カテゴリー:メガネのはなし

チテックス再び
メガネのはなし

18.01.23

チテックスネタです。他のヴィンテージ眼鏡界隈では相手にもされないフレームです。

前も書きましたが、Titex(チテックス)-BのFB880Tが、いま在庫であります。

ニコンブランドの元、フルチタンのフレームの開発が70年代末から進められました。81年にNikonブランドでTitex-Aの品名で販売されました。その時の品番がFB440Tです。引用した博士論文では、チテックスBはFB481Tで同時に販売されたと記載があり、在庫の880Tは、80年代の後期かなと考えていました。

ですが、今日手に入れた82年2月の宣伝用の新聞に拠れば、440Tと880Tが同時に並べられています。単純に、発売順に品番を振っていたというよりは、桁数に意味を持たせて管理していた形跡があります。在庫のチテックスが、初期型に限りなく近そうということが掴めるだけでも、かなり重要な資料と言えます。

古いレンズ
メガネのはなし

18.01.13

古いレンズを沢山預かりました。実際に嵌め込むことは少ないと思いますが、当時のパッケージが中々カッコいいので展示しております。

その中から1つ。もちろんパッケージのデザインも良い訳ですが、それよりも注目したいのは、レンズ袋右上のスタンプです。

「パリジャン 44ミリ」

と記載があります。パリジャンとは、レンズの形の名称です。現代の日本ではウェリントンと呼びますが、60年代くらいまで、パリジャンの名称も使われていた様子です。手持ちの資料でスッと該当箇所が出なかったので、また出たら載せます。

例えば、ガラスの丸の50ミリや45ミリで薬研がつけてあり、そのままフレームに嵌め込むだけというパターンは、比較的よく見かけます。ですが、ウェリントンの加工済みレンズは初めて見ました。光学中心を合わせるとかは出来ないので、現代だと100均とかにあるような既成老眼に近い販売も、店頭でしていたと想像出来ます。袋には、左右同じ度数でセット組されていますからね。

レンズと同じ年代であろうと推測されるフレームを並べてみました。サイズは44◻︎20です。確かに、手でサイズを整えれば入りそうです。

また、これや他のパッケージを見ていて面白いのは、レンズの卸商社の独自のパッケージというところでしょうか。

今は、大体工場から直です。ですし、パラメータ表記が主で、デザインは無いか控えめです。

 

ちゃんとあります
メガネのはなし

18.01.10

レンズに水平線が入っているのは、片方だけで良かったです。つい、勢いで両方とも水平を取っています。

お持ち込み、フランスのサーモントフレームでした。同時代の日本やドイツと比べて、線が細く、やや女っぽさがあります。厳つさが抑えめで上品な感じです。眉のブラウンカラーもいい感じです。

元々、デモレンズ無しでした。それを削ってまで水平を取ったのは理由があります。今回は、この古のフレームに最新のレンズを搭載する話が出まして、その為の準備でした。ここまでが、度付きにする為の前フリということです。

インディヴィジュアルレンズとか、業界内で言われております。

そもそも単焦点であろうと、度数を測って自分に合った度数を処方してもらうという点で、安かろうと高かろうとメガネはオーダーメイドです。

色々な物が、オーダーメイド化で差別化を図ろうとしておりますが、メガネはそもそもそんな感じなので、さあどうしよう?となった時に、出始めたのがインディヴィジュアルレンズです。

簡単に言ってしまえば、レンズに、顔とフレームの情報を畳み込み、より最適なレンズに仕上げるという物です。フレームの情報だけのグレードもありますし、掛けた時の顔の情報までも要求するグレードもあります。単焦点でも、累進でもあります。今回は単焦点です。

単焦点の場合でも、左右別個に設計されたレンズをそれぞれの目に当てるのでは無く、左右の度数を鑑みて、左右それぞれの像のバランスを取ったレンズが使われることになります。それによって、脳で1つの像に融像しやすくなり、使いやすいと感じるわけです。

どうなんだろう?と、思っていましたが、いいみたいですね。この前聞いた話ですと、度数無しでも効果があるとか。度なしのレンズでも、生地の厚みからプリズムは発生します。それ故、使いにくさは微弱ながら出ます。それも取り除くことが出来るようです。

ただ、今回は顔の情報を畳み込んで作るのはやめました。考えた理由は2つです。

・パラメータが増えることの副作用

・今回のフレームの古さ

基本的に、パラメータが増えるのは嫌なんです。消費の立場からすれば、選択肢が増えて楽しいかもしれません。ですが、パラメータが増えれば、最適さが崩れる要因も多いということです。イメージとしては、点では無く、円の方が領域として幅があるので、領域からはみ出しにくいという感じです。パラメータが多ければ点に近く、少なければ円に近いです。レンズの選定の際に、シャープさがどれくらい必要なのか考えることが大事だなと思いました。

