例題
ヴィンテージのメガネ

19.07.22

トップの画像のフレーム、めちゃくちゃカワイイんです。小ぶりで色も形も良いです。なんかエロい表現になりました。小説を読みすぎたのかもしれません。珍しいオーバルのサーモントです。FPD66です。レンズ50ミリとなると、ブリッジが狭いので、おそらく女性用です。

かわいらしいし、雰囲気も良くて披露したいのは山々でしたが、一切の情報が無く、半年ほど値付け出来ずキープしていました。金の光沢とフレームのくすみ具合から、おそらく金張だと推測はしていました。ただ、もしメッキだったときに、値段を多く取りすぎてしまうケースが生じてしまい、それはイカンなという考えがありましたので、引っ込めていました。明朗会計のブルバキです。

(左右テンプルに刻印なし。先セルに50のみ)

情報が一切無いと書きましたが、実際はブリッジに刻印があります。

(大きく載せておきました。丸に文の刻印があります。)

写真だと分かりにくいですが、実物は深く綺麗に、丸に文のマークが刻印されています。先ほどの一覧、上から二つ目に「石福金属興業株式会社」の金張商標と記載があります。そうなんです、これが鍵だったんです。古のフレームメーカーかと勘違いしていました。

(再掲)

さすがに、これには日本の美学が詰め込まれすぎて驚きました。わびさび過ぎます。刻印の意味を知らない場合、フレームを見ただけでは、金張かどうか確信持てませんね。美学と陶酔することも無く、さすがに金張としっかり書こうよ!と、突っ込みたくなりました。それに所有欲もね、物に金張と書いてあると無いとでは違いますから、書いて欲しいですよね。

ちなみに、以下は推測です。当時、フレームは吊り下げの飾りが付けられて、店頭に並んでいることが多いです。

コレはSPMのアピール用で、こういうプラスチックの飾りがフレームに添えられています。なぜか手元に無くて残念なんですけど、一度、田中貴金属の金張と書かれた札は手にしたことがあります。記憶ではその札に、カラットと厚みが記載してあったと思います。試着の時に邪魔なので、納品時に添えられていても値札をつけるときに取っちゃうお店も多かったのだと思います。

たまには
メガネのはなし

19.07.22

たまには、ヴィンテージの裏を取る努力も頑張っていますよアピールをします。あんまりその辺を書かないので、雰囲気で適度にやっていると思われてもあれなんで。

それというのも多分、ブルバキが頑張らなくても、他の店や、はたまた個人であれこれ調べてフレームの様々を分析してブログなり何なりを書かれていると思うので、私としてはそこに時間を割くのをやめています。もはや見て分かることは、大体検索すれば詳細も分かりますからね。情報社会と呼ばれて久しくて、つまりそれは、情報に価値があるというよりも情報は減価を免れないということなんでしょうね。そんなこと考えていますと、ブログに書くことが無いなあと思いつつ、なんだかんだで3年で85×10ページも書いています。昨日はメガネだけで3件も。自分のブログのページスクロールみて、引きました。ページスクロール85は、中々気持ち悪いですね。

(眼鏡フレーム キクチ眼鏡専門学校 戸村憲造著 出版年不明 p.53)

数学で学んだことは何だ、みたいなことをよく聞かれます。数学科卒が眼鏡屋をやっていることが不思議なんでしょうけど、それは皆んなも大体そうだと思いますよ。仕事とダイレクトに結びつくのは稀だと思われます。

そんな思いを秘めつつ、聞かれてよくお伝えするのは、立ち止まったら定義に還るということですね。これはお陰様で染み付いています。常に一本の鎖をイメージするわけです。進まないときは、その発端に戻ります。高校までの数学は、どちらかと言えば数学というよりパズルなんでしょうけど、大学はひたすらそれを言われた記憶がありまして、むしろそれしか頭に残っていないです。

ということで、暇があると我々にとっての定義的存在である、認定眼鏡士の教科書を眺めるわけなんですけど、見る度に、めっちゃ凄いことがサラサラーっと書かれていて驚きます。もちろん教科書ですから、参考文献もあげてありますし、全て裏を取っているのでしょう。

話は変わりまして、日本の古いフレームは未だ、めちゃくちゃ面白い余地が残されております。例えば40‘sフランスみたいに、年代をまるっとブランド化するということを施されていませんから、カテゴリーで検索することが難しく(例えばフレンチヴィンテージ的な)、また品名やブランド名が80年代に入るまで記載されていないことも多々で、特定のフレームを指して探すことが困難です。つまり偶然出くわす、たまたま掘り出すという楽しみがまだまだ残されています。

その時に、写真のアレが活躍してくれるわけです。

サーモント3
目のことレンズのこと

19.07.21

最後もフランスのサーモントです。エッセル製です。エッセルは、ナイロールフレームの祖ですから、厳つさが売りのサーモントだろうが、問答無用でナイロールで軽やかにしてしまう感じが最高です。おそらく店頭出しの時にレンズサイズを変更しており、表記53ミリで55ミリのレンズが入っていました。しかもガラス。危ないのでプラスチックにて入れ替え済みです。レンズ縁が智と干渉するので、サイズは53ミリに戻しました。

