度なしのレンズって、結構重いんですよね。体積がそれなりにあるということです。ガラスレンズの加工をしていると特に感じますが、度なしの重たさはなかなかです。組み上がり品でそれを実感できるのは、例えばレイバンのラージメタルのずっしり感とかですね。
加工後の同一形状で比べたときに、均一な厚みのものと真ん中と縁で厚みが異なる湾曲したものを比べたときに、どちらが重たいか?これを調べてみようと思います。
今回のケースでは、一個前のブログに載せた銀無垢のサーモントの玉型で比較を行っています。度数の有無とデモレンズ時の重みの差を把握している事で、銀無垢のサーモントの掛け心地が、着用者の度数云々でどれくらい変わるのかが予想出来ます。試着と完成時のギャップを埋めることが可能です。販売店向きの成果ですね。
加工前の予想では、度付きが度なしの1.2倍〜1.5倍くらいに留まるかなと思っていました。まあまあの近視で厚みがあるレンズでも、度なしの2倍にはならないと。
結果は、流石にミラクルなんですけど度なしと度付きで重さが一緒という結果になりました(⑴と⑷の比較において)。
先ほどの銀無垢のサーモントの製作時に、ちょうどいい例が揃いました。同一フレームで、
⑴度なし(CR39)
⑵度なし(デモレンズ)
⑶度つきと同じ素材で度なし(1.60材)
⑷自分の度数(1.67材)
この4つで比較してみます。
ちなみに私の度数と設計は、ざっくり s-5.50 c-0.75 ax180 で、FPD≒PDです。流石に少しでも軽くということで、1.67使いました。
⑴度なしCR(色付き)
⑵度なしデモレンズ(ペラペラのあれ)
⑶度なし1.60材の可視光調光
⑷私の度数の1.67材の可視光調光
⑷の補足①です。中心厚が1.0ミリで、縁厚が耳側の水平方向で4.2ミリです。余談ですが1.60材だと縁厚が4.8ミリくらいになる計算でした。トップ画像がそれで、リムからのレンズのはみ出し具合はあんな感じです。
⑷の補足②です。数字だとよく分からないので、私の度数というのは風呂はメガネ無しでギリいけるくらいな感じです。視力0.1が無いので、視力表の一番上が分からないです。くっきり見える距離が20センチくらいになりますから、露天風呂が楽しめない度数です。
⑶と⑷の補足です。材質が異なりますが同一メーカーの同一コーティング且つ比重は両者ほとんど一緒なので、今回は⑶と⑷は素材が一緒とみなし、⑶と⑷の比較によって単純に度数の有無での重さの比較が出来るものとします。
予想に反して、ミラクルで⑴と⑷が一緒になりました。⑶と⑷でも、度付きにしても1割増し以下に抑えられているという結果に。
⑵とそれ以外を比較することで見えてくることがあります。メガネとしていざ使おうとなりますと、デモレンズを交換しないといけないのですが、なにかしらのレンズに入れ替えると、大体みんな同じ重さになるということです。そうであれば、店頭陳列時に初めから⑴か⑶に交換しておけば、試着時と完成品の装着時の感覚のギャップが生まれにくいということになります。
⑷はとりあえず強めの近視で縁が厚いレンズなんだけど、FPD≒PDという条件によって、厚みがあるところが大体どこもカットされているという都合のいい状況でした。同じ度数でも、例えばPDが60ミリなら耳側が厚くなりますから違う結果になりそうです。ただその場合、鼻側は今回よりも縁が薄くなるので、差し引きで大幅に重たくなるとは考えにくいです。
一方で、遠視系の凸レンズは一番厚みが出る箇所が加工後もレンズに居続けます。外径指定が出来るかどうかがかなり大事になります。凹レンズでの考察とは異なりまして、FPDとPDの関係で⑶<⑷となりやすいかなと、新たな予想もたちます。
もちろん、レンズサイズも関係があります。銀無垢のサーモントはレンズサイズ47ミリでした。レンズが大きければ、⑴<⑷だったことでしょう。
ややはじめの主題とズレる部分もありましたが、度なしのレンズもまあまあ重いことがこれで分かりました。割と強めな近視のレンズと同じくらいの重さという結果を得ました。ついでに、今回用いたフレームにおいては、あらかじめ⑴か⑶に変えておくことのメリットを把握することが出来ました。