サンプラチナの丸メガネ。型直しのご依頼でした。販売して4年以上経過しています。




サンプラチナは色の変化はありません。ロー付け箇所が小さく黒くなるくらいです。全体にびっしりと小傷が入って、落ち着いた光沢を放っています。こういう感じも良いですね。
ネジも、摩耗で緩くなる等々は見受けられず、とりあえずクリーニングと注油で終わりです。
22.11.23
サンプラチナの丸メガネ。型直しのご依頼でした。販売して4年以上経過しています。




サンプラチナは色の変化はありません。ロー付け箇所が小さく黒くなるくらいです。全体にびっしりと小傷が入って、落ち着いた光沢を放っています。こういう感じも良いですね。
ネジも、摩耗で緩くなる等々は見受けられず、とりあえずクリーニングと注油で終わりです。
22.10.30
おまけ分析。一個前のサンプラチナにセル巻きしたフレームについて。
いつものと並べてみました。写真右端の智の比較です。メガネは玉型が一番大事という派閥もあるとは思いますが、個人的には智→ブリッジの順で見ていると思うので、その順に大事に思ってる派閥です。


サンプラチナのレギュラーメンバーから、鼻あて付きを載せました。60年代くらいのメガネまでよく採用されている割智とか爪智とか界隈では呼んでいると思いますが、駒が真ん中でパカっと割れてレンズを挟み込んでいる智です。パカっと割れて開くときに、テンプルもいっしょに挟み込みます。なので、レンズを変えるときは2つのネジを緩めます。それが割智です。ちっさければちいさいほど、レトロでカッコイイです(かなり主観)。
店では、この智で、レンズが40ミリ前後で、ブリッジは一山のタイプ等々の、よりレトロなテイストの物もあります。レンズの形、大きさ、ブリッジの形状等々で、20年代〜60年代くらいまでのどの雰囲気にも振り分けられるんですけど、とりあえずメガネの黎明期っぽい作りなのがこの智です。


写真の撮り方が悪いのか、割智の方が面積が広くてゴツく見えてしまいますが…その辺は実物を確認していただくとして、上からと下からで比較しています。一個智は、L型の塊がまずあって、レンズ留めのネジが収まる部分と、テンプルの駒が収まる部分が切削されています。まさに一個の塊でレンズの保持と開閉機構をテンプルに持たせており、それぞれ独立しているのでレンズを変えるときはネジは一箇所だけ緩めます。
メガネから独立させて、一個智のみに焦点を当てると、デカければデカいほどカッコいい気がします。栄生のトヨタ産業技術記念館に行くと感じますが、工作機械等々の巨大な金属の塊は、もうそれだけでカッコいいです。金属が大きい塊で存在しているというのは、モダンなカッコ良さがある気がします。アクセサリーやジュエリーも大きければ大きいほど、まずはカッコ良いと思っています。身体とか服とか色々なものと相対させたときにどうなんでしょう?みたいな悩みはあるんでしょうけど、とりあえず生物とは異質な物が大きいというのは、畏怖まで感じ無いにせよ違和感を覚えるのは確かです。
一個智も、もちろんメガネのパーツですからメガネに引き戻して考えたときに、大きければ大きいほどめがね全体としてカッコいいのかというのは???でして、いつまでも悩める議題です。スーツの肩パットみたいな感じで、智が大きく張り出すとメガネも力強いマッチョな雰囲気になるので、現代の傾向としては智は小さくするべきなんでしょうけど、一個智の美学としては大きくありたいということで、ここで矛盾が生じます。その相克のおかげで三者三様であれこれプロダクトが生まれるのかなとも思っています。フィッティング的にも、智は大きくあって欲しいですね。


横で比較すると分かりやすいかも。どちらもテンプルが細い部類に入ると思いますが、割智の方はも一つ華奢な感じがします。よくある表現としてはカッコ良さのベクトルが違うとかありますけど、本当にそんな感じです。
たまには気分を変えたいということで、すでに購入して頂いたフレームに巻くことも可能です。私も、銀無垢の一山のラウンドに巻いてみようか悩み中です。ちなみにカクカクした玉型はセル巻き出来ないのでごめんなさい。
22.10.30
展示会IOFTの注文分が届きました。サンプラチナにセル巻きです。

