カテゴリー:無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

各1のみ
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

23.02.03

金無垢とサンプラチナのコンビフレームですが、各1本限定でおつとめ品にしました。

K18イエローゴールド

K18ローズゴールド

そんなこんなで、さっきの記事ではこれのデザインの基となった1930年代のフレームのことを改めて調べていたんですよね。時代に重きを置いたり、みなさまそれぞれ大事に思う箇所は違うと思いますが、とりあえずブルバキはヴィンテージの眼鏡屋ですけど何よりも質量重視です。

K18ローズゴールド使用部分。ブリッジのネジとワッシャーとナット、鼻パッドと鼻パッドどめのネジを含みます。

製作が2021年の夏で、そもそものきっかけは銀無垢のサーモント(眉がセル、眉が銀無垢ともに)の進捗が無く、それなら他に何か進めたいなあということで、銀無垢で作れなかったブリッジを一度でいいから他の貴金属で拝んでみたいという試みでした。

そこから、もう少しゆっくりゆったり開発が進むのかなと考えていましたら、予期せぬペースであれよあれよと新作として銀無垢のサーモントが2022年中に2型出来上がりまして、ちょっと色々アレなんで、珍しくアレします。店頭でのアレは初めてです。

¥330,000→¥230,000 (税込)

実験
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

23.01.29

昨日インスタに載せた、湯の素による温泉燻しです。これ面白いかも。

以前に使った銀黒とは別に、硫黄系の燻液も売っていますけど、温泉燻しの方が簡単にムラが出て、茶色や青色のグラデーションを付加できる気がします。確かにこのムラが、真っ黒にならずに茶色や青色で止まる感じが自然です。あれこれ燻して飽きたら、風呂に入れて本来の楽しみ方に還れば良いですしね。

サーモントもやり直してみました。

 

湯温をあげて、まさにお風呂くらいにしつつ、薬品の量を少なめにしたらこんな感じ。茶色〜金色みたいな、不思議な色合いになりました。私自身は元々エイジングガチ勢(真っ新から薬品を使わずに燻す派)でしたけど、この二つの感じはカッコいいと思いました。通常の使用では、まずこういった変化にはならないので、これはこれで銀無垢ならではの表現として良い感じですね。

いずれも定着の仕方は普通で、指で10回くらいゴシゴシすると落ち始めます。

デカめ銀無垢パッドは、金型は出来ているみたいなので、おそらくもうすぐです。

隙間とは
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

23.01.16

肝はここの処理でした。テンプルと眉毛パーツの処理です。上の画像をみて、結果から申しますとほぼヴィンテージと同じ処理になりました。

ヴィンテージの蝶番部分を貼っておきます。

日本の美意識みたいなところで判断すると、この未処理の段差と言いますか眉とテンプルの切断は許しがたい部分になると思います。設計の段階でフロントからテンプルに向けて滑らかに繋がるように改編して、そのつなぎ目を合わせて精緻にきっちり仕上げるはずです。

今までは、そういう日本的な美しさに注目をし、一個智の美しさや面のあった美しさを味わうのも良いですなぁみたいな感じで、銀無垢のフレームやサンプラチナのメガネを紹介していたと思います。今回は一歩踏み込んでいます。もし先のように改編した場合に、得られる良さもあるんでしょうけれど、失われる良さもありますよねと。何なら失われる良さにフォーカスを当てて開発しましょうというのが個人的な狙いです。スローガンとしてはヴィンテージの再現、銀無垢でのアップデートなんですけどね。

今回の銀無垢のサーモントを載せます。

眉パーツとテンプルが別個のもので独立していたとして、その接点をどうするか?という問題があります。あれこれフレームを調べて銀無垢に適した構造を探りましたが、結果的にはヴィンテージと同じように眉とテンプルを用意しつつ、違うのは眉とテンプルを一切干渉させない構造にしたところです。たしか、0.3〜0.5ミリの範囲で、眉とテンプルの隙間をあける指示になっていたと記憶しています。テンプルは、硬いパラジウム合金に接地するようになっています。

いくら狙って微小な隙間を作るとはいえ、隙間なんです。これは出来上がった物を見るまで本当に不安で仕方がない部分でした。ヴィンテージのメガネではセルが縮んだりとか、そもそもの精度のこともあって隙間は乱発していますけどね。現代において銀無垢で作ればそれなりの値段になりますから、その値段で許されることか?みたいな自問自答は出来上がってくるまでずっとありました。

色々な角度から撮りましたけど、どうでしょう?ほとんど分からないと思います。一つはメーカーさんの隙間が微小であること、もう一つは隠さずにわかりにくくする工夫をしております。

今日に至るまで、隙間の事実を言わずに結構な方に見ていただいたんですけど、誰も気づいていないっぽいので成功したと思います。

隙間を目立ちにくくする工夫を考える上で、まず

そもそも隙間とは?

