カテゴリー:ヴィンテージのメガネ

ネジ頭切り
ヴィンテージのメガネ

19.01.11

ネジに関しては、オリジナルだからといって、特に良いことは無いです。加工する度に、つくづくそう感じています。なので、ちょっとでも弱っているネジがあれば、長く使えるようにするためにも現代の日本のネジを挿しています。頭がプラスになってしまうので、美観の点でマイナスなのは仕方がないことだと考えております。

超音波洗浄して、いつも通りゆっくり回しましたが、一発でネジを舐めました。デッドストックでもこんな感じです。さらに念には念をで、ネジ周辺を温めておくべきだったかなと反省。

今回は、サーモントの中身のリムネジでした。ドリルもニードルも入らないので、ちっさいカッターみたいな物でマイナスの頭を作り直します。割とこれで作る頭も舐めやすいと感じていますので、うまく抜けて本当に安心しました。

これより最悪のケースですと、ネジの頭がポロッと取れる場合ですね。メタルフレームも油断は出来ませんし、届いてからもあれこれやる事は多いです。

バランスがおかしい
ヴィンテージのメガネ

19.01.08

入荷品から。名無しのイギリスフレームです。おそらく作りから60年代。

様々な面白いメガネがありますが、このパターンもなかなかです。ぱっと見、普通ですが至るところでバランスが崩れており、それ故の可愛らしさが爆発しております。メガネもバランスの崩れから生じる可愛らしさが存在します。正月に、親戚の2歳くらいの子供を観察していまして、あの可愛らしさの中枢は手脚の短さかなと考えていたのですが、同時に均整が保たれているだけが良さの全てでは無いなと改めて感じた次第です。

まず、レンズの形がよく見ると凸凹です。単純なボストンとか丸ではなく、やや角ばっています。また、ブリッジが異様に太いです。結果、マスクの様な存在感があり、見れば見るほど出しゃばり感が凄まじいです。一見普通そうに見えて、実は異様というのがメガネでも何でも難しかったりするわけですから、この高度な天邪鬼感が実に堪らないです。

テンプルはしっかりと長さがあり、フロントサイズは小さいながらも、ちゃんと大人用だと推定できます。この写真で掴める特徴としましては、テンプルがフロントと同じ厚みの生地で作られています。それは全体的にゴツい印象を与えます。やはりここでも、こっそりと存在感の演出ということが施されております。

彫刻
ヴィンテージのメガネ

18.12.27

今日の仕入れからもう一本。セルの竹内光学です。

これもまた、特に素晴らしい1本でした。写真では分かりにくいですが、まずはブリッジの造形です。何年も眼鏡屋をやっていますが、見たことのない切削が施されています。真ん中で水平に突き出しており、ダイヤ型になっています。また、フロント全体も、あらゆる箇所に細かく切削が施されておりました。その為、バフがけが全然進まず、こんなにも磨きが進まないフレームは初めてだなと苦労をしました。

色も黒でボリュームがあり、通常は重たく見えそうですが、そうみえない工夫が随所に見受けられます。このフレームも相当良かったです。

とりあえず、しばらくは見てもらう為に、販売せずに置いておきます。それか、販売しても1ヶ月くらいは店頭保管かもしれません。

蝶番があれですが、あれであるが故に全体が滑らかに、一つの纏まりとして美しく見えます。そもそも、蝶番の枚数とフレームの品質は、そこまで相関していない気がします。構造とか美観を加味して使う駒が選定されることも有りますから、枚数が全てでは無いでしょう。例えば、USSは7枚蝶番ですしね。枚数よりも、それ自体の開閉の滑らかさが勝負です。ネジをしっかり締めて油を注した後で、開閉に引っかかりが有るのか無いのかが、個人的には気にしているポイントだったりします。

人間で例えた方が分かりやすいかもしれません。あれやこれやが大きければ大きいほど、男性でも女性でも必ずしも優れているわけでは無いですよね。比較の為に、ある一点を取り出して数値化することも大事なんでしょうけど、やっぱり総合力みたいなフワッとした全体像が、より一層大切でしょうね。

仕入れ
ヴィンテージのメガネ

18.12.27

久々に、店頭で買取を致しました。今日訪問したお店は、おじいちゃんの代から94年続いたお店でした。今月の30日に廃業するとのこと。

ということで、いつも通りカッコつけてしまい、店頭で沢山買いました。私なりの、業界の功労者の方々への敬意です。基本は古いものばかり販売しておりますから、これくらいしか現在の業界や、それを作ってきた方々に還元する方法が無いというのが理由です。