黄色なんですけど、クリアイエローで下のサンプラチナの光沢が合わさってゴールドっぽく見えます。

つづいて緑です。キウイっぽい緑です。
緑も黄色も、インテリアでいうところの昭和レトロポップみがありました。羽根が緑で、土台がメタルの扇風機を良いなあと見るその感覚に近い、良い緑と黄色でした。確かに80年代のフレームで、ハッキリと記憶にあるのはジョンレノン(メガネのライン名)の丸メガネで、大きい丸にこれと同じような黄色のセル巻きが施してあるものです。他にも、仕入れのときにピックしない物の中に、安価なサングラスで元気なカラーのセル巻きが施してあるのを何度も見ています。七宝塗装でボストン型に赤とかピンクを乗せていたり。そういう色々な物に共通してあったであろうあの年代のポップさが今回のセル巻きにはあるなぁと、あの年代に生まれたばかりであの年代にまだ自我が芽生えていなかったであろう人間が申しております。


メガネの横の部分を智と言いますけど、今回は普段ブルバキで置いてあるのとは違うタイプのフレームに、緑と黄色のセル巻きをしました。今回の品番はMI-444で、3年くらい前にテンプルが紫檀の削り出しに改造されたモデルを一度入荷したことがあります。ヴィンテージのメガネ界隈からしたらレンズが大きめかもしれませんが、それが極端に小さいだけかもしれなくて、46□22というサイズは普通の大きさかちょい小さめくらいです。それでMI-444の智は堅い雰囲気の一個智、テンプル側のコマまで含めればスパルタ智です。
よく分からない用語を使うと上みたいな感じですが、セル巻きの色とその雰囲気に応じて、ベースとなるフレームの雰囲気を合わせてみたということで、80年代の雰囲気のまんまアップデートしてみました。
もし、こういう元気なカラーの当時物のフレームがあったとして、年代的にフレームの大きさは例えば50□18とか52□16という感じで真ん中が詰まった雰囲気のフレームだったりします。また、80年代であればおそらく智の作りはヨロイの形式で作られることが多いと思います。何だかんだ忠実な80年代の再現というよりは、いまの感覚から80年代に1歩2歩ズラしたくらいな感じです。
22.10.16
その2ということでサーモントを3ヶ月間、ほぼ毎日使った例がこちらです。名古屋は16日日曜日の段階でも昼間は25度を越えています。暑いです。でも、汗が滴り落ちるまではいかなくなってきまして、そうなると銀無垢のメガネも、そろそろエイジングの速度が遅くなってきます。しばらくは、下の貼り付けた画像くらいの燻され度で過ごすことになりそうです。フロントの智の部分は、個人差あると思いますが私は全然触っていないようです。いい具合にムラのある燻され方がしてあって、正面のピカピカ感は初めの頃より大分抑えられました。
あとブリッジですが、かなり力強い雰囲気が燻されることで足されています。




もっと傷が入ったり、欠けたり凹んだりの荒々しい要素が足されると一層カッコいいのかなあとは思いますが、値段が値段ですし、やっぱり勇気なくて自主的なハード使用は出来ないです。普段通り使ってこんな感じです。ひどく傷なり何なりが付いた時に、落ち込まないように心の予防線を張っておくくらいにしています。
22.10.14




店を始めた年に製造された初号機なので、そうなりますと5年か6年くらい使ったことになります。銀無垢の丸メガネです。昨年に引き続き今年は、銀無垢のサーモントを使用してみてその変化を調べている最中ということもあり、丸メガネは家に寝かしがちではありました。なのでこの2年の使用頻度は低めです。
はじめ3年くらいは、磨いて常にピカピカをキープしていましたが、今は丸メガネに関しては磨かないことにして燻し続けています。とは言いつつ、気になる箇所は手で擦りまくって光沢を復活させている為、銀と黒ずみのグラデーションになっています。
メガネに限らずの感覚だとは思いますが、使って傷ついたら、使って汚れたらおわりみたいな雰囲気が年々増している気がします。微弱ながら抗いたいとはずっと思っています。最近驚いたことは、スニーカーの洗浄の専門店が続々と出来ていることで、オジサンからしたら汚れたら汚れるほどカッコいいと思っていたのでショックでした。おニューの靴とか言われると恥ずかしく感じるタイプのおじさんです。おニュー、、、それも死語かもしれません。
店を始めた当初は、抗い方としてそもそも変化しない、さらには劣化という概念が無いぞということを前面に出していた気がします。今ももちろん変わりはなく、銀とかサンプラチナとか金とか、無垢の素材の普遍性に惹かれ続けています。その中で銀は、やっぱり黒ずんで馴染むのが魅力だよね的な、シルバーアクセサリーの愛され方のスタンダードに還った気がします。そういう心持ちにしておくと、傷も汚れも全て加点で毎日加点で、やや気持ちが楽です。

