カテゴリー:ヴィンテージのメガネ

サーモント枠入れ
ヴィンテージのメガネ

23.04.28

サーモントの枠入れでした。amorのお持ち込み。

枠入れとなりますとなんともこれは大変で、リムの前面にも後面にも眉毛パーツが掛かっています。例えばフレームが出来立てホヤホヤで、眉パーツのセルがピンピンな当時なら目をつむってしまい、レンズとそれが干渉しようが御構い無しに枠入れをするということも考えられます。ただそれが製造から50年ほど経った現在となりますと、目を逸らすわけにはいきません。レンズと眉毛パーツが干渉し合えば、眉毛パーツ留めのネジ穴付近から亀裂が入りやすくなります。加工の理想像としましては、レンズと一切干渉させず、眉毛パーツの見た目通り、フレームに乗せるだけということになります。眉毛パーツは添えるだけです。

当時の精度なのか意識の問題なのか判然としませんが、とりあえず眉毛パーツがリム側に被さった原因は、眉の取り付け位置が左右非対称です。比べますと、右レンズはリムにかかり、左レンズはほとんどリムにかかりません。原因が分かったところで、フレームのカーブが強いこと(7カーブくらい)、今回の処方のレンズが左右とも単性であることを考慮して、眉毛パーツの前面は削らないことにしました。リムにかかる部分だけ眉毛パーツの前面を削ると、完成を正面から見たときに眉毛パーツの形がモロに左右非対称になってしまうので。まず後面で何とかします。

例えば、処方が強めの凹レンズの場合、ベースカーブが1とか2とかほぼ平らに上がってくると思います。レンズ端の厚みがあるため薬研のデザインで、ある程度は薬研のカーブをフレームカーブに近づけることも可能です。それをやると、今度はレンズの端っこが眉毛の前面に当たります。

 

なんやかんやありますけど、完成はこんな感じです。

後ろをキッチリ合わせました。リムにはみ出していたのは右レンズ側でしたが、左レンズ側もちょっとだけ綺麗に整えております。

それでは枠入れしていきます。

薬研位置は限界まで前側にして、レンズの厚みは全て後ろに持っていきました。とりあえず綺麗に入ったので安心しました。

眉毛パーツを付けたり外したり、アレコレ干渉し合っている状態で行うと、ネジに変なテンションがかかっている為に、真っ直ぐ入らなくてネジ穴を壊したり、ドライバーがなめてフレームやレンズを傷つけたりします。

この辺の段取りをしておくと、ネジがスッと入っていくのでドライバーも逃げにくく、最終の仕上がりも綺麗になります。

暗黒面
ヴィンテージのメガネ

23.04.14

いままで見過ごしてきた気がします。加飾してあるフレームたちが急にめちゃくちゃカッコ良く見えてきています。80年代のエアコンとか扇風機と同じで、カッコ良く見せようとした一手間がやっぱり良いよねっていう感覚がじわじわと。

どうやってセルフレームを彩ろうかなとなったときに、何だかんだブランドロゴがカッコ良かったりしますよね。ヴィンテージですと例えば古いディオールのロゴとか、ロゴ自体もロゴの大きさも質感もアレコレ凝っていたりして、ちょっとネガティブに「ブランドロゴだけ」とは言われがちなものの、かなりの意思決定がそこにされているわけですから、会社にとって大事なロゴですし、やっぱり良いですよね。

それでこれはといえば、ロゴがきそうな部分に金属パーツがありまして、日本製の純朴なロゴ無しフレームなんですけど、この加飾が80年代に各所で想い描かれていた未来感があってカッコ良いです。郷愁を誘います。

台紙が残っていました。モデル名が「マーシャル」で、意味を調べると“元帥”とか出てきます。妙に納得できる名前でした。

カラー名が“ダークサイド”ということで、それも何だかじわじわきます。

柳に雪折れなし
ヴィンテージのメガネ

23.03.11

エッセルホヤのツーブリッジです。

私はいつもレールと呼んでいましたけど、HOYAの資料によると、異形線と呼んでいました。

1978年7月号。

 