隙間と、どういうときに認識するのか?

つまり隙間と認識しやすい条件とは何か?

みたいなことを考えました。辞書で調べても、物と物の間くらいにしか記載がなく、隙間にしっかりと向き合った形跡がありません。そうなると自分で考えなくてはいけません。

隙間といえばなんですけど、私は実家の居間の引き戸を思い出しました。小学生のときは閉めが甘くて、隙間があいていると親によく怒られたんですよね。

そこで引き戸を観察して分かったことは、視線と直交する同一平面上に扉も壁もあると、隙間と認識しやすいということでした。例えば壁に枠みたいな囲いがあって、扉が枠よりも1ミリでも2ミリでも内側にあると、つまり扉と枠が同一平面上にないと、途端に微小な隙間を認識しにくくなります。ぜひ色々な引き戸を観察してみてください。

そこでさっきの3枚の写真を見て頂くと分かるのですが、眉とテンプルはどこから見ても段差があるようにしています。段差があって、眉とテンプルが別体ということを強調し、ヴィンテージっぽい感じの演出に一役買っています。それに加えて、もとは隙間をわかりにくくさせる意図を込めて、段差を強調しました。

ちょっと前に、テンプルのヤゲンのラインは何となく好みで入れたとか書いたと思います。まあそうなんですけど、一応隙間を分かりにくくするための意図もあります。もう一度、同一平面状に平らな面と面が並ぶと隙間と認識しやすいです。平らな机の上に、平らな下敷きと平らな下敷きが並んでいるのを想像すると、何となくそんな気がしませんか?そこで、一つを凸に、両方でも良いんですけど平面から飛び出ているような要素があると、隙間の認識が難しくなると思います。それでテンプル側をヤゲンのように凸にして、単純な平面にしなかったというのも一理です。

のらりくらり書きましたけど。眉とテンプルの処理はヴィンテージとほぼ同等に再現出来ました。銀無垢で。眉毛とテンプルは、銀の塊と塊なので、それが衝突している様は(実際は微小な隙間)、非常にダイナミックで美しいです。メーカーさんとのやり取りでも、ひたすら迫力とか粗野な感じとかそういうのは伝えていたのですが、まさにこのヴィンテージのような一見すると単純な(実は単純じゃない)構造でしか生まれない良さが再現出来たと思います。リ・ウファンの関係項だったか、そういう作品を見たことがあるのですが、大きいものと大きいものの衝突ですよね、まずは。そういうメガネが遂に出来ました。

 

ビバノンノン
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

23.01.11

銀無垢のサーモントの完成連絡をうけて鯖江に伺った際に、銀の硫化ってほどほどに施すにはどうしたらいいか聞いてみました。燻用で出ている薬剤だと、黒が強いのでコントラスト強めでパキッとした感じが好きな方は結構なんでしょうけど。もう少し淡い感じの、自然な経年変化に近い風に黒ずみを起こしたいなと考えていました。

メーカーの社長さんのオススメは、やっぱり温泉だそうです。即答でした。つまり温泉の入浴剤で良いんだよと仰ったときに、なるほどなーと目から鱗が落ちました。それで買ったのが『湯の素』です。

硫黄が入っている入浴剤ならということで、パッケージで湯の素にしました。カッコいい。

あとは、インスタに載せた通りです。あっちの方が画像が綺麗なので。真っ黒になるんですけど、黒よりグレーという感じです。ムラがあって、多層的です。炎で炙って青っぽくなったような箇所もでます。確かに理想的な燻のマックス状態になります。

表面は、梨子地までいかない程度にマットになります。スマホのシリコンカバーみたいな感じです。

ある程度、銀は光沢も良さですからクロスで磨いています。一発目は銀用の柔らかいもので、二発目は銀も良いけどちょっとハードやで気をつけてや、みたいなクロスで磨いております。一発目の磨きでは磨いた部分にほんのりザラつきを感じたので、二発目で面を整えた感じですね。