レンズはもちろん鏡面仕上げです。実はこれ、2年ほど前にドイツから仕入れたことがありました。セルは色違いです。個人的には日本でも仕入れしていたのかと、当時の日本の感覚の豊かさに驚いた次第です。ローデンストックが強かった時代に、対抗馬でこれをあてるかと。サーモントという土俵は同じなんですけど、それぞれの個性が真逆でいい時代だなぁと感じます。

昨今、よく訊ねられるクリアーのセルフレームに通ずる軽快なポップさが微かにあります。

サーモント2
ヴィンテージのメガネ

19.07.21

引き続き。昨日、謎のサーバーのアレコレでアップ出来なかったので、時間の許す限り載せます。

フランスのサーモントです。フランスのサーモントは、実に良いですよ。何だかんだでエレガントなんです。眉毛フレームなんですけど、野暮ったさや粗野な感じが控え目なんです。サーモントといえば、やはりドイツフレームの方が今も人気でしょう。眉毛フレームがそもそも孕む厳ついデザインに対して、ドイツらしい堅牢な作りから醸し出される何かしらがマッチして、当時も売れたんだと思います。フランスのサーモントは出てくる数も少ない気がしています。要は、中途半端だったんでしょうね。ここが大事で、謂わば中途半端を愛せるかどうか、全てに共通する肝です。

これの見所も多いんですけど、一番は眉パーツを止める構造でしょうか。

画像奥、眉パーツを上から抑える謎の金属パーツがあります。構造的な利点は、分解清掃な際に分かりませんでした。上から見て綺麗というアクセントの為だけなのかどうなのか。でも、とりあえずカッコいいので良しです。

(眉を外すと、パーツの特徴が分かりやすいです。)

金張の表記はフランス式です。各所で勘違いされていることですが、この表記の場合は、欧米の(1/20 12KGF)の分数と異なります。この表記は張られている金の厚みを直接示しており、20/1000ミリの厚みの金を張っているということです。つまり20ミクロンの金の厚さが台金に乗っかっています。その辺もポイント高いです。

テンプルは真ん中を膨らませて紡錘形にしています。だからなんだって言われると困るんですけど、デザインに関して全部に目が行き届いてますよというエスプリが、少なくとも伝わります。

サーモント1
ヴィンテージのメガネ

19.07.21

イレギュラーで、日本の入荷です。主にサーモントなんですけど、すべて日本製のサーモントでは無いところが乙なんで紹介していきます。舶来物と呼んでた頃のフレームたちです。

その1、ボシュロムのサーモントです。金張り(12K 1/20)ということから、70年代中頃かなと推測が出来ます。これで3度目なんですけど、日本の在庫から、似たようにボシュロムのサーモントが出てきています。しかも、3回とも「W.GERMANY」刻印でして、70年代ごろからボシュロムがフレームの製造から手を引き始めていることが伺えます。

(MADE IN W.GERMANY)

これの見所は、さらにあります。これは初なんですけど、おそらく、元々はレイバンのオリンピアン的な、カールトンタイプのフレームとして販売していた物を改造して、サーモントにしていることです。

眉パーツを外してみてビックリでした。みごとに普通のフレームが現れました。トップバーにプレスが入っていますし、おそらくこのまま販売していた物を、売れ行きが鈍って在庫がダブついてきたタイミングで、販売促進の為に改造したのでしょう。

裏からみると、サーモントでは珍しく、パーツがネジ一点で止めるタイプです。それでガタつくことも無いですし、ネジ二点で止めるタイプにありがちな、ネジで生地が引っ張られ、経年変化で眉パーツが割れることも無いので、むしろ優れた機構かもしれません。

トップバーの裏に、ネジ穴をロー付けしています。はみ出さないように気を利かせてありますから、眉がなくなったとしても表からは見えずに、オリンピアンとして使える訳です。

その辺の構造の面白さ、垣間見える合理性も良いですけど、物としても、デザインが良く素敵です。サーモントの要となる眉部分は、リムとトップバーを挟み込まないといけない為、厚みが出てしまいます。それに対して、眉の色を濃いクリアレッドにすることで、軽やかさと上品な感じを付加しようと試みています。それもいい感じです。

今年は終わりです
雑記

19.07.19

工場の関係で、割と自由に玉型変更等々の改造していたSPMフレームの特注品が、今年は終わりになりました。ブリッジの完全再現等々も上半期に行ってきましたから、後半は銀無垢の仕上がりを待つのみという感じです。ありがとうございました。

世間話
雑記

19.07.19

銀無垢で詳細打ち合わせ。それぞれの要所等々、なぜこのような変更になったのかお伝え。お客さんのイメージが製造側にもあれば、よっぽど出来上がりで「あれ?」みたいなことが起こらなくなりますので。

