カテゴリー:修理とメンテ

骨が見えている
修理とメンテ

21.12.15

修理でした。エクストリームな壊れ方をしていまして、ごっそり抜け落ちています。まずは工場で肉を盛ってもらい、磨き等の調子とりはこっちで行うことに。

骨が見えなくなりました。綺麗でいい感じに直っています。

磨きは店で。ブリッジとリムの下側をガリッとやっちまっていたので、まずは棒ヤスリで面を整えました。

あとは、サンドとバフで仕上げます。リベットもガリガリだったので、どれくらい傷を落とすのか迷いましたが、元の凹凸が判別できる程度にしました。3割くらいは傷が残っています。

AOのモダンタイムズでした。

強度数
修理とメンテ

21.10.03

クラウンガラスの事例として。

アーネルのお持ち込みです。クラウンガラスを入れるということだったんですけど、球面(s)と乱視(c)の合算で-8.00くらいで、cは-2.00以上です。そもそもレンズ作れるのか問題がありまして、そこから確認です。

フラットガラスの製作範囲外なら製作可能ということで、クリアのノンコートで作りました。製作範囲外なら製作可能という意味不明な日本語を書きましたが、業界あるあるでして、レンズの製作表に載っている範囲を超えて作れる場合がありまして、それを範囲外製作と呼びます。限界を超えるみたいな感じですね。どのレンズでも行える訳ではないので、要相談です。

今回のレイアウトはかなり理想的でして、pd≒fpd且つレンズ幅40ミリです。眼とフレームの条件としては、マックスに近いレベルで薄く仕上がる良いものです。そこで屈折率1.52・アッベ数59のレンズを入れてみて、組み上がった重さがどうなるでしょうか、というところが問題です。

右レンズ

ガラスでこの度数でもこんな感じかぁ、予想よりは軽いというのが取り敢えずの所感です。cの軸はともに180度でして、上下に合算の-8.00が来ます。それでこれなら大丈夫そうです。

右レンズの下側。縁厚で3.5ミリ程です。

やっぱりカッコいいですね。

仕上げみがき
修理とメンテ

21.09.27

この写真の状態にするまでに、2日くらいかかっています。傷の凹凸が激しいので、紙ヤスリ当てる前に、棒ヤスリで表面を整えつつ形と面を決めて、そこから紙ヤスリとバフ磨きです。

棒ヤスリとサンドでこんな感じになります。面が多いので難しかったですね。難しいんですけど時間はさほどかからずでして、次工程の紙ヤスリが毎度のこと時間がかかります。粗さで3段階に分けてひたすら紙ヤスリで擦ります。

#600
#1500

間の番手を撮り忘れました、1段階目と3段階目を載せました。粗でどれだけ綺麗にするかが、つるつる光沢面になるかならないかの分かれ道です。粗がしっかりしていれば、間の番手も仕上げも、満遍なくなぞることを意識すれば良いだけです。

トップの画像が、これです。バフも粉と布の硬さを変えて磨き分けます。バフのときに、ヤスリの丁寧さが出てきまして、バフだけで何とかしようとすると、生地表面が熱を帯びて緩くなり、バフの布目が残りがちです。生地を磨いて何十年みたいな方でしたら、バフ作業ををもっと細かく分けて接地圧や接地時間も粉の粗さや布の硬さごとに分けて、より短時間で綺麗にしていくと思いますが、眼鏡屋レベルの設備と腕では、無難に時間と努力で失敗しにくい方法で詰めていく方が良いと思いまして、今もこんな感じで綺麗にしています。

工場から戻ると
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21.09.26

工場は、使える状態にまで戻してくれます。すごいです。

左右のテンプルの肉付けをしております。透明の樹脂しかないので、えぐれが多い左テンプルは、やや修理箇所が目立ちます。

あとは、フロント側のコマは結局ダメだったらしく、交換で再埋め込みしてもらっています。

ここから先が私の仕事になります。形にはなったので、あとはひたすら綺麗にするだけです。

ぎゃぁあー
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21.09.26

年一回くらいあります。眼鏡が車に轢かれた案件です。

金具がグニャっといっちゃってて、まずそれを戻して畳みが正常になるようにするまでが一苦労でした。結構な破損に見えますが、レンズ周りが切れていなければ何とかなります。金具は使えなければ、再度埋め込みをしてもらえるので、これは直ります。

