カテゴリー:修理とメンテ

蝶番の修理
修理とメンテ

24.01.12

この前みたいに、蝶番の真ん中が無い云々でしたら店でアレなんですけど、このレベルは無理なので工場送りになります。右蝶番は一番上のコマが無いです。ネジの頭ごとコンビで無くなっており、ネジ抜きしないとテンプルが外せません。ただ、蝶番の上という大事な部分が吹っ飛んで無くなっており、工場へ送る前の時点で、おそらく蝶番ごと交換だろうなということでテンプルはプラプラの状態で送りました。左蝶番は一番下のコマが無くなっており、ネジの締め上げが出来ません。

フランスとその周辺のヴィンテージフレームは、けっこう生地が硬くてリム切れも多いイメージです。カシメの再打ち込みに際しては、一回り太いピンを打ち込むことになります。工場の技術があることは前提に、こればかりは亀裂が入らないようにお祈りしかありません。最後は生地のポテンシャル頼みです。

工場から上がってきたのがこちら。無事に蝶番を替えて頂けました。毎晩の祈りが通じて、亀裂もありません。めちゃ綺麗です。

全体の磨きと、テンプル側の真ん中のコマの磨きは当店で。修理がめっちゃ綺麗な仕上がりだったので、最後の一押しでほとんど修理した痕跡が無くなりました。

以下は、あくまで予想なんですけど。

裏面のピンの再打ち込みの形跡は1本です。磨く前にテンプルを外したところ、コマとコマの間にカシメてはいないピンの頭が垣間見えます。

パーツの返却を見ても、左右同じ仕上がりで外したピンが2本です。次はフロントを正面から観察します。

向かって右、耳側が新しいピンです。そして、かなり分かりにくいのですが、向かって左の鼻側のピンは一回り細いため、多分これは修理前の元のピンです。

 

おそらく、元の蝶番を外す際に鼻側のピンはそのまま残して再利用しています。これは、新しい蝶番が横並びで2本ピンを打ち込むにはスペースが足りない為でしょう。そのままでは、元の間隔で2本のピンを打ち込むことが出来ません。そこで、コマとコマの間に穴を開けて、残してあった鼻側のピンをその穴に通しています。空きスペースには、ピンを抜き去った耳側の穴と位置合わせをした新しい径の太いピンを打ち込み、蝶番をしっかりと保持することが出来ています。蝶番側の穴が片方は余白側で、もう一方こんな感じでコマとコマの間にある物は見かけたことが無いので、おそらくこういうことだと思いますけど、標準でそういう蝶番が鯖江に存在していたら、褒めすぎですみません。

ただでさえ、生地が痩せたりピンが緩んだり何だかんだで、蝶番金具はガタつきをおこします。ピンが1本だと、さらに回転の動きが生まれてしまいます。よりガタつき易く、緩みが進むとくるくる回ります。古い鼈甲のフレームでピンが1本のものを見かけますが、基本はモーメントが生じないように、2点以上で蝶番は保持するのが良いでしょう。特に今回の修理品は、蝶番を取り付ける際にあらかじめ生地側に蝶番金具が収まる窪みをつくる“座ボリ”の工程が飛ばされているフレームです。ピンを打つ前の金具が、生地の上で安定していない訳です。座ボリがあり、それで仮固定されてモーメントが生じなければ、ピン1本の打ち込みでも良かったのかもしれません。

緩みにくくする配慮として、足りないスペースで2本留めを実現させていまして、さらにそこでは修理の際のフレームの負担も同時に減らす配慮がなされております。それが先ほどの鼻側のピンをそのまま再利用しているということです。それによってピンを打ち込む回数を減らしており、最小タッチ回数で直っています。

仕上がりを観察しての、工場での修理内容のあくまでの予想ということになりますが、大きく外していないんじゃ無いかなと思います。それにしても、さすがにあの状態からここまで戻るとは私も予想出来ていませんでした。この修復内容には大変感動しました。