それに関連して、世間話的に「最近、頭部が伸びてる傾向って感じます?」というざっくりとしたフリがありました。

ブルバキ個人としては、その予感が大有りです。とくに平成生まれは、側頭幅が男女共、昭和世代の平均より-10ミリずつだと感じています。統計取ってませんけど。顔幅が狭くなって、奥行きが増えた感じします。外人みたいな、横から見てカッコいい頭部形状に近付いています。インスタ見てても顔小ちゃいですからね。

ファッションのゾーンに強いメガネですと、男性向けフレームの場合、大体145ミリのテンプル長だったりします。そういえば。5ミリくらい、奥行きは伸びてるかもしれません。

何名か美容師さんも、同じようなことを言っていた記憶があるので、日本人も8頭身くらいが標準になって、ぐんぐんスタイル良くなっていくんでしょうね。

明日は15時から開けます
営業案内

19.07.19

明日、20日の土曜日は15時から開けます。よろしくお願いします。

スペースエイジ
ヴィンテージのメガネ

19.07.16

雑誌の昭和40年男だと、パストフューチャーと呼ばれていました。個人的には60年代ごろの、宇宙船っぽいデザインがたまらなく好きでして、店もちょいちょいそんな感じの物を、棚やらペンダントライトに用いています。

それで、メガネとなるとどうかと言えば、やっぱりメガネもその辺りが好きです。ひょっとすると一番。ゾーンとしては60年から、70年代のオプチル黎明期くらいまででしょうか。未だに見たことのないデザイン、今にない作り、そんな珍品のオンパレードだったりします。シナプスがバチーンってきます。

ということで写真のこれ。推定60年後半です。オーストリア製。

写真が全てですから、特に言えることも無いんですけど、絶妙におじさんメガネっぽく、絶妙に宇宙船っぽい、未来感があります。眉の部分の侘び寂びを見てください。裏から止めて、正面から見たときにチラリと覗くだけです。だったら無くても良いじゃん、と思うかもしれませんが、そんなことはありません。初めから無いことと、消去ということは違いますから。

レンズを囲うリム、どうですか、おかしいでしょう。上下と左右で厚みを変えた、カットリムの中でもやや特殊なやつです。シートメタルには出来ない、奥行きのある柔らかい曲面がもたらされ、有機的な印象を与えます。つまり、掛けた時に冷たい印象になり過ぎないと言いますか、ロボットぽくなり過ぎない感じです。カットリム自体は失われた技術では無いんですけど、コストが高く、まず意匠がふんだんに盛り込まれたフレームに対して採用されることが無いと思われます。

散々言いましたがあれですね、なんといっても一番はブリッジの唐突さですね。何でここだけデザインを諦めた?みたいな、ただの棒がくっついているのが見所であり、一番目を惹きますね。棒というか、グラタンのチーズの溶ける前みたいな、はたまた千切れたうどんみたいな、謎の偏平が真ん中に鎮座しています。リムと違って艶ありですから、明らかに目線をここでストップさせたいという意思を感じます。自信がありそうです。

でも確かに、不思議なことに見ればみるほど、これしかブリッジとして合わない気がしてきます。これ以外、そしてこれ以上のものは浮かびません。むしろ、デザインをしないというデザインを最後にブリッジに施し、全体にダイナミックな躍動感を足したのでは無いでしょうか?そんな気さえしてきます。

そして、なんといっても、何だかんだ遠目はサーモントだったり、カールトンぽくも見えたり、普通の四角い銀のメガネに見えますから、現在のファッションとの親和性が高いところもポイントが高く、なかなかの一本でした。

ブルバキって、本当に欲しがりますよね
雑記

19.07.16

そういうつもりでも無かったんですが、手元にあればなぁと、ちょうど感じていました。お客さんが貸してくれました。欲しがるよねブルバキって奴は。多分自分のは、実家に置きっ放しです、乳と卵。

基本的なことが全然分かっていないまま、この前のブログの夏物語を読みましたが、なるほどあれの第一部は乳と卵ですね。そういうことでしたか。なので、私みたいに全部忘れた状態でも、夏物語さえあれば事足りるようになっています。素晴らしい、ありがたい。

早速、ささっと1時間くらいで乳と卵を読んでみましたが、違う箇所も多々でした。むしろそれは露骨でして、読み比べてそれぞれを楽しめるようになっていて、それはそれで時間をかけた甲斐があるってもので、ありがたいです。吉本ばななのとかげとひとかげ的なアレですね。

乳と卵は、つっけんどんで面白いです。親戚と言えどもやや他人事として傍観している感じがあります。ですから、読む側もそれくらいのライトなスタンスで読めて、色々難しく考える子もおるなぁくらいな感じで終われます。

夏物語は、自分事としてずしずしと、のし掛かるように書かれてありまして、第二部まで通すと読み終わった後にズシンときます。

_170831bk

pageTopLink