今回のフレームは、もちろん合金です。最新のメガネの様な、βチタンで形状記憶性があるようなフレームではありません。鼻パッドや、フレームの傾斜も日本人向けでは無いです。プレフィッティングをしましたが、お渡しの時にそれなりに修正が入るだろうと思います。ですから、今回のケースでは、フレームのフロントサイズとレンズサイズを畳み込んで、両眼で設計しました。顔とか、フレームの形状までは組み込んでいません。

レンズの収差等々の、光学性能に着目してダラダラ書きましたが、両眼設計の利点は物理的にも出ます。より薄くなります。

まだ加工前ですが、新年早々仕上がりが楽しみです。自分も使ってみて、人体実験しないとですね。

カットリム
メガネのはなし

17.11.05

いつか書いた、カットリムのフレームが入りました。ローデンです。

レンズを囲うリム線が、扁平ではなくて三角形で凸です。リムにボリュームがあって、多少度数が強くてもレンズがはみ出しにくいです。

サーモントのメガネは野暮ったくなりがちですが、これは別格でした。

参考値
メガネのはなし

17.10.31

思いついたので何となく書きとめておきます。内容は、高校の三角比の導入のところくらいの話です。

レンズサイズに関連しての話です。

ところで50年代周辺のメガネは、どれくらいテンプルを開けばいいのか、はたまたどれくらい開くことが、フレームを見た段階で予想されるのか。感覚で、いつもヤスリでバチっと開いていましたが、簡単なことですし数値として出してみました。

参考サイズは、44◽︎22です。値段が付きやすいサイズでしょうね。メガネ専門では無い場合は、このボクシング表記ではなく、フロント横幅125ミリ〜130ミリ程度という表記になっているのではないでしょうか?レンズ端同士を結ぶ距離が110ミリ、智の部分がそれぞれおおよそ10ミリはみ出して合計130ミリという感じでしょう。

テンプルがフロントに対して垂直に伸びている場合、耳にかける部分同士の距離は当然130ミリです。では130ミリで幅は足りるのかと申しますと、まず足らないです。よっぽど顔の小さい女性でも、側頭幅140ミリくらいでしょうね。

日本人の男の場合は160ミリくらいが、側頭幅の平均です。つまり、開き幅が30ミリ足りません。では、その幅を稼ぐにはどれくらい(角度)開くのかを調べてみます。

鼻梁に対して、顔幅が左右対称と仮定します。あとはコサインの定義だけでわかります。結果は、片手およそ8°でした。ただし、テンプルの智から耳の頂点までの長さ(曲げる手前のポイントまで)は、一般的な110ミリとして用いました。同じ条件で、側頭幅を170ミリと仮定しますと、おおよそ10°という結果でした。だいたい、10°くらい開いといたら良いってことですね。

ただし、これは頭部形状を無視した理想状態の話です。実際は、こめかみが張っていて、側頭幅よりも広げてあげないとテンプルが顔に干渉します。より角度をつけて広げないと、綺麗に顔に掛からないです。分度器の10°を見ながらこれを綴っていますが、私の実感としては、毎度12°〜15°くらい開いている気もします。

その開いているメガネが、自分なりに納得出来るかどうかという話です。目に対してジャストが好みなのか、ある程度まっすぐなテンプルで綺麗に掛かっている方が好きなのか、どっちが正しいということも無いと思います。フロントと顔幅のバランスももちろんあります。美観だけではなく、光学的な要素も加味すると、もっとなんとも言えない状況になります。

メガネがどのように掛かっているのか仕組みが分かるにつれて、レンズが大きくなり、フロントで側頭幅分を稼ごうとした時代の流れがあり、それはレンズの素材の進歩とシンクロしていたと思われます。今は逆に、クラシック調の時代です。レンズを小さくし、削ったフロントの全長を補うべく、βチタンのような、しなやかな素材で掛け心地をカバーしています。心地というのがミソで、メガネを頭部に留めるには、いくらしなやかな素材のフレームでもフィッティングが必要です。

ちょっと話が逸れましたが、それぞれのサイズ感にそれぞれの良さがあります。どういう風に自分のイメージをもっていくか、それによって変わると思います。

くるくる目玉くんスタンド
メガネのはなし

17.09.11

全然役に立たない視力表のついた、旧タイプの看板を手に入れたのですが、目が死んでいます。回りません…。青の縁取りが口になっていてかわいいですが、目が死んでいます。

モーターなら、簡単に直るのかなと思っていましたが、モーターの形があんまり見たことがない形状で、なおかつ低速にするギヤボックスが開いちゃってギヤが無い様子。

とりあえず、目玉の位置を正位にして、可愛く左上方視にしておきました。

 

パーツからの推測
メガネのはなし

17.06.15

さっきも載せたメガネです。フランスメーカーのヴィンテージメガネです。

70年代のライセンスフレームで、スポルディングがあります。日本のメーカーが、アメリカブランドのライセンスを、フランスの製造に出して作らせていたという、ちょっと面白い感じです。理由は様々考えられますが、ここではやめます。

