タローマンを見ました。これが、話題のタローマンなのね。
個人事業主的には、確かに面白可笑しくてもいつまでも笑っていられないと言いますか、笑われるタローマンを見て身につまされると言いますか複雑な気持ちになります。山口一郎さんも、本当はノリ続けるのがしんどかったんじゃないのかなとか、作品から逸れて考えてしまいました。
岡本太郎展が年明けに名古屋に巡回してくるので、それが楽しみですね。
22.12.26
タローマンを見ました。これが、話題のタローマンなのね。
個人事業主的には、確かに面白可笑しくてもいつまでも笑っていられないと言いますか、笑われるタローマンを見て身につまされると言いますか複雑な気持ちになります。山口一郎さんも、本当はノリ続けるのがしんどかったんじゃないのかなとか、作品から逸れて考えてしまいました。
岡本太郎展が年明けに名古屋に巡回してくるので、それが楽しみですね。
22.12.24
ちなみに大きい銀無垢の鼻パッドと書きましたけど、あと一回りが限界と通達は届いています。
今ある涙型の鼻パッドを計算しやすいので楕円と考えてしまって、長軸と短軸を測ると
13.0/6.5 (㎜)
でした。
あと一回り大きくの“一回り”が、人の想像を掻き立てますが、仮にぐるっと0.5㎜ずつ大きくなったとします。
14.0/7.5 (㎜)
楕円の面積は、長軸半径×短軸半径×πです。結果だけ書きますと、ぐるっと0.5ミリ、それぞれ1ミリ長くなるだけで、面積は1.242…倍という結果が出ました。予想より広くなりますね。圧の分散に、結構効果がありそうです。楽しみ。
22.12.24
銀無垢でサーモントを作りたいと思ったきっかけは簡単です。1950年代のアメリカに、既にそれに近い形の物が存在しています。オールアルミの、物によってはそれに金張りを施したサーモントです。
開発にはこの2本を用いました。アルミが大量に製錬されるようになったのが世界大戦後の1950年代らしく、軽くて強度もあって錆びにくくて、最高の素材っぽい宣伝が当時もされています。それこそロイヤルだったかデラックスだったか、そういう高価なサーモントとして位置付けられていたことが調べると分かります。そこから想像を膨らませるのは容易くて、これが貴金属だったら…となるわけです。結局当時物のアルミのメッキなり張りのフレームを見ましても、消耗品として製造された形跡といいますかパーツの選定が行われていまして、遺すとか受け継ぐみたいな意味は込められていません。このサーモントのデザインがメガネのスタイルの一つのスタンダードになって、70年後の今もあるとは想像し難いですからね。そこで、銀無垢で日本の技術をみっちり詰め込んで、作りの面から素材の面から不変性を帯びさせようというのが狙いです。
それは自分たちの仕事では無いと言われればそれまでですし、各ブランドが「メガネ」というカテゴリーをどれくらい重きを置いて見てくれているのかということに依りますから、以下は勝手な怒りということなんですけど、店を始める前のメガネ業界のサラリーマンのときから、クロムハーツやティファニーがそれを作ってくれていないことにとても憤りを感じていました。両者ともアメリカで、銀無垢がウリで、目につくありとあらゆるものを銀製品で作っているはずなのに、なんで全て銀無垢のメガネは無いんだと。しかも、古き良きアメリカを代表するサーモント、レイバンのクラブマスターも1986年から販売していて不動のスタイルであるサーモントを。過去を漁れば、銀ではなくてもオール金属で作っていた形跡があるのに…。チタンやセルのフレームに飾りやロゴの印刷をしてあるメガネは沢山あるので、おそらく両者ともメガネはロンTと同じ扱いなんでしょうけどね。とりあえず、一庶民がパッと思いつくような物が世界に無くて、お金で買えなくて、それを憧れに生きていけなくて、これは由々しき事態だと勝手に思い込んだのがスタートです。
アルミのサーモントも、各社がそれぞれ試行錯誤を繰り返した形跡があります。その中で、シューロンの眉毛に注目しました。眉毛の真ん中で凹んでいます。リムに沿わせています。これを採用しました。アルミのサーモントが何を意図してプレスしたのか分かりかねますが、銀無垢で作るとなれば常に重量を気にしないといけません。ボリュームを十分感じるのに、ちょっとだけ軽量化出来そうです。