一発目で止めても良いですし、この辺はお好みで。

リベット付近やブリッジ付近の変化は予想通り、かなりカッコ良くなりました。予想を越えたのはテンプルで、凸の薬研がスパッと光って、面は黒ずみが落ち切らず、落ち着いたトーンになります。終端まで伸びる線が強調されて美しいです。上がりたてのピカピカも荘厳でしたけどね。

今はまだ大きめな銀無垢の鼻パッド待ちですね。微妙に自分に合わせてちょくちょく掛けてみましたが、たまたま僕ならずり落ちないけど、不快です。この感覚は、ティアドロップくらいのフレームにガラスレンズを入れた感覚に近いです。

確かに、s-6.00の60径で30グラム前後で、銀無垢の眉毛の重さが25グラムくらいだったはずです。割と近い重さでした。なので僕の銀無垢のサーモントを掛けたときの実感と、自分の度数でガラスレンズを枠入れしたティアドロップ系を掛けた実感が繋がります。あくまで主観であって、全然科学的では無いんですけどね。科学的では無いんですけど、自分すらダメだったらまず出せないよなというのはいつも考えています。

モードオプティークのno.34から拝借。今のところmaxの大きさでもVSDは出来ないと言われつつ、とりあえずプラスチックパッドのVSDを取り付けると全然イケる感覚になるので、やはりガラスレンズが主流で、なおかつレンズサイズが54とか56の時代、70年代くらいのパッドの大きさに還ることを理想にしつつ、今はとりあえず工作機械のマックスパワーでどこまで大きい無垢のパッドが出てくるのか楽しみに待っている状況です。

仕入れしてしまいました
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

23.01.08

年明けのソフト側の諸問題を解決出来ず、ブログ本文中の画像がまた不鮮明に戻ってしまいました。色々試みて、直せないのでしょうがないですね。

週明けの、今月分の眼科さん出張が無しになったこともありまして、それだけゆとりがあるならと銀無垢のサーモントを仕入れしました。

あと、何だかんだ自分にとっても念願の銀無垢のサーモントの完成ということで、早く手元で、もっとじっくりと観察したいという欲求が高まってしまい、なんならメーカーさんのインスタにあけおめ投稿でサーモントの全貌を載せてるし!ということで、大きい銀無垢の鼻パッドの完成はまだ先ですが、メインのフレームは仕入れております。

イベント最中に書いてますけど、予想以上に僕のブースだけ暇すぎるので、この前の続きと言いますか、銀無垢のサーモントの製作に関してひとつだけ僕が決定しないとどうにも進まない部分があったと申しましたけど、その辺のことも時間があれば書いてみようと思います。推敲が長いので、更新まで出来なかったらすみません。ヴァージル・アブローの3%プロセスといったり、トムサックスの“クリエイティビティ イズ エネミー”だったり、色々な表現に置き換わって度々現れますけど、エビデンス主義という表現に化けて出てくることもあるかもです。最後の最後に、危ない橋は渡らない、デザインはしないと言いながら、エビデンスの無いところに突き当たってしまいました。エビデンス主義と責任回避みたいな話もあるので、そんなことを気にかけるとエビデンスのないことの決定というのは大変気が重かったです。その辺がスパスパッと積み重ねられるのが、デザイナーということなんだなと痛感しました。

全部書いておきました
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

22.12.24

狙い

銀無垢でサーモントを作りたいと思ったきっかけは簡単です。1950年代のアメリカに、既にそれに近い形の物が存在しています。オールアルミの、物によってはそれに金張りを施したサーモントです。

開発にはこの2本を用いました。アルミが大量に製錬されるようになったのが世界大戦後の1950年代らしく、軽くて強度もあって錆びにくくて、最高の素材っぽい宣伝が当時もされています。それこそロイヤルだったかデラックスだったか、そういう高価なサーモントとして位置付けられていたことが調べると分かります。そこから想像を膨らませるのは容易くて、これが貴金属だったら…となるわけです。結局当時物のアルミのメッキなり張りのフレームを見ましても、消耗品として製造された形跡といいますかパーツの選定が行われていまして、遺すとか受け継ぐみたいな意味は込められていません。このサーモントのデザインがメガネのスタイルの一つのスタンダードになって、70年後の今もあるとは想像し難いですからね。そこで、銀無垢で日本の技術をみっちり詰め込んで、作りの面から素材の面から不変性を帯びさせようというのが狙いです。

