メガネ業界に、なんだかんだでもうすぐ10年くらい埋もれていることになるんですけど、史上最高のブランド名に出会いました。
『今…六本木』
です。凄くないですか、『六本木』でも『今?六本木』でも『今、六本木』でも『現在(いま)、六本木』でもなく、『今…六本木』です。どうですか、この“…”に含まれた躊躇い、戸惑い、そして恍惚の予感…。とにかく、眼鏡業界に天才がいました。
そもそも、ひとに「いいメガネだね、どこのブランド?」みたいに尋ねられたときに、「『今…六本木』だけど」ってストレートに返事をしてしまうと、「うん」ってうやむやな返事が返って会話が切断され、ついでにヤバいやつかなと思われる可能性大です。
ディスコブームを調べてみると、結構深くて混乱します。78年のサタデーナイトフィーバー周辺のディスコなのか、80年代のマハラジャ出店ブームを指すのか、91年のジュリアナ東京開店を指すのかで、想起されるイメージが全然違いますね。そうか、ジュリアナ東京は90年代なのか。アンティーク調のメッキがしてありますし、玉型やレンズサイズと鼻幅の関係、クリングスのロー付け具合からしますと70年代は考えられず、80年代のフレームでしょう。そうか、青山より六本木の時代か。
タグから読み取れるのは、wave・axis・square bld・forum、でした。一個読み取れなかったのは、high sensitivity frame の重なる部分が、なにroppongiなのかなんですけど、位置関係から分かる方、詳しい方教えて下さい。とりあえず読み取れたwave他すべて、今流に言えばカルチャーに関わる施設なんですね。おしゃれワードの羅列というのが全然おしゃれじゃない感覚になってしまったシンプルで丁寧なこの時代に、ありきたりな表現ですが一周回って、今…最高におしゃれです。
困ったことに『今…六本木』のアイデンティティが、タグとデモレンズのシールとテンプル裏の今にも剥がれ落ちそうな白の印字の3つだけです。
何となく全体から漂う雰囲気は、当時のゴルチエやニコル(MATSUDA)に近いです。あとはBADAのメタルもこんな雰囲気です。例えばこのテンプルの作りをみて『今…六本木』にしかない雰囲気かと言われると、全然他にもありそう…と、正直に答えざるを得ません。
使おうとすると一瞬で『今…六本木』のアイデンティティは全て無くなってしまい、ただのおしゃれメガネになってしまうため、今のところ個人コレクションとして保管です。