結構多くのモデルが、この異形線メガネの構成のメインに持ってきています。異形線にレンズをぶら下げるような形式のフレームが多く、ぶら下げる際に糸でつる(ナイロール)方式を採用しているのが特徴です。

単に立体感を出すために、異形(五角形)にしているわけでは無く、正面や上から加わる力に対して、曲がりにくい特性があります。

ある特徴に自分なりに真理の一端を見出して、そこから気がすむまでひたすら繰り返している感じがエッセルホヤからは感じ取れます。トム・フォードのメガネの、フロントからテンプルに伸びるTマークも天才ですし、あれも続けば続くほどカッコいいですよね。例えば違う業種だと画家の方もそんな感じを勝手に抱いているんですけど。みんな飽きたかもしれないけど、俺はまだ気が済んでいないぞ!と。そういう姿勢に憧れて、自分も銀無垢ではひたすらテンプルエンドはバチ先で統一しているというのはありますね。

模擬接客がおしゃれ。柳に雪折れなし。使います。

金張ゆえに
ヴィンテージのメガネ

23.02.17

さっきのモデルの詳細です。

この、特にブリッジの細い線にプレスの力強い痕跡があるのがとても良いです。金張は材料のときの処理になります。例えばこれがメッキ処理で組み上がり後の工程が予定されている物であれば、こういう痕跡を無くして、綺麗にしてメッキをすることになるんでしょうけどね。

金張の良さとなったときに、光沢の質感とかがまず良さとして上がってきて、基本は高級路線上で語られることと思います。もちろんそうなんですけど、ですがこれは逆に、金張だからこそちょっと荒々しい痕跡が残されています。そういう未処理があるというのは高級とは要素として真逆ですけど、それが現代の感覚からすると良い塩梅って感じます。そんな気がします。

一筆書きで、智から智までメインフレームが形成されています。デザインの面では、視線が切断されない心地良さみたいなのがあると思うんですけど、物的にはロー付け箇所が二箇所減って、折れにくく強度が出る仕組みになっています。そういう賢さみたいな要素もこっそり控え目に、静かにエッセルのフレームは包含していまして、その辺も現代のカッコよさに沿っている気がします。

エッセル
ヴィンテージのメガネ

23.02.17

 

エッセル(ESSEL)です。

いつも通り、ナイロンレールも取り替えました。この時代のフレーム側の溝の精度なのか後処理の具合なのか、とにかくナイロンレールがスッスと入らないことが多くて、未だに取り替えは苦手です。ナイロンレール(細)でも抜け落ちないのでそれでも良いんですけど、玉型のカーブによってはレールにフカフカ感が出るので、頑張ってナイロンレール(太)を入れています。もし同業者で見ている方がいらっしゃいましたら一応(太)が入りますよ、と。極太も、フレーム側は太さが0.01ミリしか変わらないので入るんですけど、レンズ側のレールの太さが変わることの方が要素としては大きくて、その辺はお店ごとに主義があると思うんで。

現代のナイロールフレームと比べて、特にレールの入り口がギザギザでうまく入っていかないんですよね。

当時のナイロンレールを見ると、今よりも断然極太だったりするので、どうやって入れていたのか謎でそれなりにオーパーツです。

おそらくこれ、川勝モデルだと思うんですけど。静岡県知事の。これのラッカー(黒)だと予想しています。

この2〜3年、テレビで拝見するたびに“またエッセル掛けてる”と思って、つい気にして見てしまいます。めっちゃ物持ち良い人だなあと思っていました。それに、掛けた感じもやっぱりカッコいいですね。線が細いのに主張もしっかりある感じが特に。すぐにエッセルだなって分かりましたからね。

これを書こうと思い、下調べで名前で画像検索したところ、予想外にエッセルでは無い他のメガネを掛けていらっしゃる写真ばっかり。物持ちが良いと思っていましたが、僕が気にし始めたこの2〜3年の間に何処かしらのお店で新品で買ったんですかね?ベーシックな眼鏡屋さんなら、もっと最新を提案されるしお客さんもそれを望むし、それを買うよなと考えたり。それともヴィンテージ好きとか?今のところ謎です。

