.14

近所で新築を建てている人がいるんですけど、毎週か隔週末くらいな感じで現場を見に来ていて、そうだよなぁ家となると不安だよなぁと思っていました。

今回、一回ほかで鼻盛りしたけどあれこれということで、鼻盛りのご依頼を頂きました。ここに載せずにスッと終わらせようかなと思っていましたけど、その新築のひとが頭に浮かんで、透明性だなぁとか開示だなぁとか思っていたタイミングなので、載せます。

とりあえずあたらしい鼻パッドを乗せたところです。もう一回、水平面を作って乗せます。乗せるときに、どこかを基準点にする場合もあるんですけど、この場合だと画像からも何となく分かるように、キーホールをキーホール然とさせるキュッとしてパッとする部分と(すみません言語化しにくいです)そこにパッドの先を揃えたくなります。それでオッケーな場合もあるんですけど、今回は違いました。

上の写真は、フロントの顔側から写した写真です。本物のキーホールブリッジの為、表から裏にかけて末広がりな削りが施してあり、鼻がキツイということを緩和しようとしています。日本人では鼻がキツイということは起こりにくいんですけど、海外のフレームなのでちゃんとスムースな処理がしてあります。

そこで、もう一度上の写真をみます。キーホールの左右のアーチとかそのキュッとしてパッとする部分を観察しますと、左右の高さが違うことがわかります。多分1ミリくらいなんですけど、キュッとしてパッの部分も細かく削りが施してあります。よく観察しますと、左右差もあって、なおかつキュッの先端付近は曖昧ということで、ここをパッド取り付けの基準点とするのは、基準たる安定性を満たしていないです。擁護するわけでは無いんですけど、ここで左右のパッドがズレたんだと思います。

ちなみに表からみると、キーホールのキュッとしてパッとする部分は左右対称です。つまり、裏側にかけて末広がりに削って鼻への当たりをマイルドにするという作業で裏面に左右差が出来ています。この辺の話は長くなるのでまたいつかにしますが、「こんな感じになるようにこんな風で…」みたいな指示があると思うんですけど、人に依存すること(こんな感じのこんなの部分の解釈のズレ、技量)とか、素材もアセテートかセルロイドか柔らかくて削れやすくて、切削や磨く作業を重ねるとズレやすい場合、数値化できないことは指示書に載せられないこともあると思います。そこは工業製品としてどうすべきかと葛藤を生み出しやすい部分でもありつつ、なんだかんだメガネは他のプロダクトよりもエイっとやってしまうことも多くて、これはエイっと調子をとることが多めなプロダクトかもしれません。それは全体にも波及するので、今回は鼻の部分、キーホールブリッジを端緒に大らかな雰囲気が垣間見えました。実際そういうフレームは、今回はお客さんがフレームを出して頂いたときに一瞬でも「ヴィンテージかな」とか頭の中でよぎります。全体が優しいんですよね。

明日からは、はみ出した透明な部分を削り落として磨きます。

_170831bk

pageTopLink