カテゴリー:メガネのはなし

オプトメトリー
メガネのはなし

18.06.20

以前にも紹介した本。買って満足するに留まっていましたので、今日ようやく読みました。

この前の「名眼50年のあゆみ」や、キクチメガネ2代目社長の追悼集「風雪70年 森文雄 追悼集」から、ようやく小川守三さんが、日本人初のオプトメトリーであることが理解できました。アメリカでオプトメトリストの資格を取ったのち、日本に戻ったタイミングで開業しています。それが1923年のことです。内務省衛生局長の紹介を得て、当時の眼科の諸大家を歴訪しているそうです。認定眼鏡士が未だに国家資格にならない現代を鑑みますと、視力矯正が国家プロジェクトだったということで、羨ましい限りです。

当初は、眼病は眼科医で屈折矯正はオプトメトリストに振り分ける目論見があったようです。眼科という大分類の中に、眼病専門の眼科医と、屈折矯正専門のオプトメトリストという中分類があるというイメージです。あくまでも、前提としてどちらも医者であるべきという考えでしょう。それが、現代の眼科とメガネ屋という構造になったのは、処方はメガネという形であり、最後は物が重要だからだと考えられます。

個人的に面白いと感じた箇所としては、写真のページです。昭和40年(1965年)の回想文でして、眼位異常を矯正した記述があります。おそらく、上下斜位(本文中では潜伏斜視)にもアプローチを掛けていることから、プリズムの処方をしたと考えられます。矯正に関して、現代と遜色ない理論が整っていたことが伺えます。

自由研究
メガネのはなし

18.06.17

書籍に目を通しています。この前の「名眼50年のあゆみ」より。70年代の書籍です。

特に興味深かったのは、冒頭の昭和12年(1937年)の決議です。そもそもメガネのイメージがネガティブであったり、ファッションの観点が薄いということもあり、デザインが乏しいと考えておりました。それも要因として考えられますが、第二次世界大戦前に、物資や人員をメガネに当てないように単純化する動きがあったわけですね。この動きというのが、日本だけだったのか、他国にも同じような動きがあったのかは気になるところです。

クリップオン
メガネのはなし

18.06.02

久々に作りました。クリップオンです。

ブルバキの黎明期にはお世話になりましたが、昨年はほとんど作らずでした。色々理由はありますが、一つはクリップフレームの品質の安定しなさがありました。とりあえず、今年の感じは良さそうです。

偏光板ではなくて、プラの1.60で染色をして作りました。その変更で、結構作りが良く見えるようになったのは良かったです。CR-39の場合は、レンズ生地に粘り気がなく割れやすいので、穴を開ける場合は使用不可です。脆くて、捻れると割と簡単に亀裂が入ります。屈折率1.60の平面を使用します。ですからその変更で、ちょっと値段は高くつきます。

仕上げが綺麗なフレームですと、クリップフレームの仕上げの荒さが目立ちますが、USSであれば、むしろそれが合わさって非常にカッコよく仕上がるのも発見でした。

サービスで、マイナスネジに変更です。メガネフレームが舶来品ですので。カルティエのサントスをイメージしております。

検眼の歴史
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18.04.06

「検眼の歴史 丸ビル四十年 小川守三著 東京眼鏡院出版部 1967年」

流布している年代の判定法の信頼度をあげようと思っていまして、この手の本をぼちぼち集めています。当時の検眼や屈折異常の把握、それのアプローチを知ることで、それがメガネフレームにどの程度影響を与えているか判断できると考えています。

やっぱりそうだったんだなぁと思ったのが、冒頭の写真です。31ページのメガネ枠について言及している部分。

PDとFPDを一致させることを意図した記述があります。(目と目の距離と、フレームのレンズの中心間距離を合わせる)

とくに、ちょっと前にブログにも書きましたが、パリジャン型(今で言うウェリントン)の44ミリのカットレンズがあったことと、この文章の手順から察するに、PDとFPDを合わせてフレーム選びを行い、その後にカットレンズを嵌め込んで販売をすることもあったのでしょうね。

