カテゴリー:メガネのはなし

素材について
メガネのはなし

17.04.27

アセテートかセルロイドかみたいな話があります。ちょっとメガネに興味を持ってくださった方なら、なんとなく聞いたことがあると思います。プラチック方面は懐古的だなと思っていましたら、メタルもそんな感じになってきました。

このブログでも書いているサンプラチナ(SPM)素材のメガネが、現行でも見かけるようになりました。チタンかサンプラチナか?という話が出始めそうです。

古い素材だから良いとか、なんだかなぁと思います。ヴィンテージのメガネ屋ですが、古いから自動的に良いとは判断しません。業界の努力・進歩は、元々の素材の欠点を補う・超えるために向けられています。チタンのフレームが、81年に日本で初めて生まれるまでをまとめた博士論文が手元にありますが、今でこそチタンが普及したというだけであって、簡単に作ることができるという訳ではないです。

あれこれ申し上げましたが、なんだかんだサンプラチナは良い素材ですよ。当店で扱っているメガネだけでは無く、色々なメガネを見比べて見ると面白いと思います。ただし、金属を鍛え上げ、メッキをせず、鳥肌が立つくらい透き通るような仕上げを施し、この素材ならではの良さを最大限に引き出しているメガネは少ないとは思います。

フィッティングについて
メガネのはなし

17.04.24

メガネのフィッティングについて。基本的には、レンズがガラス素材で重いとか、重量過多や重量バランスの崩れ、フィッティングする為の可動余地がない、耳の掛ける部分が細い、頭部の大きさとメガネの大きさが合っていない等々の条件が無い限りは、大抵メガネはそこそこ下がりにくい(汗かくと別)という話です。

 

いまは、ファッションの領域でメガネを販売しております。お客さんとしては、ファッションに詳しい方が多いです。そうしますと、大体メガネを買う場所(と買う商品)が一致してきます。

その方々のフィッティング不良が目立ちます。業界の不備は、業界全体でカバーし合えば良いと考えておりますので、他所のメガネでも、関係なくこちらで再フィッティングをします。そもそも、掛けた瞬間からずり落ちるようなメガネであるのにもかかわらず、なぜ不満として上がってこないのか?これが不思議でした。

ところが最近、謎が解けました。オシャレなゾーンのメガネは、下がってもしょうがないという認識があるようです。お客さんにそう思わせてしまっている時点で、心が痛いです。

おそらく、ここからは私の推測ですが、機能性を重視した9が沢山のメガネや、柔らかさを売りにした量販のメガネの登場に、その原因が間接的にあるのでは無いでしょうか?メガネを下がりにくくさせるのは、私どもの技量ではなく、商品のスペック・カテゴリー・種類などの、物に従属した原因であると予期せず思わせてしまっているのでしょうね。逆にファッション性を追求したメガネは、掛け心地が悪くてもしょうがないという認識がありそうです。そして、お店側もそう思ってフィティングを怠っている感じがします。

 

実際は、メガネはまあまあ下がりにくく出来ますよ。どんなメガネでも、

①顔幅に開きを合わせ

②鼻パッドを適切に当て

③耳後ろに正しく添わせる

ことで、割と下がらなくなります。①〜③の順番でフィッティングを行うことはとても重要です。①がダメなら、②③で頑張っても0点です。

今まで店頭で診てきた感じですと、①がダメな例が大半で、だからこそ洗浄でお預かりした瞬間に

「このメガネめちゃくちゃ下がりますよね?」

と、瞬時に言えるわけです。柔らかくて掛け心地の良さを謳ったメガネ、例えば超弾性樹脂やβチタンのメガネでも、①〜③が上手くいっていないと下がります。

フィッティングが上手く出来ているのか簡易的にチェックする方法としましては、

・まずメガネをかけて

・レンズ横の可動部(腕を畳む部分)を両手で持ち

・真っ直ぐ軽めに引っ張る

この動作で何となく分かります。目からメガネを離す感じです。そのときに耳の後ろに粘りがあれば良好です。メガネが引っ張り方向とは逆に、引き戻される感覚です。つまり、メガネは左右からの締め付け・圧迫で止めるのではなく、耳での摩擦で止められているのが理想的ということです。こちら側の人間でもそれを知らずに、オシャレメガネは下がってもしょうがないという先入観から、①が狭すぎて下がるケースが多いです。