一旦、工場送りです。

すげー
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21.09.13

特に何も書かなかったら、パッと見でフランスのヴィンテージかなーとか、そんな印象を持たれるでしょう。カッコいいですよね。

お持ち込みだったんですけどコレ、現行品です。バッファローホーンのオーダーメイドです。

見れば見るほど良い感じです。

こういう状況なので、オーダーメイドといいつつオンラインであれこれ条件を指定して作ったみたいでして、仮縫いみたいなのが無くていきなり完成品という感じらしいです。ということで私の出番です。

鼻パッドがロケット型で、目頭に刺さるみたいなのでそれを直しました。

ちなみにこれ、タイ製です。こういう状況ですしなかなか海越えられないので、いきなり完成品ってなってしまったみたいです。今まで見てきたヴィンテージの再現品の中で、一番再現性が高くて尚且つカッコ良かったです。ビビりました。

某トリニティ感があって良いです
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21.08.17

枠替えのご依頼でした。

「この中から使えそうなものがあれば…」と、3本ほどフレームを持参していただき拝見したところ国産チタンフレームに混ざって、明らかに光沢が違うものが1本混ざっていまして、それがこのフレームでした。金無垢のナイロールです。腕の飾りが凝っていまして、K18YG・K18PG・K14WGでネジってあります。これがトップの画像の某トリニティ感な部分なんですけど、華やか過ぎずいい感じでした。玉型次第では、男の人でも違和感なくかけられて、エレガントな感じをちょい足しできる、良い装飾だなと思いました。

いまから20年〜30年前の金価格が落ち着いていた時代に、やはりそれなりに金無垢のフレームは売れていますね。出張するようになってお持ち込みの枠替え案件は、もう3本目かそこらです。それを、結局は3〜5年で使い捨てっぽく販売しちゃっている結果、眼鏡が10年かそれ以上漂流してしまい、眼鏡界最果てのブルバキに辿りついてしまっているわけですから、色々事情はあれどいかんなあという気がします。販売するときは、おそらく一生モノとか言っているでしょうしね。

これが、お持ち込み時の状態です。使用感はありますが、そもそも錆びる金属ではありませんから、基本は使えるという態度で臨むべきかなとは思います。もちろん腐らないですし。先セルはヒビ割れがあり、汎用品で交換です。パッドは今買うと高いですし、白化が進んでいないのでバフがけで対応します。

レンズ下端を吊る、ナイロン糸は交換です。特別な話でも無いんですけど、レンズ上端のガイドももちろん交換できます。何パターンかありますが、だいたい日本のは金属の溝に、ダルマ型のナイロンレールを噛ませています。これも念のため交換です。

完成が上二枚です。三枚目は、レールと糸を変えてレンズを嵌め込む前の段階です。皮脂を除去して、糸も時間が経つと黄ばみが出ますから、透明な新品に変えることで眼鏡全体の光沢を蘇らせます。

ちなみに。パッドのセルとナイロンレールが含まれていますが、大体の重量で14グラムです。やっぱりフルリムで20グラム前後、ナイロールで15グラム前後という感じです。これは、例えば金の使用量と上代の関係で、だいたいどんなフレームもこれくらいの金の使用量でこれくらいの値段で、金の眼鏡の世界は足並みが揃えている・揃ってしまっている、そんな風にも説明出来そうです。あとは、眼鏡の設計の観点からしますと、81年にチタンのフレームが誕生してから“良い眼鏡”の観点として軽さが登場し、尚且つ普及してくるわけです。「とにかく軽い眼鏡下さい」という要望は、結構あると思います。それか、なんでその眼鏡買ったの?という質問の答えに、「軽いから!」という返答がまず返ってくるとかですね。軽さは、今も眼鏡フレームにおける強烈な価値の一つです。