とりあえずブルバキにはお越し頂いて無いですね。

愛すべきなんちゃって
ヴィンテージのメガネ

22.12.19

自分がカザールの607をかけ始めたので(クリアの方)、そういえばと思い出して引っ張りだしました。名無しの日本製フレームです。

前も載せたかもです。この、グレードダウン感がたまりませんね。質量的なダウンかつゴージャス感のダウンであって、フィッティングしやすさ等の光学機器としての性能はアップさせたみたいな意図がビシビシ伝わります。縦幅縮めて頬に当たらないようにして、レンズ幅も度付きを考慮して2ミリ縮めて。それがまた日本っぽくていい感じです。愛すべきなんちゃって607です。ニューバランスには、このなんちゃって607が抜群に合うと思っています。

色々なヴィンテージの世界で愛すべきなんちゃっての発掘が行われていると思いますが、多分それはそのヴィンテージ界が成熟した証であって、ヴィンテージメガネはまだその兆しは無さそうです。そこが一番面白い沼なのに残念。

こういうブリッジのこういうゴツさのフレームのオリジンがカザールかどうかは不明です。個人的には、カザールのスタートが1975年ということを鑑みますと、ドイツなら先発のローデンストックとかマルヴィッツとかメッツラーのどれかから端を発して伝播していったのかなと思っています。そしてカザールのフィルターを通って一番ゴージャスな、あの607が生まれましたというストーリーの方が自然な気もしますけど、分からないです。いずれにしましても、この時代にも、インターネットが無かったとはいえ、国まで超えたミーム的な伝播があったことが物を通じて感じ取れます。面白いですね。そして順番はどうあれ、こういう愛すべきなんちゃっての存在のおかげもあって、607が神格化されていくことも分かります。たしかにここまで書いて、ヴァージル・アブローが“オリジンかどうかはあまり関係がない”みたいなことを何かしらで仰ってましたけど、そうかもしれないですねと納得してしまいます。

ジェネリックカールトン
ヴィンテージのメガネ

22.12.02

レンズは、ブリーズグリーンの35パーセントです。

先セルの感じとかで気づかれる方もいらっしゃると思いますが、本家のローデンストックではありません。ドイツが世界標準だった時代の、日本製のカールトン(Carlton)タイプのヴィンテージメガネです。ボクシングがズレていて、55.0□15.5位です。テンプル長が140ミリと、現代の男性向けフレームの標準的な長さがあり、そこも魅力です。本家のヴィンテージだとレンズ56サイズでも、テンプル135ミリです。

素材はサンプラチナです。デザインの堅さに対して、素材の持つ硬さがめちゃくちゃあっています。カチッとした雰囲気が凄まじいです。おそらく作りはツーリングです。

物の作りの良さは、むしろこっちの方が良いかもです。処理が綺麗です。特に蝶番部分、横から見て面があっているのでシャーリングが途切れていません。また、蝶番部分を上から見たときに、フロント側とテンプル側の開きが一直線になるように合わさっています。そのおかげで、もう一度テンプルを横から眺めてみますが、シャーリングの光り方が均一で、眉からテンプル先に向けて美しく流れていくように見えます。

サンプラチナ(SPM)の刻印入っています。

インターネットミームとか言われますけど、誰もがネットのお陰であれこれ調べたり映像で比較しやすくなっただけで、昔からそういうことはあったんでしょうね。少なくとも、メガネはヴィンテージもそっくりさんだらけです。そっくりさんもあるからこそ、一つのスタイルに昇格していくのかもですし、どっからどこまでが…という線引きは難しいですよね。現代で言えば、アーネルとかクラウンパントのスタイルが該当すると思います。みんなが一斉にやることで、その時代のスタイルになりますね。

確かに今回のメガネでいえばカールトンタイプとメガネ業界は割と呼んでいますけど、カールトンはそもそもローデンストックがこの形のモデルに付けた名前なので、ミームのおかげで商品名からスタイルになっています。眉毛メガネのサーモントもそうでした。

