カテゴリー:メガネのはなし

すごい本が出ましたね
メガネのはなし

21.11.06

福井県眼鏡協会が企画監修ということで、作っている人々から直に「眼鏡ってそういうことじゃないから」というような見解が出されたことになります。他の分野で、あんまりそういう本を見たことが無いので、よっぽど現在の眼鏡のフォーカスのあたり方や、これぞメガネの真髄的な我々販売側の伝えている内容がトンチンカンだったのかなあと予想されます。わたしも読んで反省をしたいと思います。

結構まえに、このブログで書いた内容もより詳しく載っていました。この辺は公式見解と相違がなくて安心しました。もうさすがに、7枚蝶番じゃないっていうだけでダメなフレームとか判断する人も減りましたね。確かに、太い黒セルが席巻した時代にそういう風潮があった記憶があります。

あとは、ガラ入れも載っています。角を残した磨き云々は、ガラ入れをしていない未処理であって、生地の光沢を引き出す上でも必須の過程という印象をうけました。2、3日間、ガラガラ回し続けるのは、この本で始めて知りましたね。

工業製品ですから、やはり基本は進歩史観に沿っている気はします。ベトナム戦争あたりでそういった歴史観や人類の歩み方に疑義が呈されたりもしますが、日本の眼鏡に関しては81年にニコンブランドからオールチタンのフレームが出てからもずっと進化は止まらずということでしょう。今はビヨンビヨンでバインバインな、踏む以外で壊れないくらいの、そして錆びない緑青でない永く美観をキープ出来る、恐ろしい代物になっています。そういった頑張りの下地があって、供給が安定しているからこそ、ヴィンテージを嗜むみたいなことが出来る余地が生まれたのかもしれません。

思わず唸っちゃう
メガネのはなし

21.09.18

お持ち込みでした。傷取りと、磨きとレンズ交換後でこんな感じです。

Garrett leight という物です。ここ最近のフレームだと思います。雰囲気が、そのまんまイギリスのNHSだったりします。その辺知らなくても、細い且つ薄い繊細な作りで優しい雰囲気の、感じの良いフレームです。

雰囲気の要は、蝶番ですかね。フロントとテンプル、両方カシメのぺったんこな5枚蝶番です。座彫もギリギリぴったりを狙って、キチっとしてあります。ピンもテンプルの方向に準って真っ直ぐ正確です。この手の細いフレームであれば、埋め込みの3枚蝶番を使うのがセオリーなんでしょうけど、それだとフロントもテンプルも細くても“厚く”なってしまいますからね。埋め込んだ金具が安定し、尚且つ端から金具が飛び出さないような厚みを用意する必要がありますから。今回のようにカシメであれば、確かにフロントもテンプルも理論上は細く且つ“薄く”作れるんでしょうけど、製作過程で割れる・欠けるリスクがありますから、現在は製作を躊躇いがちだと思われます。ヴィンテージ以外で、こういう構造の眼鏡が見られるとは思ってもいませんでした。

テンプルの芯はシューティングで入れずに、生地と生地で挟み込んでいるはずです。ヴィンテージっぽい、雰囲気の維持に大事な、細さと薄さを厳密に再現しています。

ちなみに今回のフレームは中国製でした。この前のタイ製のフレームといい、海外のセンスヤバイなと、唸っています。

やったー!!
メガネのはなし

21.06.29

ようやく、探していた資料が見つかりました。メンクラの眼鏡号です。

80年代〜90年代にかけて、まだ眼鏡がアイ“ウェア”として扱われる前の時代には、どんな眼鏡がファッションに適合しているとされていたのか、いまいち掴めずにいました。人伝に聞くくらいしか無く、もっと客観性のある物が欲しいなと開店時から探していました。そうでした、メンクラでありました。

初版が87年で、第2版が90年です。定番が半年からもって1年で消費される現在と違って、なんか良いですね。

時代的にアランミクリはやっぱりという感じですが、イケてる眼鏡コーナーのピックアップ品は大変興味深いです。特に、BADAの紹介がしっかりとされている物を初めて見つけることが出来ました。

ここで、papa Hemingwayが出てくるか〜という印象です。そして、やっぱりあのヘミングウェイかぁ〜という感じで、papaってなんだ??という疑問は依然として残されました。ビアードパパと同じパパですかね。それは一般的なパパと同じ、父のパパなのでしょうか。

最後ゴルチエでした。この写真、流石に物が分からなすぎるので、カッターマットの上で正面から撮影するべきですね。

オール甲へのガラス枠入れ
メガネのはなし

21.04.27

2年くらい前に手に入れた、オール甲のフレームです。ちゃんと使っていたのは、実質1ヶ月ほどで、あとはぼちぼちでした。自分は、無垢の手彫りのピッカピカや、面白い系の眼鏡がやっぱり好きなんですね。

ところが年度が変わり、いわゆる普通の眼鏡が要るようになりました。一旦、普通とは何か?とかそういうのは置いておいて。普通のが。そこでさらに突っぱねることも出来たんでしょうけど。前出の二村ヒトシさんの本でいうところの「心の穴」を想うと、普通も要るなとなりまして、この4月からはよく使っています。タイミングが合えば、皆さんにべっ甲の経年変化を見て頂けるかもしれませんね。