それは自分たちの仕事では無いと言われればそれまでですし、各ブランドが「メガネ」というカテゴリーをどれくらい重きを置いて見てくれているのかということに依りますから、以下は勝手な怒りということなんですけど、店を始める前のメガネ業界のサラリーマンのときから、クロムハーツやティファニーがそれを作ってくれていないことにとても憤りを感じていました。両者ともアメリカで、銀無垢がウリで、目につくありとあらゆるものを銀製品で作っているはずなのに、なんで全て銀無垢のメガネは無いんだと。しかも、古き良きアメリカを代表するサーモント、レイバンのクラブマスターも1986年から販売していて不動のスタイルであるサーモントを。過去を漁れば、銀ではなくてもオール金属で作っていた形跡があるのに…。チタンやセルのフレームに飾りやロゴの印刷をしてあるメガネは沢山あるので、おそらく両者ともメガネはロンTと同じ扱いなんでしょうけどね。とりあえず、一庶民がパッと思いつくような物が世界に無くて、お金で買えなくて、それを憧れに生きていけなくて、これは由々しき事態だと勝手に思い込んだのがスタートです。

ベースとなるフレームの選定

925シルバーのサーモント
50年代のアルミのサーモント

アルミのサーモントも、各社がそれぞれ試行錯誤を繰り返した形跡があります。その中で、シューロンの眉毛に注目しました。眉毛の真ん中で凹んでいます。リムに沿わせています。これを採用しました。アルミのサーモントが何を意図してプレスしたのか分かりかねますが、銀無垢で作るとなれば常に重量を気にしないといけません。ボリュームを十分感じるのに、ちょっとだけ軽量化出来そうです。

ちなみに、ヴィンテージメガネ界でサーモントといえば、AOのサーモントを至高とする見方もあります。どうしようかなと迷ったんですけど、一旦ヴィンテージの価値観から離れて、冷静に見れば全世界に未だに行き渡っているのはレイバンのクラブマスターだよなぁということで、クラブマスターも参照したのかなっていうくらい似ている、上の二つから開発を進めています。

サイズの決定

今回はボクシング表記で47□21です。資本が∞であればアレコレ出来ますが、現実問題としてやはり一つに絞らないといけません。日本人の男の平均の瞳孔間距離(PD)が65ミリというのを参照しております。今っぽい掛け方でpd=fpdとなりますと、44□22も候補には上がりますが、出来上がったものは銀の塊で相当な迫力であろうという予測から、レンズはちょっと大きめでゆったりと、ちょっとpdが広めでもジャストでカッコいいというところを狙いました。開発のサンプルでは46□22の表記でして、正確に測ると47□21ですよと工場から通達がありまして、そうしましたらその通りに作りましょうということになりました。レイバンのクラブマスターは51□21と49□21です。ひょっとしてお前もその分析を…という発見がありました。ヴィンテージメガネの世界では大きめ、現代のメガネからすると小さめ、クラブマスターの一個下というサイズになっています。

80年代の日本製ほぼクラブマスターと並べました。それは50□20です。レンズを大きくすると眉毛も大きくなって重たくなりますし、レンズもいくらプラスチックとはいえ重量が出ます。ここは色々な余地があるところでしょうし、流行り等々でいかようにもレンズ横幅とブリッジ幅は変わると思います。

テンプルの決定

テンプルはこんな感じです。現行のレイバンのクラブマスターは、テンプルは真っ直ぐな棒です。50年代のサーモントも、セル眉のタイプであれば真っ直ぐな棒の物も他にあるのですけど、アルミのサーモントは、大抵が耳に向かって末広がりです。この末広がりの処理は、個人的にはカッコいいなと思うんですけど、現代的にはテンプルが派手だと避けられる傾向にあるよなあとか、色々と考えの余地がありました。銀無垢でサーモントを作るにあたり、どちらを採用しようかなと。

アルミで末広がりにするのは、どのような意図があったのか、いまとなっては分かりません。ある程度面積を用意して、ゴージャスに見せる目的だったのかそうでは無いのか。実際に50年代のアルミのサーモントにおいて、テンプル等々に彫金が施されている物も存在しています。なんとなく、幅を持たせてゴージャスな演出にしていたような気はします。

今回、画像を見ると分かる通り、末広がりのテンプルを採用しました。最終的には、棒にするのも末広がりにするのも、個人の好みの問題に帰着すると思います。そこで銀無垢でサーモントを作ることに対して、どちらが優位かを鑑みて末広がりを採用することにしました。