242
ヴィンテージのメガネ

22.11.25

先日のドイツ仕入れから引き続き。カザールの242です。

この辺も、店を始めてすぐのときは日本から出てきていたんですけどね。めっきり日本からは出なくなりまして、それでたまたま声が掛かったドイツから仕入れました。

ツーブリッジなんですけど、ミリタリー感パイロット感ゼロです。しかも200番代は元々は女性用だったというところでレンズが小さめ、フロントが小さめです。小さめと言っても男用のカザールに比べてです。レンズ幅は51ミリでして、現行のボストン型とかのメガネよりレンズは大きく、それなりにゆったりとしています。いまの観点からすると、大き過ぎないメガネということになります。

ツーブリッジで程よくゆったりなので、掛けると意外にもふにゃふにゃ野郎な雰囲気が出まして、90年代のエイリアン系映画で初めに食べられちゃう人みたいな雰囲気も出ます。だけどカザールなのでちょっとだけ強いゴージャスな雰囲気もあって、このmod.242は本当に万能なおもしろメガネだと思います。

宿命なんですけど、テンプルが短いです。いつの決定かまでは分かっていないんですけど、ボクシング表記におけるテンプル長は、ネジ穴中心から先セルの先端までを指します。ですので、カザールは智が長かったり色々なので先ずはそこは気にせずの方が良いです。130ミリでも、普通の135ミリくらいの感覚です。でも確かに短いので、足りなければ先セルを替えて、延長するなりで対応します。

フロントの彩色が赤とか緑っぽいマーブルとかは良く見ましたが、今回はベージュでした。なんだかこの色も今っぽいです。

これは!!
ヴィンテージのメガネ

22.11.22

おそらく、marwitzと言っても、いまの日本では名無しフレーム扱いに近いと思います。名無しフレーム扱いなら、それの方が都合が良いかもと思い始めまして、今回のこのフレームは特に先入観無しにインパクトが強くて面白いと思ってもらえるんじゃ無いかなと思っています。

ハイブリッジで、輪郭は六角形で、でもレンズの玉型は正方形で、リム周りは奥行きが出るように削り込みしてあって、まさにブラウン管時代のテレビっぽいです。色々な要素を詰め込みまくっていまして、メガネ界のおせち料理みたいになっています。それでいて破綻せず、めちゃんこカッコ良いので仕入れてみました。

60年代後半から70年代前半くらいなんですかね。オプチル素材が出ている時代であれば、そっちで作りそうなくらいに削りによる手間が掛かっています。

レンズサイズが先ほどに引き続き良くて、48□24です。レンズは小さめで、ブリッジを広く取ってFPD稼いでいます。ブリッジは広めですが、キーホールみたいにキュッとした部分が狭いので、十分掛かります。

クリアレンズだと、正方形のナードな感じが際立って使いやすいかもです。テレビジョンカット系のフレームは、目が見えないくらいの濃いレンズを入れるとたちまちモードの極み的な雰囲気が出ます。そんな感じにイメージを振っても良さそうです。

ヴィンテージフレームも、しばらく見ているとそれなりに既視感だらけになったりするものなんですけど、久しぶりにこれは!!ってなった1本でした。自分用もどれどれと思って2本入れたんですけど、そのうちの1本、グレーの方が検品の結果ダメだったのでショックです。

872
ヴィンテージのメガネ

22.11.22

店で取り扱うのは初めてです。カザールのmod.872です。

玉型とかプラスチック部分のバージョン違いがあと2型あって、型違いの方はレジェンズとして復刻もあります。これは復刻されていないはずです。このmod.872はオーバルで、玉型も90年代感が強めです。しかもサイズは53□15なので、レンズとブリッジの関係だけでいえば、中間くらいのメガネサイズです。カザールにしては大きくないという方が伝わるかもです。

物の満足感が凄いです。指示書とかどうなってるんですかね。セルの切り出しと、中のメタル枠の正確さと、ネジ穴の為の爪の取り付け位置と全部が正確でないと、セル枠に対して均一に余白が出来ないです。このデザインでこの作り込み具合は、後にも先にもやっぱりカザールくらいかなと思います。物のパワーは凄まじいです。

おそらく、茶色の目が見えないくらいに濃いレンズを全面で入れるとカッコ良いと思われます。

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