それで、せっかくなので初めてオール甲のフレームに、ガラスレンズの枠入れをしてみました。そもそもの件数が少ない上に、リム切れ等々が怖いのが重なり、さすがにべっ甲にガラスの枠入れは実績0でした。ということで、自分ので実験です。

どちらの素材も、全然弾力性が無いのでやっぱり怖いですね。思ったよりは、スルッと入りました。

オレンジもとってみました
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21.04.19

この前の木枠のコレクションボックスです。注文頂いたので、オレンジもとってみました。

エルメス的な、パキッとしたオレンジを想像しておりましたが、そうではなくて落ち着いたレンガ色みたいな感じです。良い感じでした。

ケースその3
メガネのはなし

21.04.04

ケース問題、あれこれブルバキ的な回答が見つかったのでメーカーさんありがたいなぁという気分なんですが、もう一つ実は、その1・その2以上の難問が解決出来ております。それは、

《ケーブルテンプル(巻きつる)のフレームが綺麗にしまえるケース(ハードタイプ)が無い問題》

です。ヴィンテージ眼鏡あるあるかもしれません。やや大げさに書きましたが、うんうんと頷いている方も多いのではないでしょうか。古いアメリカ物で、ケーブルテンプルは頻出ですからね。その時代ですら、ぺったんこで幅の狭いスチールのケースに、ケーブルをぎゅうぎゅうに詰め込んでしまっている状態です。頻出の時代にケースが無いんです。ですから、ケーブルテンプルを作るメーカーが少ない現代で、それに合わせたメガネケースが出ることも無いだろうなと諦めていました。

相変わらず前置きが長いなと。トップの画像がそれを解決できるケースなんだろと。そうです、そうなんです。驚くべきことに普通の見た目のあのケースが、まさにそうなんです。

ではどうぞ、ご覧ください。

画像を見て頂ければ、それが全てです。言葉なんて野暮です。

ウソですご説明します。当店のサンプラチナのツーポを収めてみました。テンプル全長170ミリのケーブルが、全く干渉せず収まっています。ブリッジでグワんとなっていません。テンプルがバッテンになっていません。それが干渉していないことの証です。まさかこんなことが可能になるとは!大げさに言えば、私の見たかった風景が、いまそこに広がっています。結構本気で感動しました。凄いですよね!あれ、もう知ってましたか?

そこまでゴツくなく、そして幅を取るわけでもありません。定規の余白が下に5ミリ程あるので、大体高さは2.5センチですね。ケーブルをうまく収納できるミソは、横を見ると分かります。これはデザインの天才がいますね。天才の閃きです。本当に感謝です。天才さんありがとうです。

茶色もあります。フレームご購入の方にはサービスで添えられるような価格帯の物なので、それも最高なんですよね。今まで皆さん、ご不便をお掛けしてすみませんでした。これでもう大丈夫です。

ケースその1
メガネのはなし

21.04.03

オリジナルでケースとなると、布やらなんやらの持つ量が凄まじいし型代もあるしという金銭面での難しさと、あとはこっちの方がドンズバの理由ですけど、いい感じの小物をプロデュースするのは、めちゃくちゃ難しいという理由で避けてました。いつも、感じの良い雑貨屋さんで感じの良いものを買ってくださいとお伝えしていたと思います。

ブルバキを始めて5年以上経ちましたが、ようやく自分が欲しいの見つかったということで、仕入れしてみました。木のケースです。価格がなかなかで雑貨屋さんは避けると思うので置いてみます。よくあるゴージャス感を出す為の外装の桐箱とは違って、メガネ本体を収納するケースです。お出かけ用です。

テンプル長145ミリの銀無垢のラウンドを入れてみました。合わさると一層感じが良いです。無垢物の付属品として、セットにしてしまうという手もあるんですけど、それはしないことにします。眼鏡1本だけ所持でそれを掛けっぱなしで、尚且つサングラスを使わない人にはとって眼鏡ケースは外出時に不要なものです。要らないからその分値下げしてって感覚じゃないですかね。なのでセットはしない方向です。

セルもそれなりの大きさまで入ります。

素材は山桜です。大体こういうのはウォルナットで決まりやろ的な現代の風潮の中、敢えての山桜でした。個人的にはここにも惹かれていまして、本居宣長が好きだったらしいと、小林秀雄が仰っておりました。それは桜の花についてなんでしょうけど。つまり山桜も色々と良いことづくめで素敵な素材です。

手垢でコテコテにしたら、かなりカッコ良さそうですね。

綺麗に合わさっています。

正月のあれこれ
メガネのはなし

21.01.15

ヴィンテージでは無いですね。チタンの雄、シャルマンのラインアートです。いまもホームページに掲載されているモデルでした。廃業店舗の引き取りで、ずっと保持していました。正月のあれこれの中に、親戚への販売が含まれていまして、そこでの販売分です。