そうなりますと、貴金属の良さの観点のひとつ「重量がある」というところと反発し合います。どっちを重視したら良いのか?煩悶しつつ時代が流れて悪戦苦闘しているうちに、これくらいの重量なら違和感なく掛けられるだろうということで、先ほどの数値に様々な商品の重量が収束していったのかもしれませんね。重量バランスも大事なんですけど、そもそも総重量があり過ぎる場合には、顔面に乗せた時のバランスという議論は立ち込めることも無く、ただ不快で痛いということになります。ですから、一般的な金無垢の眼鏡がこの重量なので、それより重い眼鏡を作りましたというだけでは、即座に凄い!みたいにならないのが眼鏡における強い制約条件でして、時計やジュエリーと違って表現が多種多彩にモリモリ増えていかないのは、そういう難しさがあるからかもしれません。

ようやく現物見れました
修理とメンテ

21.07.27

AOのライセンスの銀無垢です。存在はだいぶ前から把握しておりましたが、ようやく持ち込みがあり、現物を拝見することが出来ました。丸の42ミリです。

白さとくすみの無さから、おそらくロジウムメッキがしてあると思います。

やはりメーカーは違えど、銀という素材の柔らかさを気にかけながらフレームの製作をしていたようです。全体的に線は太く、ブリッジは2ミリ超えています。

リム周り、腕にプレスで模様が入っています。

ネジはステンレスです。ネジ周りはステンレスでは無く、銀にそのままネジのタップが切ってあります。

抱きの鼻パッドです。厚みがあってカッコいいです。

おそらく10年くらい前だと推測していますが、いつの商品なのかは不明です。持ち込みも始めてでしたし、流通量が少なかったのかもしれません。

先セルの無いままお持ち込みでした。ややムリ言って、いつもの銀無垢等を作ってもらっているメーカーさんに、ケーブルテンプルに改造してもらいました。

ピタッと収めるために
修理とメンテ

21.06.16

お持ち込みでした。超カッコいいですね。ミッドセンチュリーのカッコいい家具みたいな雰囲気出ています。

横のリベットも、カッコいいの付いています。

何だかんだ私もガラス信者だったりしますから、これに先日紹介したガラス1.52の単層コートのレンズをはめていきます。

今回のブツは、2つ難しかった点があります。一つ目は、察するにこれくらいの精度だったのかなと、古い物だからしょうがないかなという感じですが、スタートからリムのネジが潰れていました。

傷も全く無く、メッキが剥がれていないのでおそらく初めからこんな感じだったのかなと。このフレームに限らず、何度か同じようなネジで同じような溝の処理が甘いネジを見かけたことがあります。グッと押し込んで回すと、頭が飛ぶことがあるので、出来るだけオリジナルパーツを残すためにも超音波洗浄かけたり温めたりしてゆっくりと回していきます。

もう一つは毎度おなじみの、眉パーツがリムに被さってしまっている点です。度数が低ければ問題なしですが、度数が高ければ眉パーツと干渉してしまいます。

今回は遠視系の方で凸レンズ(真ん中が一番厚く、縁が薄いレンズ)でしたが、実際に加工機から上がってきたレンズを見ますと、それなりな縁厚です。よって、干渉してしまいました。

右側の眉がパシッとハマった状態と比較しますと歴然です。左側の鼻付近、パーツが3ミリほど浮いています。これくらいの干渉となると、レンズ周囲の面取りを増やしても干渉を回避できそうにありません。そこで眉パーツをリムのラインにはみ出さず合うように削り、全てがキッチリカッチリ収まるように調整します。この作業がひたすらに長いです。全部が上手くいくと、トップ画像みたいにピタッと決まります。