セル巻きと七宝
修理とメンテ

23.12.06

修理のセル巻きと、七宝塗装の在庫が同時に届きました。ちょうど良い機会なので並べておきます。

ヴィンテージのアルガのセル巻きの交換をしました。アルガとかヒルトンクラシックでいうところの、チェストナットというカラー名の巻きです。割と近い色と柄の物で新品に変えられます。

仕上がりはこんな感じです。

 

七宝塗装のブームの為かどうかはさておき、納期が結構かかったのがこちらのフレームです。

これは、もともと在庫で店頭にあったサンプラチナのクラウンパントに七宝塗装を施しております。この前のお客さん受注分のクラウンパントに七宝塗装のこのパターンがとても良かったので、店頭在庫も作りました。

こっちの加工の方がボリュームは少なくて、セルっぽい雰囲気があまり足されないです。パッと見で、やっぱりメタルフレームだなとなるのが七宝塗装です。セル巻きは、コンビフレームかな?と一瞬思わせてくれます。

セル巻きよりリムの飾りが脱落しにくい利点があります。

とりあえず何か詰めておく
修理とメンテ

23.12.03

はじめての手法です。

真ん中のコマが折れています。微妙に元のコマが残っています。コレのせいで詰め物が出来ないので、上下を傷つけないように注意しながら真ん中のコマだけ狙って取り除き、あとはたまたまワッシャーが良い感じにハマりそうだったので、隙間が埋まるまで重ねました。ラッキーで3枚でぴったり。

取るとこんな感じです。やはり真ん中が無いと、ネジの締め上げが出来ずにテンプルがパタパタしっぱなしです。なんだかなぁということで直してみました。予想より綺麗に仕上がりましたし、今のところテンプルの開閉はスムーズです。ただ、詰めた物はツーポフレームで使うワッシャーなので、開閉で摩耗し易いかも知れないです。

かなり蝶番の打ち直し痕があります。大事に直しながらたくさん使っていたんでしょうね。

曲がり例
修理とメンテ

無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

23.10.06

販売した商品の、サンプラチナフレームの曲がりの直しでした。外に開き、上にも曲がっています。

結構これは理想的な曲がり方でして、紡錘形に広がる手前で開き、なおかつ上に曲がっています。曲がる支点が一箇所です。

紡錘形に潰して偏平な箇所が彫金の為のスペースになっていたりとデザインの要になりつつ、横にも縦にも強い構造的な秘訣にもなっています。そして曲がるときは、曲がりやすいところから受けた力を逃すべくクニャッといくので、だいたい紡錘形に広がる手前の一点で曲がります。

あちこちでくにゃくにゃしていないので、直すときはその一点と予想されうる力を受けた方向を見つければ良いですし、あちこちでくにゃくにゃしていないため、曲がりを直したときに生じやすい曲がり癖みたいな形跡が残りにくいです。

梱包してしまったので直ったあとの写真が無いんです。曲がった量は多いですが軽傷扱いで、これくらいなら店頭でその場で対処できます。ロー離れとかになると、工場送りですね。

下準備
修理とメンテ

23.09.19

サーモントの枠入れです。CEマークあるので、それなりに新しい物ではありますが眉毛パーツがリムに掛かっています。鼻側の引っ掛けるためのピンが斜めにズレているので、生地が縮んでインコースにはみ出した感じでしょうね。

上が処理後、下が処理前の写真ですね。

いまのところs-7.00くらいの強い、縁が厚いレンズが入る予定ですから、先回りで対処しておきます。

反対側の処理後です。

鼻側もハミ出しの処理後のみ載せています。

とりあえずはここまで。これでうまく入れば良いんですけど。元のフレームカーブが4か5カーブくらい、おそらくレンズのベースカーブが0.5か1.0カーブくらい。リムへのはみ出しを削りつつ、フレームカーブもついでに落としています。眉毛パーツがそこまで柔軟に真っ直ぐならないんですよね。それに真っ直ぐにしすぎると、フレーム側のネジ穴と眉毛側のネジ穴がズレますし。今回は頑張って3カーブくらいまで落とせたと思います。