こんにゃくゼリーを想起して下さい。ケースを押すとゼリーが出ますよね。ゼリーが頭で、ケースがメガネにあたります。それが生じています。

今の状況では、メガネがファッションの中でイケてない物になってしまうと、掛ける人がガクッと減りそうなので書きました。危惧しております。煩わしくても、オシャレだからちょっと無理して掛けているというのは、やはり悲しいです。それにメガネの方が、コンタクトに比べて光学的に優位なことが沢山あります。ですから、どんな入り方でも私は構わないと思っています。ファッションからメガネを好きになることは、例え伊達でも等しく良いことだと思っています。掛けることに馴れて下されば、歳を重ねて、いざ度入りメガネ、いざ老眼となったときに、すんなり馴染むと思います。嫌いになるのだけは止めたいですね。

長くなりました。フィティングで何か気になりましたら、是非お越しください。

リムの種類
メガネのはなし

17.03.11

細かい話。1920年代のメガネの写真です。ヴィンテージメガネの好きな方は、掘りまくると、この辺りに大体たどり着きます。

正面から見た感じだと分かりませんが、一番上と三番目のメガネは、カットリムと呼ばれるリムの形状です。昨今のメガネで、敢えてカットリムをすることが無いので、多くの方は新品でも見たことが無いかもしれません。

そもそもですが、リムとはレンズを囲む部分を指します。通常は、内側がレンズを止めるために薬研型に凹み、外側は平らです。

ですが、カットリムの場合は、リムの外側も薬研型に尖っています。リム自体に厚みがあります。もちろん、デザインの為でもあるのでしょう。ですが、強度枠という呼び方もありまして、強い度数のレンズの、ふち厚が目立ちにくいようにする為に誕生したとも考えられます。

通常のリムを引くのと違い、形を作ってから内側の薬研を切削する(カット)します。作るのに手間がかかりますので、あんまり見ないです。写真を撮りたかったですが、私のストックにもカットリムはありませんでした。

メガネ屋さんを覗くときは、よければ気にしてみてください。なかなか綺麗です。

ローダフレックス
メガネのはなし

17.03.08

ローデンストックのネタ続き。

ローダフレックスというバネ蝶番があります。スライド式のバネ蝶番でして、バネのテンションのかかり方がしなやかです。テンプル開閉の時、特に閉じる時ですが、バネの力が一気に抜けないので、パチンと閉じません。おかげでバネ切れもしにくい、良い蝶番です。

スライドバネ蝶番ですが、昨今は海外製のメガネにもついております。ですが、スライドするケース部分に高い精度がいるため、海外製でも、スライドバネ蝶番部分のパーツ供給は日本です。

一般的にバネ蝶番となりますと、箱バネが多いですが、そんなに見ごたえのあるものではないでしょうね。ローダフレックスのようなスライドバネ蝶番の場合は、日本の技術が込められているので嬉しくなります。

語源
メガネのはなし

17.02.20

アモール型というメガネがあります。

(上はナイロール、下がアモール)

写真のメガネはヴィンテージですが、現代のメガネにおいても、2007年頃からの黒ぶちブームより続いているクラシック風味のメガネの新提案として出始めています。

クラシック風味の初期はアメリカの50年代〜60年代をデザインソースにしている感じでして、2010年入ってからの、メタルとセルのコンビのメガネは、当時のポパイ的な80年代のアイビーテイストを織り交ぜたような感じがしております。そろそろ、トラッドで抜け感のあるメガネが落ち着いてくるのか、アモールのようなフランス等々のヨーロッパ系の華やかなメガネに振れていくのか、楽しみなところです。