ちなみに、ヴィンテージメガネ界でサーモントといえば、AOのサーモントを至高とする見方もあります。どうしようかなと迷ったんですけど、一旦ヴィンテージの価値観から離れて、冷静に見れば全世界に未だに行き渡っているのはレイバンのクラブマスターだよなぁということで、クラブマスターも参照したのかなっていうくらい似ている、上の二つから開発を進めています。
今回はボクシング表記で47□21です。資本が∞であればアレコレ出来ますが、現実問題としてやはり一つに絞らないといけません。日本人の男の平均の瞳孔間距離(PD)が65ミリというのを参照しております。今っぽい掛け方でpd=fpdとなりますと、44□22も候補には上がりますが、出来上がったものは銀の塊で相当な迫力であろうという予測から、レンズはちょっと大きめでゆったりと、ちょっとpdが広めでもジャストでカッコいいというところを狙いました。開発のサンプルでは46□22の表記でして、正確に測ると47□21ですよと工場から通達がありまして、そうしましたらその通りに作りましょうということになりました。レイバンのクラブマスターは51□21と49□21です。ひょっとしてお前もその分析を…という発見がありました。ヴィンテージメガネの世界では大きめ、現代のメガネからすると小さめ、クラブマスターの一個下というサイズになっています。
80年代の日本製ほぼクラブマスターと並べました。それは50□20です。レンズを大きくすると眉毛も大きくなって重たくなりますし、レンズもいくらプラスチックとはいえ重量が出ます。ここは色々な余地があるところでしょうし、流行り等々でいかようにもレンズ横幅とブリッジ幅は変わると思います。
テンプルはこんな感じです。現行のレイバンのクラブマスターは、テンプルは真っ直ぐな棒です。50年代のサーモントも、セル眉のタイプであれば真っ直ぐな棒の物も他にあるのですけど、アルミのサーモントは、大抵が耳に向かって末広がりです。この末広がりの処理は、個人的にはカッコいいなと思うんですけど、現代的にはテンプルが派手だと避けられる傾向にあるよなあとか、色々と考えの余地がありました。銀無垢でサーモントを作るにあたり、どちらを採用しようかなと。
アルミで末広がりにするのは、どのような意図があったのか、いまとなっては分かりません。ある程度面積を用意して、ゴージャスに見せる目的だったのかそうでは無いのか。実際に50年代のアルミのサーモントにおいて、テンプル等々に彫金が施されている物も存在しています。なんとなく、幅を持たせてゴージャスな演出にしていたような気はします。
今回、画像を見ると分かる通り、末広がりのテンプルを採用しました。最終的には、棒にするのも末広がりにするのも、個人の好みの問題に帰着すると思います。そこで銀無垢でサーモントを作ることに対して、どちらが優位かを鑑みて末広がりを採用することにしました。
・鉛直方向に幅のあるテンプルの方が、その方向の力に対して強度が確保できる
・銀無垢の眉パーツが重いため、後ろがよりヘビーになる末広がりなテンプルの方が重量バランスが良さそう
※ただし、重量バランスと総重量の葛藤は常にありまして、総重量の観点からすると、真っ直ぐなテンプルの方が軽そうです。
・薬研のラインを末広がりのテンプルには入れられるので、横方向の強度も出せる
横の薬研のラインも、ヴィンテージから採用しました。
銀無垢はカシメを出来ません。さすがに横が物足りんのかなと思いまして、ヴィンテージよりもっと明瞭な山にして、ラインを先端まで入れています。思考を変えて、カシメがないのを活かして、眉毛パーツまで視線を誘導するような鋭いラインを入れました。
真っさらな平面で、手彫りの余地を残しておいた方が良かったかもしれませんし、ここもまだまだ考えられそうです。真っさらな平面で物足りないことはなくて、そこに少し私の感覚が入り込んでしまったなと、今になって反省です。とりあえず末広がりで、テンプルエンドはいつも通りのバチ先を採用しています。
