ヴィンテージでは無いですね。チタンの雄、シャルマンのラインアートです。いまもホームページに掲載されているモデルでした。廃業店舗の引き取りで、ずっと保持していました。正月のあれこれの中に、親戚への販売が含まれていまして、そこでの販売分です。
これを紹介しておこうと思ったのは、自戒も込みなんですけど、プロダクトデザインとはこういうことなんだなと。じんわり染みたからです。ブルバキもどうたらこうたら講釈垂れておりますが、あくまでもファッションプロダクトデザインだぞと。カジュアルプロダクトデザインだぞと、そういう話です。さっきの表現を用いれば、柔らかいプロダクトデザインだぞと、そういうことです。
まずフロント。一口にチタンといっても、処理なのか配合なのか様々な味付けがありまして、これはフロントが硬質なチタン、テンプルはエクセレンスチタンと名乗っていますが、バネ性を帯びたチタンです。フロントで見どころなのは、ブリッジと智の太さですね。特に智はレンズ留めからテンプルまで一体形成ですから、ここまで大きいと切削で作るんですかね?とにかく堅牢さというものが形となっています。ちなみに、鼻パッドのアームは程よく柔らかく、フィッティングの為の操作がしやすいです。たまに異常に堅く、堅牢なのは良いけど顔に合わせられない…というフレームもあります。
そして、光学的にも素晴らしいのが、テンプルの反りに対してフロントがビクともしないことです。素材をかえていることと、そのゴツさが効いています。つまり、どなたが掛けようが、レンズ面は眼球に対して正しくセッティング出来ます。お持ち込みのフレームの中で困るのが、フロントからテンプルまで同じ素材で、全部同じくらいビヨンビヨンなフレームです。ビヨンビヨンなフレームの場合、ある程度顔にしっかりと保持するために側頭幅の開きを少なめにします。しかしそうしますとかけた時に、ブリッジとテンプルの弾力性が同じ場合、同じように共に反ります。その反りが時として厄介で、強度数や累進レンズに時に見え具合の違和感に繋がります。特に遠方視で違和感が出るでしょうね。
試しに140ミリ→180ミリくらいまで広げています。フロント面は逆反りしていません。このとき、フィッティングする側が気になるのは、赤の矢印のように先セルが戻せるかどうかです。開いてこめかみへの干渉を逃した分、閉じないといけません。
認定眼鏡士の「フィッティングどうしてます?」立ち話あるあるですが、形状記憶性の高いフレームの場合、耳への添わせが問題になります。結局、フレームがどんなに柔らかく、掛け心地が良かろうが、耳に沿って接地されていなければ顔から落ちます。眼鏡は摩擦で顔に踏みとどまっている為です。
上の写真を確認しますと、先セル部分で素材が変わっています。多分ここも普通のチタンです。形状記憶性が抑えめにしてあり、耳への添わせ、曲げ、耳の裏の凹みに合わせた形状への変更がしやすい配慮がしてあります。触れば触るほど唸ります。
テンプルが平打ちの線を縦に3本束ねているのもミソですね。上からの力に強くて、フレームが上下に捻れにくくなっています。人間は左右の眼球運動は得意ですが、上下は苦手ですし、そもそも片方が上、もう片方が下というようには動きません。眼鏡が上下に捻れるということは、そういう無理な眼球運動を要求することに繋がります。度数が強い方は、ちょっと眼鏡を捻ると眼が追いつかず像が分離することが確認出来ます。上下はそれくらい弱いです。
ざっと、こんな感じです。どんな顔幅だろうが、どんな度数だろうが、どんなタイプのレンズだろうがへっちゃらで、こちら側もフィッティングの操作で困ることが無くて、チタンの質感と堅牢さがそのまま見た目に表現されていてカッコいいという、プロダクトデザインとはこういうことです!の塊のような眼鏡でした。感動しました。でもヴィンテージと無垢を売ります。