最近読んだばかりのあの本です。強烈すぎて、今日も引用です。このこと自体は、ヴァージル・アブロー以外にもあれこれ言及があると思います。村上隆の超芸術起業論とかにも、ほとんど同じ構造の議論があったはずです。コンテクスト勝負とか、そういう表現だった気がしますが、忘れました。
この話は、ハイブランドにおける戦術のはなしだから、ノンブランドな私には関係ありませんと言いたいところですけどそんなことも無いぞと、この2年くらいは強く感じるようになりました。情報というのかコンテクストというのかストーリーというのか気にしませんが、もはや物が添え物、オマケになってしまっているように感じるときもあります。ブランドの方が、静かに物を販売しているようにも思えてきます。
引用箇所にラグジュアリーとありますが、現在のラグジュアリーと核となる“垂涎の的”の感覚とはズレているが故に、銀のメガネもくすんだり傷ついたりして各人が使用した痕跡がつくと金銭的価値が減ります。でも使ったら終わるんじゃなくて、使ったら始まって欲しいですよね。昔から使い込んで味を出すと表現しますけど、自分の為に消費することはとても贅沢ですしね。
22.08.26
銀無垢のカットリムが販売になりました。まだ在庫あります。クリアレンズで真っさらな状態だと、めちゃくちゃクリーンな雰囲気です。


表面と裏面の角が合わさって、横から見たときにスタッズみたいな点の演出になっているところが綺麗です。正面から見たときに、ニュースで見る何かしらの官僚の方みたいな、ファッションの要素が薄い真面目な眼鏡っぽい雰囲気であるが故に、カットリムの正面の存在感と横のちょっとした厳つさが効いている気がします。
経年の変化はこのフレームがおそらく一番です。ただ黒ずむだけでは無くて、パイロットグラスっぽい無骨さが出ます。高2の夏休み明けくらいガラッと変わります。

私が1年ちょい使った物です。昨年から今年の7月まで、変化を調べたくてほぼ毎日つけました。燻されて濃淡がついてカッコいいです。プラス、フレームが別物かと思ってしまうくらい雰囲気が変わる気がします。カットリムであるために、正面に黒ずみが出て強めに重厚感が付加されるからかもしれません。
22.08.13
バイフォーカル(二重焦点)です。銀無垢の丸メガネに入れてみました。
30年くらい前は、私が幼稚園児のころは近所のスーパーへ買い出しに行くと見かけた記憶が薄っすらあるんですけど、昨今はほとんど見かけなくなりました。今もちゃんとあります。CR39のハードコートもまだ製作しているため、こういった一山のメガネに入れてみると、ヴィンテージ感が強く出ます。ガラスは調べてみないとですけど、マルチコートは製作していたはずです。
遠近両用のレンズとなると、一般的には累進タイプと呼ばれる、境目のないレンズが主流となりました。そんななか、バイフォーカルやEX等々境目のあるレンズたち、用途が見た目にダイレクトに反映されたやや原始的なレンズはどうなんだ?ただの退行か?みたいに思ってしまうかもしれません。実際にはそんなことはなく、最新の累進レンズでも克服出来ない利点がちゃんとあって、まだ残っています。レトロだから良いよねにプラス、光学的な特性が付加されてもうちょい良い感じになります。
従来の認定眼鏡士では、色々なタイプの遠近レンズの光学的な長短を考察し、主訴に合わせた提案をしましょうというスタンスです。ということで、主訴・ご要望次第ですけどバイフォーカルもアリですよ。フレームのレトロブームに乗っかって、レンズもレトロブームが来ると良いですね。バイフォーカルを見たことがない人が増えたときに、それが新鮮に見えてカッコいいとか。レンズに境目があるということが、美観に於いてネガティブな評価が下されやすかったんでしょうけど。そもそもそれって何でだっけ?境目があると何でカッコ悪いんだっけ?みたいになって、あっても良いじゃんみたいな風潮が出来ると、眼鏡屋としては主訴に対してのアプローチが増えるといいますか教則本通りに戻るといいますか、色々と解決がしやすくなって良いことだらけです。