これを紹介しておこうと思ったのは、自戒も込みなんですけど、プロダクトデザインとはこういうことなんだなと。じんわり染みたからです。ブルバキもどうたらこうたら講釈垂れておりますが、あくまでもファッションプロダクトデザインだぞと。カジュアルプロダクトデザインだぞと、そういう話です。さっきの表現を用いれば、柔らかいプロダクトデザインだぞと、そういうことです。

まずフロント。一口にチタンといっても、処理なのか配合なのか様々な味付けがありまして、これはフロントが硬質なチタン、テンプルはエクセレンスチタンと名乗っていますが、バネ性を帯びたチタンです。フロントで見どころなのは、ブリッジと智の太さですね。特に智はレンズ留めからテンプルまで一体形成ですから、ここまで大きいと切削で作るんですかね?とにかく堅牢さというものが形となっています。ちなみに、鼻パッドのアームは程よく柔らかく、フィッティングの為の操作がしやすいです。たまに異常に堅く、堅牢なのは良いけど顔に合わせられない…というフレームもあります。

そして、光学的にも素晴らしいのが、テンプルの反りに対してフロントがビクともしないことです。素材をかえていることと、そのゴツさが効いています。つまり、どなたが掛けようが、レンズ面は眼球に対して正しくセッティング出来ます。お持ち込みのフレームの中で困るのが、フロントからテンプルまで同じ素材で、全部同じくらいビヨンビヨンなフレームです。ビヨンビヨンなフレームの場合、ある程度顔にしっかりと保持するために側頭幅の開きを少なめにします。しかしそうしますとかけた時に、ブリッジとテンプルの弾力性が同じ場合、同じように共に反ります。その反りが時として厄介で、強度数や累進レンズに時に見え具合の違和感に繋がります。特に遠方視で違和感が出るでしょうね。

試しに140ミリ→180ミリくらいまで広げています。フロント面は逆反りしていません。このとき、フィッティングする側が気になるのは、赤の矢印のように先セルが戻せるかどうかです。開いてこめかみへの干渉を逃した分、閉じないといけません。

認定眼鏡士の「フィッティングどうしてます?」立ち話あるあるですが、形状記憶性の高いフレームの場合、耳への添わせが問題になります。結局、フレームがどんなに柔らかく、掛け心地が良かろうが、耳に沿って接地されていなければ顔から落ちます。眼鏡は摩擦で顔に踏みとどまっている為です。

上の写真を確認しますと、先セル部分で素材が変わっています。多分ここも普通のチタンです。形状記憶性が抑えめにしてあり、耳への添わせ、曲げ、耳の裏の凹みに合わせた形状への変更がしやすい配慮がしてあります。触れば触るほど唸ります。

テンプルが平打ちの線を縦に3本束ねているのもミソですね。上からの力に強くて、フレームが上下に捻れにくくなっています。人間は左右の眼球運動は得意ですが、上下は苦手ですし、そもそも片方が上、もう片方が下というようには動きません。眼鏡が上下に捻れるということは、そういう無理な眼球運動を要求することに繋がります。度数が強い方は、ちょっと眼鏡を捻ると眼が追いつかず像が分離することが確認出来ます。上下はそれくらい弱いです。

ざっと、こんな感じです。どんな顔幅だろうが、どんな度数だろうが、どんなタイプのレンズだろうがへっちゃらで、こちら側もフィッティングの操作で困ることが無くて、チタンの質感と堅牢さがそのまま見た目に表現されていてカッコいいという、プロダクトデザインとはこういうことです!の塊のような眼鏡でした。感動しました。でもヴィンテージと無垢を売ります。

せっかくなので比較しておきました
メガネのはなし

20.12.22

柄まで確認出来ないかもです。ちょうど、お持込でAOがあったので載せておきます。菱松模様は、アレに似てるよね〜のアレです。インスタの方が分かりやすいかも。上の写真のレンズカラーはフェアオークルの15%です。黄金糖っぽくて綺麗です。とろみが出ました。

3・5・8
メガネのはなし

20.07.27

新しいCRの手が増えました。カラーバリエーションも32色あってそれだけで十分良いのですが、加えて安価で、さらに3・5・8カーブからレンズカーブが選択出来ます。ちゃんと、8カーブはプリズム入ってますし。痒いところに手が届きすぎて、もう痒いを通り越して気持ちよくなってしまうくらいです。素晴らしいですね。

試しに、5カーブで32色全部を一つずつ頼んでみました。

緑系が特に良かったなと。濃度30%〜40%の程よい濃さで尚且つ、アリアーテのパステル感が弱めなのがポイントです。ミリタリー物の緑という感じで、荒々しい屈強な緑が選択肢に加わりました。要は、うっすい#3とかG15とか、そんな感じです。

案内の印刷物だと、けろけろけろっぴの緑のような雰囲気でした。それこそこの前ゴルチエに積んだバイカラーの緑の部分に近い色味だったらどうしようかなと届くまで悩んでいました。キャラクターはかわいくなるけど、眼鏡はかわいすぎると使いづらいなと。そんな不安は吹き飛びまして、これならむしろアリアーテよりも落ち着いた感じなので、見本染色で度付きも積極採用かなと思っています。

あと、赤系も豊富で良かったです。

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