最新のメガネ
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18.03.15

レンズ交換です。最新、ハイテク系です。ネジ無しの構造です。

この手のフレームも、割と好きです。こういう宣言は、ヴィンテージショップとしてはダメなんでしょうけど。当然、持ち込みはあまり無くて触るのは久々です。有難いです。

ナイロールの止め方が非常に面白いです。通常は単眼ずつ糸で吊りますが、これはリムの端から端まで一本のナイロンの糸でとめています。途中でブリッジ部分に絡ませて、力が加わるようにしており、糸が正面からは見えにくい工夫も良いです。

ただ、レンズが大きい、または糸が短い場合は要注意ですね。今回も、初期状態はキツくレンズが入っていました。そうしますと端と端が引っ張られて、弓のようにしなってしまいます。スポーツグラスのような、あたかもハイカーブフレームのようになってしまいます。

度数が弱い、斜位等々が少なければ問題は生じにくいですが、逆の場合は、まあまあ使いづらいメガネに仕上がってしまいます。特に、近方で視線移動がしにくく、手元の作業に集中出来ないみたいなことが起こると予測されます。

フレームはβチタンで軽く、しなやかです。フィッティングの観点からは、メガネ屋の店員に依存せずに、ぼちぼちの掛け心地が誰でも得られる・提供出来るようになっています。ですが、光学性能を引き出す際には、古いフレームと違ってヒトに依存してしまう欠点もあります。結局は別の部分で、ちゃんと気に掛けないといいメガネにはならない訳です。

厚み指定かけずに、限界まで薄くしています。機械で溝が彫れないので、手で仕上げました。4割くらいは軽く出来たかと。テンプルの開閉、着脱で一切フロントがしならないので、大丈夫そうと判断してそのようにしております。

超撥水のコーティングにしたこともあり、軽くて水に浮きます。すごい時代ですね。

 

WWD
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18.03.09

福井めがね工業が、イタリアのルックスオティカに買収されました。なんだかんだ、それを記録しておく暇も無かったですね。WWDの記事でした。

日本のメガネもどうなっちゃうんでしょうね。

その差は6年
メガネのはなし

18.02.12

アンアンの82年と88年。メガネ特集だったので。

内容が濃すぎる。つまり面白いです。また、提案がやや非現実的です。でもそれは良いことだと感じます。自身で現実に落とし込む作業をする、さらにはその作業の前にあれこれ構想する訳ですから、オリジナリティが生まれ出そうな余白が残してあります。

82年の段階では、まだまだメガネが、ネガティブの塊のような扱いです。そもそも表紙の女性が、メガネ特集なのにメガネを掛けていない…。

88年は、メガネがオシャレなアイテムの一員になりかかっている文言です。それを煽り気味に「時代だ!」と、強く宣言しています。調べてみると、表紙のサングラスはカトラーアンドグロスでした。

カッコいいです。

チテックス再び
メガネのはなし

18.01.23

チテックスネタです。他のヴィンテージ眼鏡界隈では相手にもされないフレームです。

前も書きましたが、Titex(チテックス)-BのFB880Tが、いま在庫であります。

ニコンブランドの元、フルチタンのフレームの開発が70年代末から進められました。81年にNikonブランドでTitex-Aの品名で販売されました。その時の品番がFB440Tです。引用した博士論文では、チテックスBはFB481Tで同時に販売されたと記載があり、在庫の880Tは、80年代の後期かなと考えていました。

ですが、今日手に入れた82年2月の宣伝用の新聞に拠れば、440Tと880Tが同時に並べられています。単純に、発売順に品番を振っていたというよりは、桁数に意味を持たせて管理していた形跡があります。在庫のチテックスが、初期型に限りなく近そうということが掴めるだけでも、かなり重要な資料と言えます。

古いレンズ
メガネのはなし

18.01.13

古いレンズを沢山預かりました。実際に嵌め込むことは少ないと思いますが、当時のパッケージが中々カッコいいので展示しております。

その中から1つ。もちろんパッケージのデザインも良い訳ですが、それよりも注目したいのは、レンズ袋右上のスタンプです。

「パリジャン 44ミリ」

と記載があります。パリジャンとは、レンズの形の名称です。現代の日本ではウェリントンと呼びますが、60年代くらいまで、パリジャンの名称も使われていた様子です。手持ちの資料でスッと該当箇所が出なかったので、また出たら載せます。