リベットこそ、好みが分かれると思います。ヴィンテージなんかは特に、男はこのリベットがカッコいいと言い、女はこれこそ要らんと言います。僕も30歳を過ぎたら、あると嬉しいけどなんだか無くても良いかもと思うようになりました。
カッコいいリベットとは?そんな風に考え始めると答えのない沼にハマります。プロのデザイナーとか、ロゴを考えられる人なら良いのですが、私は違います。今回は構造上、大きさの制限と立体感は出せないという条件がありまして、候補が限られています。
まずこの時も、レイバンのクラブマスターから始めます。あれは、ぺったんこなオーバルです。今見ると一番良い選択な気がします。なんて無属性で柔らかい雰囲気なんでしょうと。ぺったんこな長方形は、無属性なんですけど雰囲気が堅いんです。見れば見るほど最適解はオーバルです。でも、オーバルは絶対使えないので、どうしたものかと考えなくてはいけません。
ここも私の判断とか好みが入ってしまったので、後世があれこれ変更できる余白があると思います。とりあえず、柔らかい優しい雰囲気にする物がいいなとやっぱり思ったんですよね。そこで、タートのカウントダウンを参照しております。タートのカウントダウンは、リベットのパターンがいくつもあります。それこそオーバルもありますし、今回の銀無垢でも参照したaxe(斧)のリベットもあります。このアックスのリベットが秀逸で、やや釣り上がってグラマラスなフレームを、微妙にナードに優しい雰囲気に仕上げます。是非、カウントダウンは画像検索をしてみてください。フレームのアウトラインを目で追ったときと、リムからリベットに目で追ったときの印象が全く違います。あの優しさを採用しました。
そう思って、開発のベースとなる手元のアルミサーモントをみたら、そう言えばこれもそんな感じでした。2方向から検討して同じ結果なら、自信がもてます。これの立体感を無くして、後ろに機構を組み込む為に必要な分だけ縦幅を持たせたのが、完成品のリベットでした。リムの上端を鼻側から耳側に目で追って、耳側のピークに来たときにリベットに目を移すとなだらかに降るんです。この目の動きはタートのアーネルとかモスコットのレムトッシュの、フレームのアウトラインと同じです。
とりあえずこんな感じです。実際にテンプルの幅はなんだかんだとか細かくいろいろとありますけど、ざっくり私が検討したことを書いておきました。ちなみに今週の火曜日に鯖江の工場で見たときは、刻印無しの組み立てホヤホヤで一応持って帰ることも可能だったんですけどね。年末だしなぁというので、完全に仕上がってから入れます。
あとですね、鼻パッドが遅れて出来ます。銀無垢で。一番面積を広く出来る限界一杯のパッドです。それが1月か2月か、金型からになるので時間が掛かるそうです。それもあって、持ち帰るのを我慢しました。
デモレンズ込みの総重量が63グラムでした。太いセルで装飾パーツが付いたフレーム並みに重いです。前回の銀無垢のサーモント(クリアグレーの眉)の2倍くらいあります。重くなるのは予期していましたが、許容値のギリギリいっぱいでした。ガラスレンズは、まず無理でしょうね。
まず掛けてどんな感じか、それが心配だったんですけど、全く科学的ではない主観で言えば、重量ほど鼻の重さがあまり感じなくて、コレは大丈夫という直感がありました。バチ先のテンプルエンドの重みと摩擦なのか、やはりテンプルを末広がりにしたことで、重さを重さで制することが出来たのか分かりませんが、掛けられる感覚は大いにありまして、かなりホッとしております。想像の産物ではない現実のメガネとして成立しています。