アモールに関してですと、2015年くらいにトムフォードが出していたような気がしております。2016年にはイッセイミヤケのライセンスが再興しておりまして、アモールだらけでした。

メガネの歴史としましては、アモールが先で1950年代から存在し、ナイロールが対抗する形で1955年に登場しております。実際にナイロールが流行るのには、1970年代のプラスチックレンズの登場を待たなくてはいけなかったようです。

前振りが長いですが、アモールの語源が今日ようやくわかり、それについて書きます。

フランス語の amortisseur から生まれた言葉だそうです。ショックアブソーバーという意味です。

日本では安全枠という呼称もありまして、レンズが割れにくい欠けにくいという機能面からの命名でした。アモールの由来にも沿った呼称ということでしょうね。

ちょっと前に話題となったアモーレ的な、その活用形かなんかと思っていましたが、アモールはアモーレ感ゼロという結果でした。

(Collectible EYEGLASSES Frederique Crestin-Billet Flammarion  p.187 2004年)

医療の進歩
メガネのはなし

17.01.11

今朝の中日新聞から。1月11日の朝刊。

再生医療も、後10年くらいで一般的になるんでしょうか。光を知覚出来るようになったというのは、驚くべきことですね。

この状況を鑑みますと、ひょっとしたら近視・遠視等々は治せるものとして扱われるようになる世界が到来するかもしれませんね。

ならば、矯正器具としてのメガネは消滅するかもしれませんが、アクセサリーとしてのメガネ(伊達メガネ)は残る気がしております。

ブルバキは、ちゃんとしたメガネ屋です。ですが、伊達メガネも度付きのメガネ同様に捉えております。大歓迎です。それは今述べたようにメガネの本質みたいなものが、実は矯正ということよりもファッションという側面に移行しているような予感と、単純に面白いと思って下さればそれで良いのではという想いからです。


メガネのはなし

17.01.06

メガネ図鑑・その他資料収集も、もちろん趣味です。

年末に買いました。自分へのご褒美的なやつです。閲覧用に店に置いておきます。

告知も兼ねて
メガネのはなし

16.12.22

金銀APC、サンプラチナのメガネを見てくださった方、ありがとうございました。ひょっとしたら年明け1月中頃に、もう一回見て頂ける機会が作れるかもしれません。お楽しみに。その次は、ちょっと期間が空きそうです。

入れ替わったとしても
メガネのはなし

16.12.21

例えば、違う人と中身が入れ替わったとして。前のブログで多分書きましたが、記憶の在り処は問わず、ちゃんと記憶とか意識が連続していたと仮定して。話を続けます。

昨日の話を持ち出せば、表象がお互いに違うとか(脳の中の映像)がありえますので、入れ替わったと感じるのではなく、夢の中だと認識して気づかないままの可能性はありますね。見える世界が違いすぎて、現実と判断出来ないことも考えられますね。そもそも他人と入れ替わる訳がないというツッコミは無しです。

実際、色覚は人それぞれ千差万別であり、ポジとネガくらいの極端な反転は無くとも、ある色を感じる?感じない?の差はあります。細かく調べると、全く同じ色の感じ方の人はいないようです。

ここまで来ますと、逆に悲観的ではないと思います。各人の世界の認識は、ちょっとずつ異なる可能性があるのにも関わらず、違う人同士が共感が出来るということの不思議さが際立つと感じます。

いつの時代も
メガネのはなし

16.12.02

暮らしの手帖 50号 1977年から

この頃から、メタルフレーム=いやらしいですか…。根深いですね。

ちょっと前ですが、私がメガネの基礎を教わった方がその時で64歳くらいでして、その方が20歳くらいの頃のメガネ事情を聞いたことがあります。70年代のメガネの様子ですね。その方の覚えでは、プラスチックばっかり作っていたと言っていました。特にオプチルはよく作ったよねと。

なので、今と事情は似ているのかもしれません。メタルのフレームが一般的には少ないので、珍しくみえるのでしょうかね。良いと思いますけどね。

 

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