・鉛直方向に幅のあるテンプルの方が、その方向の力に対して強度が確保できる

・銀無垢の眉パーツが重いため、後ろがよりヘビーになる末広がりなテンプルの方が重量バランスが良さそう

※ただし、重量バランスと総重量の葛藤は常にありまして、総重量の観点からすると、真っ直ぐなテンプルの方が軽そうです。

・薬研のラインを末広がりのテンプルには入れられるので、横方向の強度も出せる

横の薬研のラインも、ヴィンテージから採用しました。

上が薬研のライン有り、下は無し

銀無垢はカシメを出来ません。さすがに横が物足りんのかなと思いまして、ヴィンテージよりもっと明瞭な山にして、ラインを先端まで入れています。思考を変えて、カシメがないのを活かして、眉毛パーツまで視線を誘導するような鋭いラインを入れました。

真っさらな平面で、手彫りの余地を残しておいた方が良かったかもしれませんし、ここもまだまだ考えられそうです。真っさらな平面で物足りないことはなくて、そこに少し私の感覚が入り込んでしまったなと、今になって反省です。とりあえず末広がりで、テンプルエンドはいつも通りのバチ先を採用しています。

リベットの決定

リベットこそ、好みが分かれると思います。ヴィンテージなんかは特に、男はこのリベットがカッコいいと言い、女はこれこそ要らんと言います。僕も30歳を過ぎたら、あると嬉しいけどなんだか無くても良いかもと思うようになりました。

カッコいいリベットとは?そんな風に考え始めると答えのない沼にハマります。プロのデザイナーとか、ロゴを考えられる人なら良いのですが、私は違います。今回は構造上、大きさの制限と立体感は出せないという条件がありまして、候補が限られています。

まずこの時も、レイバンのクラブマスターから始めます。あれは、ぺったんこなオーバルです。今見ると一番良い選択な気がします。なんて無属性で柔らかい雰囲気なんでしょうと。ぺったんこな長方形は、無属性なんですけど雰囲気が堅いんです。見れば見るほど最適解はオーバルです。でも、オーバルは絶対使えないので、どうしたものかと考えなくてはいけません。

ここも私の判断とか好みが入ってしまったので、後世があれこれ変更できる余白があると思います。とりあえず、柔らかい優しい雰囲気にする物がいいなとやっぱり思ったんですよね。そこで、タートのカウントダウンを参照しております。タートのカウントダウンは、リベットのパターンがいくつもあります。それこそオーバルもありますし、今回の銀無垢でも参照したaxe(斧)のリベットもあります。このアックスのリベットが秀逸で、やや釣り上がってグラマラスなフレームを、微妙にナードに優しい雰囲気に仕上げます。是非、カウントダウンは画像検索をしてみてください。フレームのアウトラインを目で追ったときと、リムからリベットに目で追ったときの印象が全く違います。あの優しさを採用しました。

そう思って、開発のベースとなる手元のアルミサーモントをみたら、そう言えばこれもそんな感じでした。2方向から検討して同じ結果なら、自信がもてます。これの立体感を無くして、後ろに機構を組み込む為に必要な分だけ縦幅を持たせたのが、完成品のリベットでした。リムの上端を鼻側から耳側に目で追って、耳側のピークに来たときにリベットに目を移すとなだらかに降るんです。この目の動きはタートのアーネルとかモスコットのレムトッシュの、フレームのアウトラインと同じです。

今後のこと

とりあえずこんな感じです。実際にテンプルの幅はなんだかんだとか細かくいろいろとありますけど、ざっくり私が検討したことを書いておきました。ちなみに今週の火曜日に鯖江の工場で見たときは、刻印無しの組み立てホヤホヤで一応持って帰ることも可能だったんですけどね。年末だしなぁというので、完全に仕上がってから入れます。

あとですね、鼻パッドが遅れて出来ます。銀無垢で。一番面積を広く出来る限界一杯のパッドです。それが1月か2月か、金型からになるので時間が掛かるそうです。それもあって、持ち帰るのを我慢しました。

デモレンズ込みの総重量が63グラムでした。太いセルで装飾パーツが付いたフレーム並みに重いです。前回の銀無垢のサーモント(クリアグレーの眉)の2倍くらいあります。重くなるのは予期していましたが、許容値のギリギリいっぱいでした。ガラスレンズは、まず無理でしょうね。

まず掛けてどんな感じか、それが心配だったんですけど、全く科学的ではない主観で言えば、重量ほど鼻の重さがあまり感じなくて、コレは大丈夫という直感がありました。バチ先のテンプルエンドの重みと摩擦なのか、やはりテンプルを末広がりにしたことで、重さを重さで制することが出来たのか分かりませんが、掛けられる感覚は大いにありまして、かなりホッとしております。想像の産物ではない現実のメガネとして成立しています。