イベント出店が終わり、しばらくご無沙汰の良い上着でも買ってしまおうかくらいのフワフワ感が滲み出ていましたが、一気に覚めました。餅代はあるけど蟹代は無いくらいの懐事情で、自分にはこれくらいが丁度良いのだと、言い聞かせております。

とりあえず1本、インスタとは違う物を載せておきます。特に素晴らしい1本でした。これを含めた何本かは絶対欲しいなと感じ、廃業を待たずに、本日買取を決断したというのも理由です。

オプチル素材のサーモントフレームです。ブリッジ部分も含めた、全ての造形が秀逸です。

日本の在庫が、やっぱり一番面白いです。再認識しました。常に発見と驚きがあります。

今回の買取で嬉しかったことといえば、終わりがけ、話をまとめる為に値段を算出するときに、電卓を渡して頂き「正直に全部足してもらって、その額で良いから」と仰っていただいたことでしょうか。基本は怪しまれた経験しかありませんから、ちょっとウルっときました。

シチズン
ヴィンテージのメガネ

18.12.14

枠入れ完了しました。シチズンのフレームです。大きめの四角で、ゆるゆる感が抜群です。まさにあの世界観ですけど、カーディガン、デニム、ローファーにこれとか良さそうです。

黒のベースに、ブリッジと智の部分だけ金色でペイントしてあります。そして見どころは、左の智の「CITIZEN」ロゴのプレスでしょうね。

ロゴさえ入れなければ、製造元が持っている型で作れたのに…。このために型から作ったと考えますと、さすが80年代と思います。プリントではなくて、模様に忍ばせて”CITIZEN”を主張しておりまして、色々と、いい時代だったんだろうなと想像を掻き立てます。

また今回、お客さんの度数がやや強めですから、それが尚良しです。目が小さくなって、ナードさ爆発です。それがカッコいいんです。

開き過ぎているフレーム
ヴィンテージのメガネ

18.12.11

持ち込み品の枠入れ。小豆色っぽい茶色です。貼り合わせで表面はクリアで光沢が綺麗です。水羊羹に近い表面です。

困ったことに、初めの段階では、腕が開き過ぎています。側頭幅170ミリ以上、尚且つ左腕のみが異常に開いています。

今回は、フロントに着目しまして、リムが0カーブ(ほぼ平ら)であることを利用し、枠入れと同時に型直しを行います。

特別なことではなくて、ただ球面レンズを枠入れするだけです。この方はガラスを所望しておりまして、度数が低いことから屈折率1.52のガラスを選択しました。この条件でのレンズカーブが5カーブでして、それであればリムを削ったレンズに沿わせることで、丸まる様にテンプルも閉じていきます。

右レンズのみ入れた状態です。向かって左です。理想的に閉じています。

5カーブのレンズ。レンズ自体は特別なものではありません。フレームとレンズカーブが著しく異なる為、枠入れはやや大変です。

枠入れ後。レンズに沿って、リムにカーブがついています。ガラスレンズであれば、レンズごと温めても表面のコーティングの割れが起こりません。一緒にヒーターに当てて、しっかりと両者のカーブを合わせています。それに伴って、テンプルの開きがしっかりと抑えられます。

完成しました。側頭幅150ミリまで、自然に閉じました。このお客さんは、これくらいの幅なのでたまたまピッタリです。とりあえず、何とかかけられる状態にまで戻せました。

リムにカーブが既についている場合は、蝶番部分にセルを貼り付けて開き量を調節します。それはそれで良いですが、あまり弄らずに直せる場合は、まずその方法を優先しています。

ブルバキのサイズ感
ヴィンテージのメガネ

18.12.05

リスト上は、みんなNOSだったりするんですけどね。まあ、古物なので想定内です。泣きながら全部弾きます。

割れとか欠けとか、そもそも使用済み等々あります。全部ボツ。

新品の店と違って、ここが興奮と落胆を生みます。もっと大きい店だったり、勢いのある店であれば、安定して供給があるのでしょうけど、まあそこは、この形態を崩さずに出来るかどうかにも大きく関わりますので、今のところは現状維持です。

珍奇眼鏡
ヴィンテージのメガネ

18.11.27

今回の入荷分より。八角形の、程よくレトロでいい感じのフレームの上部に謎のバーがくっついています。ツーブリッジとサーモント眼鏡を合体させたような、謎の塊が上に乗っかっています。