あまり何度も書くと根に持ち過ぎだろと思われてしまうのでアレなんですけど、サーモントの枠入れ時に眉を外す必要無いでしょと言われたことがありました。確かに仰る通りで、はめるだけならそうです。

例えば今回の場合、眉を外さずに枠入れをしますと、レンズ上部はフレームの金属部分が保持するのではなく眉部分がレンズに接地して保持することになります。また、はめ込んだレンズがガタガタ動かないためにはコンマ何ミリのレベルでレンズが大きい必要があります。それにより内側から枠を圧迫する必要があります。今回のケースにおいて干渉がそのまま未処理の場合、上部の眉パーツを内側から圧迫することになります。眉パーツはプラスチックです。固定するためのネジ穴付近は余白も少なく、どう見ても脆弱そうです。中古のヴィンテージ眼鏡のサーモントを観察しますと、ネジ穴付近が割れてダメになった物が多いです。そこでその原因に対しての推測をして、眉パーツへの干渉を0にした状態に持っていこうと考えて、いつもパーツを外して枠入れをしています。それだけです。

あと眉パーツを外す理由としましては、めちゃくちゃどうでも良いことですが、アメリカのサーモントの試行錯誤が垣間見えるところが面白いです。どういう構造が優れているのか、色々試した形跡があります。特に今回のボシュロムは、耳側が一味違った眉パーツの固定方法でした。おかげさまで、わたしは初めて遭遇出来ました。まさかのスライド式です。

もう、そういう時代でしょ
修理とメンテ

21.06.13

もう引き渡して、手元に無いので書いておこうかなと。金無垢のフルリムの持ち込みでした。使えるかどうかはネジ次第ですし、開かなければネジ抜けばいいです。とりあえずは、食べ物とかと違って腐るものでは無いので、そして錆びるものでもないので、なんとかなります。汎用の金無垢のネジもそれなりにすぐに取り寄せ可能です。

芯金が金無垢のタイプです。上が持ち込み時で、下が磨き後です。金の値段がアレなんで、何だかんだ新品で買い換えるとどえりゃあ値段になりますから、磨いて再利用です。

計りも食品用ですし、鼻パッドのプラスチック部分が入っているので参考値ではありますが、グラムにするとこんなもんです。経験上、20グラム越えると凄いなと思います。現行物だと、同じような形でナイロールにする場合が多いのではないでしょうか。それで大体17グラム付近だった記憶があります。

20年くらい前に買ったというので、ちなみにで購入価格を教えて頂けましたが、なんかほんといい時代があったなあって思ってしまいました。定価なのかセール価格なのかは不明ですが、フルリムで20万円しなかったですって。もうその値に戻りそうに無いですから、悔しがってもしょうがないんですけど。田中貴金属で調べてみても、例えば2000年は平均1,014円/gですから、定価だったのかもです。

外務省のホームページ、キッズ外務省コーナーの世界いろいろ雑学ランキングに、ちゃんと金の年間産出量のランキングもあります。それを見ると、1位の中国が380トンです。グラムにすると380,000,000gです。これだと全然想像出来ないので、金の比重を19.3g/㎤として体積に変換します。これはただ電卓叩くだけなので、19,689,119㎤と出てきます。値が大きすぎるので、19.7㎥とすると何となくイメージが湧くかもです。それをさらに、記号がキーボードに無いのでややこしい書き方しますが、(x)^3=19.7となるようなxを求めますと((19.7)^(1/3)とグーグル電卓に入力です)、およそx=2.7と求められます。つまり、一辺が2.7メートルのサイコロくらいしか採れないということです。同じようにして、世界の年間採掘量が大体3,000トンらしいので計算していきますと155㎥となりまして、それでも大体一辺が5.4メートルのサイコロ程度の大きさしか無いですから、確かに少ないなと感じられます。

察するに、SDGsの流れもありまして1トンの岩石から数g〜程度しか採れない金ってどうなの的な見方もあるんでしょうけど、人間が頑張ってこれだけの量かって思いますと個人的にはやっぱり魅力的です。

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