スパルタ智の感じを比較すると、おそらく同じ製造では無いかなと考えています。

70年代は、良いメガネ=舶来物(フランス、ドイツ)という印象だったのでしょうね。

非丸メガネ
メガネのはなし

17.06.15

そういえばですが。

メタルの丸メガネ流行ってますね。昨年くらいから、ぼちぼち見かけるようになりました。

ヴィンテージですと、私の在庫にはセルの丸メガネが、あと数本あるくらいでしょうか。むしろ、丸では無い物が多いです。あって、楕円風ですかね。

70年代、フランス。14金の金張りです。

まん丸ですと、抜け感が出過ぎますからね。それを良しと見做しているだけであって、どの時代も、抜け感があるという感覚は共通にあるのかもしれませんね。どうも、倉庫を漁っていても、まん丸とかに遭遇することは少ないです。

曖昧な、どの名称にも属さないレンズシェイプのメガネも良いもんですよ。顔の各パーツに馴染むようにデザインされていたりします。その方が、丸とかよりも、掛けたら顔に馴染んで自然だったりします。

おもしろメガネ
メガネのはなし

17.06.01

いまの、オーソドックスなメガネが一番カッコいいという価値観をひっくり返そうと思っておりません。ひっくり返せると、一度も考えたことはありません。では、なぜおもしろメガネに流れたのか?という話をつらつらと書きます。

ブルバキのメガネは、70年代くらいのメガネが多く、今の価値観からすると、おもしろメガネが多いとは思います。おもしろメガネだけでは無いですが。クセはあると思います。

もちろん、私もカッコいいメガネからハマった人間です。ゴツいセル枠が流行っていた時代でしたね。そして、おもしろメガネに流れた人間です。

例えば、美術館に行くとします。ある作品を見て「綺麗だな。美しいな。」と、感じるとします。美術館にいるときは、綺麗さ美しさを大事にしているのに、一歩外へ出てしまうと、カッコ良さを大事にしがちです。今はカワイイの時代ですから、カワイイの方が何となく伝わるかもしれません。ここに、深い分断を感じている訳です。

何を価値のトップにするか、割と局所的に、その場その場で変わる気がします。それが悪いと思っていません。ただ、出来るだけ多くの事に対して、同じ価値観で判断したいなと思います。それを積み重ねますと、共通項が見つかりやすくなる気がするんです。私は気づいたらメガネの道を進んでいました。メガネ人ならば、まずはメガネで、その価値観の分断を接続してみようと、おもしろメガネに走りました。

そもそも一般には、綺麗さ・美しさ・カッコ良さは連結して感じられるのでは?とも考えます。つまり、そこが分断している時点で、やっぱり私はひねくれていそうです。それに、おもしろメガネと表現しましたが、当時はバッキバキのカッコいいメガネとして扱われていたかもしれません。おもしろメガネとみなすその時点で、今のカッコいいメガネを価値の基準としている気もしています。

価値とか考え始めますとキリがないので、戻します。単純に、綺麗とか面白いとか、物を見て気持ちが「わぁっ!」となったそのままに、メガネを掛けてみたいと思わせたのが、ヴィンテージのメガネだったいう感じです。

ザイロナイト再び
メガネのはなし

17.05.26

写真のレンズは、昭和17年頃のレンズです。左半分の字が解読出来ませんが、西暦で1942年です。日本のメガネ屋から出てきています。古いメガネ屋さんに行くと、この年代のAOの金張りフレームとかも出てきます。おそらく、フレームとなると販売してくれませんが…。レンズもフレームも、舶来物をすでに使っていたことが窺われます。

一般にはプラ枠の丸がメインで、その場合はレンズをそのまま嵌め込んでいたようです。たまに50玉(ゴレイダマ)という呼称を耳にします。PDを無視して度数だけ合わせていたのでしょうか?2枚1組で袋に入っている場合もあるので、50ミリの枠に50ミリのレンズを嵌め込んで終わりだったのかもしれません。その辺りの記載のある資料を探し中です。

 

パッケージデザインがカッコいいので集めていましたが、初めて重要なキーワードに出くわしました。

「ZYLONITE」

そうです、ザイロナイトです。

昔の記事①(アメリカンヴィンテージの素材)

昔の記事②(ザイル第2章)

そもそも、プラスチックのレンズが普及し始めるのは70年代です。70年代の暮らしの手帖のメガネの製品テスト記事を見ましても、一般のレンズとして、ガラスレンズを指して記載があります。おそらく80年代初頭の教本を見ても、今後はプラスチックレンズが台頭するでしょう的な文言が記載されているくらいです。

あのパッケージの、上の帯にある ZYLONITE と、下の LENSE の記載は関係ないということでしょうか?だとしたら、なぜに記載があるのでしょうか?

ただ、プラスチックレンズの登場自体は、1942年のアメリカまで遡ることが出来ます。アメリカの Pittsburgh Plate Glass Co. が、今でも屈折率1.50の素材として知られるCR-39を開発しております。たまたま1942年という一致をしてしまいました。

ただ、CR-39とザイロナイトは、そもそも素材が違います。結局このパッケージと出会ってしまったが為に、また違った角度から、ザイロナイトについての謎が深まってしまいました。

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