今回も、鼻パッドの取り付けは箱です。商品価格に対して取るべき構造みたいな話もありますから、フレーム全体を消耗品にしたくありませんし、カシメとか抱きのパッドがヴィンテージライクでカッコいいのは承知ですけど、個人的には銀無垢は箱一択です。修理も交換も容易く、交換パーツの手数が豊富です。いまのところ925サーモントには、前回のサーモントのときに型で抜いた涙型の銀無垢の鼻パッドが取り付けられています。それでも鼻へのずしっと感は少なかったとは思います。でもそれで油断せず、むしろ先手を打っておきたくて大きな無垢パッドも制作中です。最悪どうしても重い、下がるならさらに奥義のシリコンパッド等が使えますから、まあこれも男は無垢に拘って女はむしろ目立たない透明が良いなあってなりがちなんですけど、フレーム全体を諦めることは無いんじゃないかなと考えています。ということで、仕上げの鼻パッド待ちです。それこそ鼻パッドの取り替えは簡単なので、1月中には鼻パッドが出来ていなくても入荷させようかなと考えています。
僕側の、なんかこういうの欲しいなあの“こういうの”の部分のデザインよりも、そのこういうのを具体的に製作すべく図面をデザインの方がかなり苦労されていると思います。その部分は書けないんですけどね。非常に変な表現ですが、それらのデザイン同士が衝突して、一箇所どうしても決断を下さないといけない部分がありました。それが眉パーツとテンプルの合わさるところの処理についてなんですけど、それを決めるときが一番悩みました。それは、物が届いたら書きます。
22.12.23
箸休めが先に届きました。人類の至宝キャップです。
この前の「v-e+f=2」ってそう言えばカッコいいなあと思いまして、グッズとして作ろうと思ったんですけど、フレームは凸多面体ではなくて、レンズでそもそも穴が二つ空いてますし、オイラーの多面体定理の条件を満たしていないんですよね。メガネ屋のオリジナルグッズで、フレームが満たしていない式を乗せるというのはどちらにも不敬だなと思って却下しました。それでコレです。
これは数学界隈で人類の至宝と呼ばれています。これもオイラーの公式とか呼ばれています。意味のありそうなアルファベットが一塊で、多分πは何となく円周率って分かるかなと思っているんですけど、高校が理系だとeもiも、あったなーそれ!みたいになると思います。それに自然数の始まりの数字である1を足すと、0になるんです。何やらよく分からんなりに、ちょっと色即是空的な神秘性がありますよね。確かに都合が良すぎるくらいに収まりがいいのがこの数式です。
バンドTも、逆にそのバンドを知らないくらいで着ていた方がガチ感が無くてカッコいい時代なので、数学も知らないくらいで「でも至宝なんでしょ?」みたいな、カジュアルに戯れる時代かなと思っています。
銀無垢に合わせる帽子を作ろうと思いまして、訓練を受けておらずデザインの技量と才能が無いですから、とりあえずストリートでアウトドアの要素もあるナイロンのジェットキャップに、何をのせたら美しくなるかなと考えた結果があれです。そういえばブルバキだしなぁと今さら反省して、数学で何か一つということで人類の至宝を刺繍してみました。
書体は、それこそヘルベチカかなと一瞬よぎりましたが、数学のスタンダードな書体にしました。論文製作以来なのでもう忘れましたが、TEX(テフ)を使わないと綺麗な数式が出力出来ないかなと思いきや、エクセルで結構きれいな数式打てるんですね。教科書っぽくなるように、こだわりの方向性間違えているんだろうなと認識しながら、結構こだわりました。
総幅も、大きすぎず小さすぎずで特に考えていなかったので、グロタンディークの素数と呼ばれる、曰く付きの数字である57ミリに指定しました。55ミリではなく、60ミリでもなく、製作会社に一応その意図を伝えて57ミリにしてもらったのですが、めちゃくちゃ気持ち悪いと思われているんだろうなと想像しながら57ミリに指定しました。
銀無垢の美しさと、人類の至宝のもつ風格が合わさっていますね、ウソです。イメージとしては、黄色のHB-101の帽子を被っている年配の方をたまに見かけるのですが、そんな感じになったら良いなあと思っています。次に新商品のメガネとして銀無垢のメタル眉のサーモントが控えておりますが、キャップと合わせたときにその荘厳さを微妙に隠して、これが都市の迷彩みたいに働いてくれるといいなと思っています。
年明けに下北のイベントに呼んでいただきまして、メガネは外では売れんやろうなあと思いつつ、流石に呼んでもらって売り上げ0は失礼だよなと思いまして、時流に乗って、かなり焦って作った次第です。店舗名を入れるのを忘れたので、至宝だけを存分に味わえる仕様になっています。