今回も、鼻パッドの取り付けは箱です。商品価格に対して取るべき構造みたいな話もありますから、フレーム全体を消耗品にしたくありませんし、カシメとか抱きのパッドがヴィンテージライクでカッコいいのは承知ですけど、個人的には銀無垢は箱一択です。修理も交換も容易く、交換パーツの手数が豊富です。いまのところ925サーモントには、前回のサーモントのときに型で抜いた涙型の銀無垢の鼻パッドが取り付けられています。それでも鼻へのずしっと感は少なかったとは思います。でもそれで油断せず、むしろ先手を打っておきたくて大きな無垢パッドも制作中です。最悪どうしても重い、下がるならさらに奥義のシリコンパッド等が使えますから、まあこれも男は無垢に拘って女はむしろ目立たない透明が良いなあってなりがちなんですけど、フレーム全体を諦めることは無いんじゃないかなと考えています。ということで、仕上げの鼻パッド待ちです。それこそ鼻パッドの取り替えは簡単なので、1月中には鼻パッドが出来ていなくても入荷させようかなと考えています。

僕側の、なんかこういうの欲しいなあの“こういうの”の部分のデザインよりも、そのこういうのを具体的に製作すべく図面をデザインの方がかなり苦労されていると思います。その部分は書けないんですけどね。非常に変な表現ですが、それらのデザイン同士が衝突して、一箇所どうしても決断を下さないといけない部分がありました。それが眉パーツとテンプルの合わさるところの処理についてなんですけど、それを決めるときが一番悩みました。それは、物が届いたら書きます。

絶句
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

22.12.21

先々月のIOFTのときに、社長さんは年末に出来ると仰っていまして、製造のトップの方はまだまだ技術的に超えないといけないハードルって沢山あるんですけど…みたいな、そんな状態でしたし、僕もリップサービスかなと思っていました。単価と納期と、本当は外せない大人同士のルールを、物を作る制約条件から外した(外させていただいたですね)ときに、どこまで出来るのかが、何が人間の目論見を超えて出来上がってしまうのかが僕にとっての無垢のフレームの探究の目的みたいなところでして、無理オブ無理を強いている以上、納期の問い合わせはしないというのがマイルールです。いつも待ち続けています。なので、年越して完成は3月とか6月かなと思っていました。これは本当で、12月11日のブログ(v-e+f=2の回)で来年の新顔の登場が楽しみですなあと、現時点から眺めれば非常に空々しく書いてあります。寝耳に水でした。別件で今週の月曜日に問い合わせをしたときに、ついに出来ましたのご連絡をいただき、昨日は本当に急遽鯖江に行ってきた次第です。

オール925シルバー、銀無垢のサーモントです。

いつも通りネジはステンレスです。蝶番はカシメをしていません。ヴィンテージ等々とは異なる構造になっていますが、共有しやすいので一旦リベットと呼んでしまいます。銀無垢の眉パーツからリベットは取り外し可能です。眉毛が壊れても、蝶番の機構を取り出して眉毛だけを直せるようになっています。そしてリベットと裏の蝶番の受け側のネジまでが一つの機構となっていまして、それは全部APC(銀、パラジウム、銅の合金)です。ということで値段もやっぱり凄いっす。

カシメの構造はやらないと初めから両者が合意の上で進みました。僕としてはフィッティングの観点から、レンズの加工から、ファッションの観点から等々、実務のフィードバックしか出来ないしやらないと考えています。構造上、素材の特性上、それはやれないとメーカーさんが仰ってくれたことはやらないです。そこを無理して通して出来たものは、やはりメガネとして無理があったりすると思います。綺麗なオブジェじゃなくて美しいメガネにするべく、お互いの仕事の上での禁忌みたいなものは、必ず避けるようにします。

とか何とか言いながらも、出来上がった物の裏を見たらほとんどヴィンテージと遜色が無かったのは嬉しい誤算でした。写っている蝶番、フロント側もテンプル側に取り付けられているのも、パラジウム合金のAPCです。フレーム全体が経年変化し、色が変わり形状的にも柔らかいので凹んだり欠けたりしながら馴染むなかで、蝶番とネジは変色せずパキッと綺麗なままです。パラジウムは白金族の貴金属で、簡単にはプラチナの親戚で硬いです。APC合金も硬いです。おかげでつま先と踵がよく磨かれた、履き込んでシワのある革靴みたいな美しさを帯びることが期待出来ます。