22.08.10
925シルバーのメガネです。一山じゃなくて、鼻パッド付きもあります。丸とかもあります。
この度、ようやく925シルバーの鼻パッドが製作されました。銀無垢のサーモントの副産物です。
以前はパッドの肌の接地側に模様がありましたが、今回は真っさらです。裏といいますかネジ穴がある取り付け側は、以前と同じ「Ag 925」の刻印入りです。
やっぱり、あるとビシッと決まる感じがします。極論で、鼻パッドが無垢だったら、どんなメガネでもカッコよくなるのでは無いか?という説すら、心に抱いております。


このシリーズの標準装備は、プラスチックの透明の物です。
22.07.22
銀無垢のサーモントですが、着用して3週間経過しました。着用していなかったのは、眼科さん出張の1日だけで、あとは掛け続けました。レンズの濃さが35%で、サングラスとしては薄めですけどそれなりに炎天下もイケるということで、自転車通勤時のサングラスの掛け替えも控えて、とにかく掛け続けました。エイジングガチ勢ですので。
全体の彫りが深くなった気がします。溝が薄っすら硫化しています。素材に対して適した構造を採るということで、ブリッジもテンプルも凸になりましたが、そのおかげで変化がきれいです。
とは言え、まだまだ志半ばです。ブリッジとテンプルの表面以外は、925シルバー特有の黄色味を帯びてきた程度です。



シルバーの良さといえば、もちろんあれこれあります。意外なところでは光の反射率が金より高いとかありまして、手彫りの装飾を推奨している一山ブリッジのシリーズでは、シルバーアクセサリーの付き合い方の概念をひっくり返して、ピッカピカを保ったまま使い続けるのもこれまた乙ですなあと、謳っていたと思います。いまも、新品のピカピカの彫金が入ったフレームは最高に綺麗だなと思います。


でもやっぱり、シルバーと言えば燻しだよねって声もあると思いますし、自分もメガネ以外のシルバーアクセサリーはそんな感じです。

フレンチクルーラーみたいな指輪も、メロンみたいなバングルも、元々は燻し加工が一切入っていない、ピカピカなアクセサリーでした。指輪は3年くらい?バングルは5年くらいでこんな感じになりました。他人からみたら汚いだけなんですけどね。なんなら、傷もへっちゃらなので、ガチゴチそこら中に当てまくっています。小傷程度で済んでいません。
自分の製品に話を戻して、彫金のピカピカなフレームのときは、作りの精緻さとかも含めた色々な意味でのくすみの無さを売りにしていました。高校の倫理で習う清き明き心みたいな、そういった日本的なものを結晶化してメガネに変換した感覚です。サーモントにおいても、それを捨ててはいません。むしろ作りを見れば見るほど今まで以上に複雑で難しい構造のメガネとなっていて、これぞニッポンみたいな要素はより強いです。強いんですけど、それが表に出ることが無いように、常に気をつけていました。ゴツくてカッコいいだけが前面に出るようにして、そことシルバーのくすみと傷による重厚感が重なるようにしました。そして前回の話が関係しますが、ゴツいとか重厚感とかつい日本のモノづくりの良さを込めると足し過ぎてしまうので、モノづくりの質を落とさず引き算するということで眉毛のパーツがクリアグレーに決定したわけです。
色んな方が三者三様で使って頂いて、それをメンテナンスするごとに見せてもらえれば嬉しいんですけど、一応サーモントの製作意図はこんな感じです。今まで通り、同じメーカーで同じ銀という素材なんですけど、始めに設定した狙いみたいなものは真逆だったりします。
22.07.15
リム3面の七宝塗装です。変化の少ないサンプラチナに直接塗料が乗るので、持ちが良さそうです。


リム3面ということで、裏まで抜かりなく塗装が施されています。
ブルバキでは薄いセル板を巻きつける、セル巻きを定番で扱っています。セルのカラーなのかレンズのコバの干渉具合なのか、何かしらの要因が重なってセルの浮きが著しいケースがありまして、今回は七宝塗装に変更をしてみました。正面からみたときのボリュームは少し減りますが、全体の光沢とピタッと感がこれはこれで堪らんです。表面も均一でムラがなく、とてもきれいです。



前にも紹介したこの本に、七宝塗装が載っています。この項目を見たときから、個人的に七宝塗装に対しての熱が上がってきています。セル巻きもヤバイけど、七宝塗装もヤバイと。注射器で流し込むのに、デミの柄とかどうやって施しているんでしょうかね。不明です。艶消しも出来るみたいです。ロストテクノロジーでは無いのに、ますます謎です。

セル巻きを外すとこんな感じです。薄い板を割らずに、パーツの干渉を避けて巻くのも凄いですけどね。今回は七宝塗装にチェンジです。