ベースカーブが1カーブくらいのレンズを3カーブくらいのフレームに枠入れすること自体は簡単で、どこでも行われていることなんですけど、眉毛パーツのことまで考慮してとなるとやや難しいです。

ヤバい図ですみません。青が理想的な切削のラインですかね。

もしフレームも真っ直ぐで眉毛も真っ直ぐなら、レンズの薬研も真っ直ぐ削って、その薬研位置は出来るだけ前面にしておけば良いです。厚みを極力後ろにもっていくという方が分かりやすいかもです。今回の下準備で、眉毛パーツの“後ろ側”のリムへの干渉は取り除いています。

眉毛パーツの後ろ側のみ干渉しそうな部分を取り除いているのは、眉毛パーツの前側を削る行為にフレームの雰囲気を変えてしまう恐れがあるためです。最終的に必要であれば行いますが、最小限にしたいです。

レンズの縁厚があるので、フレームを鑑みて実際に削るのが赤いラインです。車のout-in-outみたいに、後-前-後の軌道をとれば、レンズ前面が平らでも問題なくカーブを描けます。例えば加工機のオートモードも、多分レンズとフレームの良い塩梅くらいでこういう曲線を描くと思います。そうしますと、レンズの縁同士、赤いラインからレンズ前面にかけての余白が多くなります。つまり、レンズの前面も干渉するかもという懸念が湧きます。湧きますけど、先ほどの通り眉毛パーツの前面の切削は雰囲気を変えてしまいますから、とりあえずは本番のレンズを削ってのお楽しみにしておきます。

極端でめちゃくちゃな図なのであれですが、この差が出ます。

あとは、チルトとか色々あるんですけどそれ書いて誰得?みたいな感じになるので終わります。

フタ
修理とメンテ

23.08.09

鼻パッドのアームが折れています。

修理となりますと、まずは元通りに戻すという方針が立ちますけど、アームを溶接しても強度が無さそうなので復元は諦めます。次に、アームを取り外していい感じの新しいアームを取り付けることを考えてみます。

ただ、アームの取り付けは一回限りの想定です。張り出しのある杭の埋め込みですから、取り出すときにえぐれます。おそらくガバガバ。穴を塞いで、そこにまた適切な大きさの穴をあけたうえで再度アームを埋め込むとなりますと、結構大がかりです。時間とか手数が増えれば費用もかさみます。

そもそも、ある程度使用したセルフレームという条件を鑑みますと、再度の穴明けでの予期せぬ亀裂が一番怖いです。より壊れちゃうみたいな。俺がトドメをさしておきましたみたいな。ということで、今回はアームの取り替えをやめました。

前々から考えていた手法ではありますが、実際にやるのは初めてです。修理でというより、セルのフロントで鼻パッドのアームがあるのが気に入らない方に対して、セルフレームっぽい見た目に改造出来ますよと。

結構土台の余白が少ないかつ、元々のえぐれが広範囲な為、穴埋めをしつつ鼻盛りを被せていますけど、上の付け根からちょっとだけ元々の穴のあった痕跡が見えています。それだったら金属の土台を引っこ抜かずに、アームをニッパーで除去した後に金属の残りとセルの土台と面を合わせておいても良かったですね。

枠入れ
修理とメンテ

23.07.12

お持ち込み。レンズは入るんですけど、1発踏んでしまっているのかリベット周辺に亀裂があるのと傾斜が左右でズレています。反対側のテンプルは、近いカラーの別フレームから移植されたテンプルでした。

テーブルタッチテストをして、とりあえず4点がついているので水平には戻せました。

凝りに凝っている
修理とメンテ

23.06.16

ジュニアゴルチエの枠入れ。ワンオーナーでした。みんな良いもの買ってそのまま持っていますね。羨ましいです。

ベースのメタルフレームもゴツくてカッコいいですね。セル部分は、ねじ止めでメタルフレームの裏にくっついています。セル巻きでは無いです。あまり使用していなそうでしたけど、それなりにくすみがあったので磨いてみました。手で持っている方が磨き前です。