ネジが見当たりません。おそらく接着剤か樹脂で固定でしょう。眼鏡好きな方なら、何となく伝わると思いますが、ウォルフガングプロクシュ感が強くてカッコいいと感じてはいます。ただ、あまりにも唐突に、フレームの華奢さを搔き消す塊が乗っかっているというところが、カッコイイだけでは終わらせない、面白さも含んだ、いい眼鏡だなと感じております。

ヴィンテージの眼鏡というカテゴリーがまだまだ新しい為か、古ければ古いほど価値があるという尺度しか許されていない雰囲気があります。もう少し経って、それぞれの年代の面白い箇所をおさえていくことがヴィンテージの醍醐味みたいにならないかなと、たまに願っています。

とりあえず80年代は、ブランドのライセンス物が、それぞれに個性が強すぎて面白いです。

おそらく今年最後の
ヴィンテージのメガネ

18.11.27

昨日、入荷がありました。11月は碌に稼動もしておりませんでしたが、入荷をさせてしまいました。

昨日の夜と、今日の半日使ってレストアをまず一本。相当磨きに時間がかかりました。イギリスの60年代のブローです。

個人的に大好きな、挟み込んだフィルムで艶がとても強く出るタイプの生地です。ボーリングの球みたいなマーブルの光沢が特徴的で、しかも渋い茶色です。布だと、ビロードに近い風合いです。

表面に細かい筋がありましたが、ヤスリで全て削ぎ落としております。ぬるま湯につけて爪で引っ掻きましたが、セルが削がれるようなこともなく、中は健康でした。少なくとも4時間はかけましたが、ちゃんと提供できる物でした。報われました。

ちょっと残念なのが、リムにやや緑青があって、下弦にちょっとした腐食があります。とりあえずそのままお見せしますが、嫌な場合はメッキをかけて、リダン的なこともします。

鼻パッドの無いブローも、なかなかカッコいいです。レンズは横幅48ミリで、今の時代の商品と変わらないくらいの大きさです。

フロントが2枚
ヴィンテージのメガネ

18.11.09

セルの複式です。レンズ入れました。

外側:フラット ネイビー50% ハードコート

顔側:球面 クリア マルチコート

レンズの形状が違う組み合わせでの製作は初めてでした。以前、フラットレンズ2枚、しかもガラスで製作したことがありましたが、

・重すぎる

・レンズの反射が重なって使い辛い

という点が気になっていました。今回はプラスチックレンズを使うことで1個目を解決し、フラットレンズと球面レンズを組み合わせることで2個目を解決して(特に顔側は反射防止コーティング付き)、ある程度の使いやすさを確保しようという算段です。

とりあえず、製作で苦労しました。元々製造時は、フロントの2枚とも同じフレームカーブで製作していますから、どちらかを0カーブ付近まで落としますと、お互いを繋ぐ駒の箇所が合わなくなります。写真は撮り忘れましたが、駒のギザ一つ分、フラットレンズを積んだ方は横に伸びていました。

お互いのそり角を微調節して、合わせる作業が要ります。駒のオスメスの角度も異なってきますので、なかなかの手間です。

また、日常で気兼ねなく使おうとしますと、跳ね上げの肝となる2箇所のヒンジの修繕が必要でした。

径1.4ミリのネジ穴に、1.2ミリのネジが差し込んであり、度重なる開閉で(連続20回くらい)、ネジが浮いてきました。これではいけませんね。今回は、都合のいいマイナスネジが供給品で見当たらないので、ツーポイント用のプラスネジから、欲しいネジを作りました。

ネジ先のカットと、面取りをしています。切らないと、ぼちぼちはみ出します。

さらに、ネジ先を底付きナットで共締めです。開閉が堅くなりますから、そこは現代科学を駆使して、砥粒入りのオイルを注油しております。これだけやっておけば、脱落の心配ありません。

フロントのデザインは普通ですが、同じものが2枚重なるだけで、ここまで面白くなるというのも、このメガネの良いところです。これが、他人から見たときに、カッコいいのか変態的なのか分かりませんが、とりあえず掛け続けて「メガネが2枚の人」になりきったら勝ちですね。昨今のSNSなんかを見ていますと、カッコイイ人もかわいい人も数多居ますが、メガネが2枚で可笑しい人は居ないですからね。特に日本人の場合は、メガネで特異性が出やすい気がします。

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