黒と紺の2色です。
22.12.21
先々月のIOFTのときに、社長さんは年末に出来ると仰っていまして、製造のトップの方はまだまだ技術的に超えないといけないハードルって沢山あるんですけど…みたいな、そんな状態でしたし、僕もリップサービスかなと思っていました。単価と納期と、本当は外せない大人同士のルールを、物を作る制約条件から外した(外させていただいたですね)ときに、どこまで出来るのかが、何が人間の目論見を超えて出来上がってしまうのかが僕にとっての無垢のフレームの探究の目的みたいなところでして、無理オブ無理を強いている以上、納期の問い合わせはしないというのがマイルールです。いつも待ち続けています。なので、年越して完成は3月とか6月かなと思っていました。これは本当で、12月11日のブログ(v-e+f=2の回)で来年の新顔の登場が楽しみですなあと、現時点から眺めれば非常に空々しく書いてあります。寝耳に水でした。別件で今週の月曜日に問い合わせをしたときに、ついに出来ましたのご連絡をいただき、昨日は本当に急遽鯖江に行ってきた次第です。
オール925シルバー、銀無垢のサーモントです。
いつも通りネジはステンレスです。蝶番はカシメをしていません。ヴィンテージ等々とは異なる構造になっていますが、共有しやすいので一旦リベットと呼んでしまいます。銀無垢の眉パーツからリベットは取り外し可能です。眉毛が壊れても、蝶番の機構を取り出して眉毛だけを直せるようになっています。そしてリベットと裏の蝶番の受け側のネジまでが一つの機構となっていまして、それは全部APC(銀、パラジウム、銅の合金)です。ということで値段もやっぱり凄いっす。
カシメの構造はやらないと初めから両者が合意の上で進みました。僕としてはフィッティングの観点から、レンズの加工から、ファッションの観点から等々、実務のフィードバックしか出来ないしやらないと考えています。構造上、素材の特性上、それはやれないとメーカーさんが仰ってくれたことはやらないです。そこを無理して通して出来たものは、やはりメガネとして無理があったりすると思います。綺麗なオブジェじゃなくて美しいメガネにするべく、お互いの仕事の上での禁忌みたいなものは、必ず避けるようにします。
とか何とか言いながらも、出来上がった物の裏を見たらほとんどヴィンテージと遜色が無かったのは嬉しい誤算でした。写っている蝶番、フロント側もテンプル側に取り付けられているのも、パラジウム合金のAPCです。フレーム全体が経年変化し、色が変わり形状的にも柔らかいので凹んだり欠けたりしながら馴染むなかで、蝶番とネジは変色せずパキッと綺麗なままです。パラジウムは白金族の貴金属で、簡単にはプラチナの親戚で硬いです。APC合金も硬いです。おかげでつま先と踵がよく磨かれた、履き込んでシワのある革靴みたいな美しさを帯びることが期待出来ます。
僕の意図みたいなことは、また時間があれば書きます。書くほどに物がカッコよく見えなくなってしまう可能性があるのでやめたいところなんですけど、書きたい病なので書くと思います。基本的には、なんだか矛盾する表現ですけどヴィンテージらしさやブルバキらしさを消去することに努めました。これは本当です。今回の訪問も、共同開発とはいえ刻印をどうしますか?と尋ねていただいたことに対しての回答をすることも目的にありまして、いつも通りMIZだけでと伝えております。元AKBの前田敦子さんは本当に素晴らしい名言を残したと思います。その精神です。ですからデザインプロセスとしましても、とにかく私の消去というものが念頭にありまして、その弁明になると思います。個人的にヴァージル・アブローブームなので、僕も自分が考えたことを開示して、次にメタルサーモントを作る人がそこはもう考えなくても良いものだと時間短縮出来るように、マイルストーンを置くつもりです。