横も良いですよね。カットリムの薬研っぽい処理になっています。ちょっとヴィンテージメガネ好き向けの解説になりますけど、この辺の意匠がAOのコートランドを彷彿とさせますよね。ブリッジが上にあるのもそうですけど、特にこのリムの感じが。

 

いまのところベスト
修理とメンテ

23.06.12

フルビューのニューモント型のお持ち込み。

このレンズ掴み部分は、現代的な硬い掴みのときの距離感で合わせると、レンズがガタついてすぐに緩みます。板バネでしなるんです。もっとブリッジ側にベタ付けがナイスです。今回はレンズ交換とのことで、ついでに直せました。

このニューモント型は、ネジの入りが3パターンありまして、前から、後ろから、そしてカシメて外せないの3パターンです。何となく、後ろからネジを入れて、フロント前面に切ったネジ先が見えていることが多い気がします。中古を探すときは、レンズの固定方法にご注意を。

それで、そもそも長期の使用や何度もレンズを入れ替えて使用することを想定していなかったと思われますが、とにかくネジの頭が飛ぶ、受け側のネジ穴が広がって締め込みきれない、レンズの厚みが増してネジが足りない、何かしらのハプニングが起こるのがこのフレームです。もはや期待してしまう自分がいます。

 

最近ようやく、これが一番見た目が良い修理ではないかと、たどり着いたのが上の写真たちです。度付きの透明なレンズを入れました。

ふつうに供給されている、1.2ミリのヨーロッパ規格のツーポネジに、1.2ミリの底付きナットで締める方法です。そもそも、ネジ切りがドンピシャでスクリューが全く面から出ていないと、それも緩みやすくなる原因だったりします。例えネジ頭が飛ばなくとも、元のネジ穴が生きていても、その緩み易さやレンズの脱落に先回りで対処したいなぁということで、ネジは交換しておきたいところです。二重に締め上げれていれば、さらに緩みにくいですからね。

あれこれ書きましたが、でもそれはメガネ屋の都合だったりしますので、まず大事なのは見た目が崩れない変更なのか?ということが心配かなと思われます。写真を見てみますと、裏のネジ頭の収まりもなんだか妙に合っていますし、フロント側は少し底付きナットが飛び出ますけど、そんなに気にならないと思います。ヴィンテージの風合いが崩れていないので、オススメです。

 

 

ペルソール
修理とメンテ

23.06.05

保管していて、枠が広がってしまったとのことで、型直しとレンズサイズの修正をしております。

印字も綺麗に残っているくらいなので、そこまで使っていないはずなのに蝶番がパタパタする、ネジを締めてもパタパタするということで、コマの具合も調整しました。

とりあえず、幅を140ミリまで戻してみました。撮り忘れましたが、生地が縮んで変形し、薬研とかレンズカーブの具合で腕が閉じることも開くことも共にあり得るんですけど、今回は開ききっちゃうタイプでした。180ミリくらい開いていました。

これくらいの幅にしておけば、平均な150ミリ〜160ミリの側頭幅で、程よくテンプルがしなり、バネによる密着感を味わってもらえるんじゃないかなと思います。

リム切れ寸前なのでは?というくらいにキツくて、レンズを割って取りたいくらいでしたけど、やっぱりレンズの純正の刻印は捨てがたいよねってことで頑張ってみました。

 

コマのガタつきは、何でなのかようわからんですね。そんなに使って無さそうですし、減ったとかそういうことでは無さそうです。

ある程度、蝶番をコネコネして隙間を埋めてみて、これ以上はコマ同士が水平に当たらなくなっちゃうなということで、ワッシャーを入れてみました。

そのままでは径が合わずに入らなかったので、ドリルでツンツンして穴を広げて、すぽっとワッシャーがハマるようにしています。

上の写真で、コマが5個重なっているんですけど上から1個目と2個目の間にワッシャーが入っています。

なんか引っかかっている感じもありまして、蝶番のあがきが優良可の良くらいなんですけど、ネジを締める手応えとガタつきの無さは優という感じなので、これで完了とします。

_170831bk

pageTopLink