僕の意図みたいなことは、また時間があれば書きます。書くほどに物がカッコよく見えなくなってしまう可能性があるのでやめたいところなんですけど、書きたい病なので書くと思います。基本的には、なんだか矛盾する表現ですけどヴィンテージらしさやブルバキらしさを消去することに努めました。これは本当です。今回の訪問も、共同開発とはいえ刻印をどうしますか?と尋ねていただいたことに対しての回答をすることも目的にありまして、いつも通りMIZだけでと伝えております。元AKBの前田敦子さんは本当に素晴らしい名言を残したと思います。その精神です。ですからデザインプロセスとしましても、とにかく私の消去というものが念頭にありまして、その弁明になると思います。個人的にヴァージル・アブローブームなので、僕も自分が考えたことを開示して、次にメタルサーモントを作る人がそこはもう考えなくても良いものだと時間短縮出来るように、マイルストーンを置くつもりです。

ただ本当に、豊橋時代の居候の時から銀無垢のサーモントを作りたいですねとお客さんと話し合ってきましたし、あれやこれや何だか色々あって、営業さんに伝えて4年くらいであれを起点とするのか2年前だか3年前のあれを起点とするのか、本当に色々ありました。銀無垢のサーモントを作ることは、店を始めた理由です。大きな理由です。皆さんに夢を叶えて頂きました。ありがとうございました。突然すぎて、まだ物が手元に無いってのもありますが、まだ実感が無いです。

図面のタイミングは、実はこの前のサーモントとほぼ同時期でした。個人店としては、個性がびしょびしょに溢れているみたいなことをしないといけないところですが、あっちのサーモントもこっちのサーモントも頭の中ではずーっと私の消去というのが頭にこびりついていまして、今年はなかなか精神的に大変ではありました。

3年経過
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

22.12.16

ちょっと記憶が曖昧です。おそらく3年ほど経過した、サンプラチナのメガネです。手彫りの装飾が施してあります。

サンプラチナの特性上、925シルバーと違って変色はありません。硬い素材のため、けっこう何気なしに使っても彫金の切削面が削れて丸くなることは無くて、未だに精緻な鋭さを放っています。

いま変色しないと書きましたが、ロー付けの接合箇所は黒くなります。ブリッジのメイン部分と、レンズの掴みのパーツの間に1本棒が渡っていることが確認できます。そこが黒ずんでいます。プラモデルにガンダムマーカーで線を入れる感じで、この黒ずみでちょっとした重厚感がでます。

ここも黒ずんでいます。分かりにくいんですけど、キャッチとテンプルの接合箇所がちょっとだけ黒いです。

このブリッジが面白いのは、サイドの「く」型の箇所は四角柱の面が正面に向けられているのでは無く、辺が正面に向けられています。菱形の棒でこの形を作ったという表現の方が分かりやすいかもしれません。手彫りをブリッジに沿って全部に施すことで改めて認識することができましたが、そうしますとどの角度から眺めても、ブリッジのラインを目で追う際に二つの面が目に入ることになります。これでいえば、手彫りの面と何もない真っさらな面です。その対比が非常に美しいです。尚且つ30年代のフレームのように細くラインを用意したのにも関わらず、ただ華奢に見えるだけでは無くて力強かったり豊かに見えます。ダイナミックに見え始めます。色々な見え方が内包されているということがそこに帰依しているでしょうし、実際に正方形の対角線の長さは√2倍なので真正面からこのブリッジを捉えたときは、一つの面だけを見ている時より幅が広く見えています。

元ネタと同じ箇所に手彫りをするとこんな感じです。これは在庫を撮りました。真っさらな面が傷なくピッカピカです。

この彫金のスタイルですと、視線が彫金が施されている水平部分に自然に吸い込まれます。それによって、鼻で固定するフィンチメガネのような風に見え無くもないです。この彫金の方が、クラシックで静謐さを感じます。

例えば30年代の金張りのフレームであれば、ブリッジ全体にプレスで彫金模様を施すのが一般的かと思います。そのルールに従うと全部に手彫りを施した方がクラッシックに見えそうなものですけど違いました。この構造に全部彫るルールを当てはめますと、あの時代には無かったダイナミックさが滲み出てしまうというのは、先ほど書いた通りです。どのような雰囲気にフレームを方向付けたいのか、それで彫金のパターンをどうするのかが変わります。