ただ本当に、豊橋時代の居候の時から銀無垢のサーモントを作りたいですねとお客さんと話し合ってきましたし、あれやこれや何だか色々あって、営業さんに伝えて4年くらいであれを起点とするのか2年前だか3年前のあれを起点とするのか、本当に色々ありました。銀無垢のサーモントを作ることは、店を始めた理由です。大きな理由です。皆さんに夢を叶えて頂きました。ありがとうございました。突然すぎて、まだ物が手元に無いってのもありますが、まだ実感が無いです。
図面のタイミングは、実はこの前のサーモントとほぼ同時期でした。個人店としては、個性がびしょびしょに溢れているみたいなことをしないといけないところですが、あっちのサーモントもこっちのサーモントも頭の中ではずーっと私の消去というのが頭にこびりついていまして、今年はなかなか精神的に大変ではありました。
22.12.19
明日休みます。ちょっと鯖江に行きます。
22.12.19
自分がカザールの607をかけ始めたので(クリアの方)、そういえばと思い出して引っ張りだしました。名無しの日本製フレームです。
前も載せたかもです。この、グレードダウン感がたまりませんね。質量的なダウンかつゴージャス感のダウンであって、フィッティングしやすさ等の光学機器としての性能はアップさせたみたいな意図がビシビシ伝わります。縦幅縮めて頬に当たらないようにして、レンズ幅も度付きを考慮して2ミリ縮めて。それがまた日本っぽくていい感じです。愛すべきなんちゃって607です。ニューバランスには、このなんちゃって607が抜群に合うと思っています。
色々なヴィンテージの世界で愛すべきなんちゃっての発掘が行われていると思いますが、多分それはそのヴィンテージ界が成熟した証であって、ヴィンテージメガネはまだその兆しは無さそうです。そこが一番面白い沼なのに残念。
こういうブリッジのこういうゴツさのフレームのオリジンがカザールかどうかは不明です。個人的には、カザールのスタートが1975年ということを鑑みますと、ドイツなら先発のローデンストックとかマルヴィッツとかメッツラーのどれかから端を発して伝播していったのかなと思っています。そしてカザールのフィルターを通って一番ゴージャスな、あの607が生まれましたというストーリーの方が自然な気もしますけど、分からないです。いずれにしましても、この時代にも、インターネットが無かったとはいえ、国まで超えたミーム的な伝播があったことが物を通じて感じ取れます。面白いですね。そして順番はどうあれ、こういう愛すべきなんちゃっての存在のおかげもあって、607が神格化されていくことも分かります。たしかにここまで書いて、ヴァージル・アブローが“オリジンかどうかはあまり関係がない”みたいなことを何かしらで仰ってましたけど、そうかもしれないですねと納得してしまいます。
22.12.19
正多面体は5個しか無いんですけど、多面体はたくさんありますし、正多面体ではないからといって美しく無いわけではありません。むしろ複雑で、それはそれで格別だったりします。
この本の作り方だと、正二十面体は10枚の折り紙で作れました。現物に書き込みながら、この前の「vーe+f=2」に触れてみるのも一興ですね。
正月とか暇なときにオススメです。パーツA・Bで20個と30個とか、もっともっと複雑で時間が掛かるものもあります。家族で協力して作るとかも良いかもです。
組み立てが難しいので、パーツ毎に色を変えられるように単色の折り紙を数色ずつ買うと良いです。全部違う色でパーツを作ると組み立ての段階でパニックになります。
私は一辺が17.6センチの折り紙を買いましたが、もう一つ下のサイズが良いかもです。パーツは折りやすいのですが、組み立てがハードです。折り紙がふにゃふにゃなので、出来上がったパーツの面が広いと、組み立ての際にコシがなくて苦労します。
多面体折り紙とかユニット折り紙とかで探すと本が買えるんですけど、前書きが刺さったこの本にしました。折り紙がどうのこうのが書いてなくて、多面体への愛しか書いてないんです。これはまさしく私向けだなと思ったんですよね。
折り紙の折り方の部分も分かりやすいですし、組み立ては一番分かりやすかったです。とりあえず今のところ分からず組めなかったことがないので。