例えば、ガラスの丸の50ミリや45ミリで薬研がつけてあり、そのままフレームに嵌め込むだけというパターンは、比較的よく見かけます。ですが、ウェリントンの加工済みレンズは初めて見ました。光学中心を合わせるとかは出来ないので、現代だと100均とかにあるような既成老眼に近い販売も、店頭でしていたと想像出来ます。袋には、左右同じ度数でセット組されていますからね。

レンズと同じ年代であろうと推測されるフレームを並べてみました。サイズは44◻︎20です。確かに、手でサイズを整えれば入りそうです。

また、これや他のパッケージを見ていて面白いのは、レンズの卸商社の独自のパッケージというところでしょうか。

今は、大体工場から直です。ですし、パラメータ表記が主で、デザインは無いか控えめです。

 

ちゃんとあります
メガネのはなし

18.01.10

レンズに水平線が入っているのは、片方だけで良かったです。つい、勢いで両方とも水平を取っています。

お持ち込み、フランスのサーモントフレームでした。同時代の日本やドイツと比べて、線が細く、やや女っぽさがあります。厳つさが抑えめで上品な感じです。眉のブラウンカラーもいい感じです。

元々、デモレンズ無しでした。それを削ってまで水平を取ったのは理由があります。今回は、この古のフレームに最新のレンズを搭載する話が出まして、その為の準備でした。ここまでが、度付きにする為の前フリということです。

インディヴィジュアルレンズとか、業界内で言われております。

そもそも単焦点であろうと、度数を測って自分に合った度数を処方してもらうという点で、安かろうと高かろうとメガネはオーダーメイドです。

色々な物が、オーダーメイド化で差別化を図ろうとしておりますが、メガネはそもそもそんな感じなので、さあどうしよう?となった時に、出始めたのがインディヴィジュアルレンズです。

簡単に言ってしまえば、レンズに、顔とフレームの情報を畳み込み、より最適なレンズに仕上げるという物です。フレームの情報だけのグレードもありますし、掛けた時の顔の情報までも要求するグレードもあります。単焦点でも、累進でもあります。今回は単焦点です。

単焦点の場合でも、左右別個に設計されたレンズをそれぞれの目に当てるのでは無く、左右の度数を鑑みて、左右それぞれの像のバランスを取ったレンズが使われることになります。それによって、脳で1つの像に融像しやすくなり、使いやすいと感じるわけです。

どうなんだろう?と、思っていましたが、いいみたいですね。この前聞いた話ですと、度数無しでも効果があるとか。度なしのレンズでも、生地の厚みからプリズムは発生します。それ故、使いにくさは微弱ながら出ます。それも取り除くことが出来るようです。

ただ、今回は顔の情報を畳み込んで作るのはやめました。考えた理由は2つです。

・パラメータが増えることの副作用

・今回のフレームの古さ

基本的に、パラメータが増えるのは嫌なんです。消費の立場からすれば、選択肢が増えて楽しいかもしれません。ですが、パラメータが増えれば、最適さが崩れる要因も多いということです。イメージとしては、点では無く、円の方が領域として幅があるので、領域からはみ出しにくいという感じです。パラメータが多ければ点に近く、少なければ円に近いです。レンズの選定の際に、シャープさがどれくらい必要なのか考えることが大事だなと思いました。

今回のフレームは、もちろん合金です。最新のメガネの様な、βチタンで形状記憶性があるようなフレームではありません。鼻パッドや、フレームの傾斜も日本人向けでは無いです。プレフィッティングをしましたが、お渡しの時にそれなりに修正が入るだろうと思います。ですから、今回のケースでは、フレームのフロントサイズとレンズサイズを畳み込んで、両眼で設計しました。顔とか、フレームの形状までは組み込んでいません。

レンズの収差等々の、光学性能に着目してダラダラ書きましたが、両眼設計の利点は物理的にも出ます。より薄くなります。

まだ加工前ですが、新年早々仕上がりが楽しみです。自分も使ってみて、人体実験しないとですね。

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