ピンク色のレンズ
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

22.11.28

自分用で使っている銀無垢のサーモントのレンズを変えてみました。

変える前はこんな感じでした。原因不明ですけど燻されるスピードが速いみたいで、同じく4、5ヶ月使っている方と比較してもブリッジやリム周りの黒ずみ方が著しくて、それによる重厚感の演出もちょっとだけ多いなあと思うようになりました。

対処としては2つ。フレームを磨いて綺麗にするか、レンズの色を変えてG.I.グラスのイメージを取っ払うかです。せっかくのエイジングを無くしてしまうのももったいないので、今回はレンズの色を変えてミリタリー感を減らすことにしました。

今まで、サーモントが主流だった60年代〜70年代におそらく行われなかったであろう色にして、とにかくサーモントの醸し出す威厳みたいな雰囲気をふにゃふにゃにしてみようというのも狙いの一つです。その成果がトップ画像のあのピンクです。ピンク色で、最後どかーんと威厳も重厚感も全て、壊れちゃうとそれもいけないから壊れる手前で共存出来ないかなと思って、あんな感じです。

ちょっとまえに、度無しのクリスタルピンクがどうのこうの書いたと思います。多分2、3ヶ月前だと思いますがあれくらい前から探していました。妖艶な感じの少ない、ポップなピンク色です。この前のお客さんの表現が的確でそのまま貰っちゃうと、オレンジ色っぽいピンクを探していました。それなら銀無垢のサーモントにもギリギリ合いそうだなと。オレンジ色っぽいピンクの着想は、アメリカンヴィンテージの、フレッシュ(flesh)カラーなんですけどね。レンズカラーでヨーロッパ式のサーモントフレームに、アメリカを混ぜることを今回も念頭においています。且つポップで軽やかにしたいということで、オレンジっぽいピンクです。

(向かって左もノンコートです。レイガード435のスイート(PK))

クリスタルピンクの弱点は、度無しオンリーなんです。度付きの場合は、それを元に見本染色で近似色で染めることになるんですけど、薄いカラーは特になのか都度微妙に変わりますし、仕上げのコーティングによってもズレます。どの光が入射して、どの光が跳ね返るかが色の理論なので、コーティングでもズレますし、なんなら完全には予測不可能なズレがそこで生じます。

そんなわけで、メーカー独自の何かしらのピンク色で、毎回安定したクリスタルピンクの近似色が無いかなと探していました。いつものこの店のこの味的な、そういう色を。それがようやく見つかりまして、今回のレンズ交換に繋がっていきます。そのピンクは、HOYAのレイガード435のピンクです。盲点でした。名称がレイガード435のスイートでして、そのスイートに惑わされていました。ピンクの中では、スイート感少なめのピンクだと思います。

比較で置いたクリスタルピンクとほぼ同じ色味だと思います。しかもヴィンテージメガネが好きな方なら、なんとなくアメリカンヴィンテージのフレームのあのピンクっぽくないですかね?ブルーライトカットの一環で出た色でして、青をカットしたピンクということで黄色っぽい、黄色とピンクが混ざってオレンジっぽさが出ています。

最終、コーティングで少し赤っぽさが出たかなとも思いますが、オレンジっぽいピンク感は健在です。フレッシュカラーのセルフレームはとてもカッコいいんですけど、例えばピンクのフレームにグレーのカラーだと、やっぱり仕事に依ってはダメかなとか、さすがの僕でも考えてしまいます。そこでグレーのフレームにピンクであれば、ピンクが薄くて肌に馴染む黄色っぽさがあればいけるかなと思って、見本をとりあえず用意したいという狙いもあって作ってみました。

レイガード435の濃度としては、15パーセントくらいでしょうか。手に置いた感じで、日焼けが少し濃く見える程度の、おそらく掛けた状態ではレンズに色が入っていますと言われないとわからない程度の濃さです。横から見たときに、コバの発色が綺麗でメガネ全体が一層綺麗に見えていい感じです。ロレックスのミルガウスの緑の風防も綺麗で素敵で憧れるんですけど、ああいうさり気なさもあって個人的には満足です。

4年もの
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

22.11.23

サンプラチナの丸メガネ。型直しのご依頼でした。販売して4年以上経過しています。

サンプラチナは色の変化はありません。ロー付け箇所が小さく黒くなるくらいです。全体にびっしりと小傷が入って、落ち着いた光沢を放っています。こういう感じも良いですね。

ネジも、摩耗で緩くなる等々は見受けられず、とりあえずクリーニングと注油で終わりです。

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