多面体生活オススメですよ。
22.12.16
ちょっと記憶が曖昧です。おそらく3年ほど経過した、サンプラチナのメガネです。手彫りの装飾が施してあります。
サンプラチナの特性上、925シルバーと違って変色はありません。硬い素材のため、けっこう何気なしに使っても彫金の切削面が削れて丸くなることは無くて、未だに精緻な鋭さを放っています。
いま変色しないと書きましたが、ロー付けの接合箇所は黒くなります。ブリッジのメイン部分と、レンズの掴みのパーツの間に1本棒が渡っていることが確認できます。そこが黒ずんでいます。プラモデルにガンダムマーカーで線を入れる感じで、この黒ずみでちょっとした重厚感がでます。
ここも黒ずんでいます。分かりにくいんですけど、キャッチとテンプルの接合箇所がちょっとだけ黒いです。
このブリッジが面白いのは、サイドの「く」型の箇所は四角柱の面が正面に向けられているのでは無く、辺が正面に向けられています。菱形の棒でこの形を作ったという表現の方が分かりやすいかもしれません。手彫りをブリッジに沿って全部に施すことで改めて認識することができましたが、そうしますとどの角度から眺めても、ブリッジのラインを目で追う際に二つの面が目に入ることになります。これでいえば、手彫りの面と何もない真っさらな面です。その対比が非常に美しいです。尚且つ30年代のフレームのように細くラインを用意したのにも関わらず、ただ華奢に見えるだけでは無くて力強かったり豊かに見えます。ダイナミックに見え始めます。色々な見え方が内包されているということがそこに帰依しているでしょうし、実際に正方形の対角線の長さは√2倍なので真正面からこのブリッジを捉えたときは、一つの面だけを見ている時より幅が広く見えています。
元ネタと同じ箇所に手彫りをするとこんな感じです。これは在庫を撮りました。真っさらな面が傷なくピッカピカです。
この彫金のスタイルですと、視線が彫金が施されている水平部分に自然に吸い込まれます。それによって、鼻で固定するフィンチメガネのような風に見え無くもないです。この彫金の方が、クラシックで静謐さを感じます。
例えば30年代の金張りのフレームであれば、ブリッジ全体にプレスで彫金模様を施すのが一般的かと思います。そのルールに従うと全部に手彫りを施した方がクラッシックに見えそうなものですけど違いました。この構造に全部彫るルールを当てはめますと、あの時代には無かったダイナミックさが滲み出てしまうというのは、先ほど書いた通りです。どのような雰囲気にフレームを方向付けたいのか、それで彫金のパターンをどうするのかが変わります。
22.12.13
カザールのレジェンズです。MOD.607です。自分用で7年くらい前に買って、そのままでした。カザールのレジェンズって良いですよね。現代のメッキの技術は凄まじいので、金具の心配が全く無いわけではありませんが、プツプツしたメッキの浮きとか緑青が少ない気がします。カザールのレジェンズもナイキのエアジョーダンみたいな感じで、ずっと続いて欲しいですね。
削る前を撮り忘れました。これは鼻の部分を削って、鼻盛りの土台を作った状態です。削る前はもっと尖っていまして、鼻盛りの接地面が無かったんですけど、深さ0.5ミリか1.0ミリか、それくらいヤスリで削ると、幅1.0ミリくらいの接地面を設けることができました。この607も問題なく鼻盛り出来ますね。
結構違和感なく仕上がりますね。鼻盛りしないと、鼻に乗せる部分が広すぎて下がり、頬でメガネを支える感じになります。それが不快で、結局使わずに寝かせていました。
もっと早く処置していたら良かったです。鼻盛りしたらいけます。トップ画像に載せましたが、レンズ込みで50グラム超えていますけど割と調子良いです。テンプルの幅が広いお陰で、摩擦でしっかり止まっている感覚があります。ということで607も全然違和感なく掛けられます。
ちなみに、テンプル長が140ミリ表記ですがヨロイが長いので、テンプルも実際は長いです。ネジ穴中心から終端の長さなのでそうなります。普通のフレームだと150ミリくらいの感覚です。まず長さが足りないことは無いと思います。