新旧の比較
ヴィンテージのメガネ

17.03.23

左:1920年代 合金の金張り

右:現行 サンプラチナのメガネ

左はお客さんのお預かり品。デッドではないので、やはり爪智は爪がやられています。爪が残っていれば、ハンマーで叩いて伸ばすという修理もできますが、全く無い場合は、さすがに何とも出来ないので残念です。

まきつるタイプなので、開き切っても顔に乗りますし、気にせず使って頂く予定です。

現行品もピンキリですが、扱っているサンプラチナに関しては、爪ももちろん硬いので早々ダメにはなりません。

新入荷
雑記

17.03.23

ブルータスの古いのが入りました。店内閲覧用です。83年のアフリカ特集です。ネットのある今の時代よりも、情報が詰まっています。文字から熱量が伝わるいい雑誌です。是非ご覧ください。

 

最近自問しておりますのは、このような先進国以外の文化とか道具とか織物を鑑賞するときに、日本の尺度を用いて眺めていないかということです。

それもこれも、小林秀雄さんの影響でしょうね。歴史について、正確ではないですが、こんな感じで仰っていた記憶があります。歴史を学ぶということは、現代からその歴史上の出来事を眺めるのではなく、あなた自身の意識もその年代に向かわせて、そのときに何が見えるのか云々…というニュアンスでした。批判と批評の違いについて説明される時も、同じようなことを仰っていました。意識ごとタイムスリップしろ、という感じだったと思います。

つまり、アフリカとかの道具の話題に戻りますと、日本のものに比べて下手ウマな感じが良いとか、欧米のものに比べて粗野な感じが良いとかよりも、もっと他に、その土地に根ざした尺度やら何やらがあって、その測り方による良さがあるはずです。今迄わたしは、それこそ下手ウマとか粗野だから良いと判断しておりました。それも良さなんでしょうが、現代のプロダクトと比較して行われた価値判断でした。それを反省している最中です。

私の扱うメガネもそうです。いまと比べて面白いというのもそうですが、その時代はそれがイケてるわけなので、その時代なりのイケてる理由をそれぞれに発見して、皆さまにお伝えしなくてはいけないですね。

日本人のメガネ
雑記

17.03.19

70年代の市井の人のメガネを調べていたら、たまたま見つけました。大阪万博の図鑑より。大阪万博中に、世界中の民芸を集めて骨董市が開かれていたみたいです。面白そうで羨ましい。

やはりこの時代は、セル枠が圧倒的ですね。ちょっとお金ありそうな年配の方が、ローデンストック系の質実剛健なブロータイプのメガネをかけています。セルが多数派です。

私にメガネの加工を教えてくれた現在66歳の方も、業界入りたてのときのメガネの様子を聞いてみたところ、「セル枠ばっかりだった」みたいなことを仰っていたので、やっぱりそんな感じだったんだなと、改めて納得しております。

日本のフレームは今よりも全然仕上がりが綺麗ではないです。特にメタルフレームは、今でもデッドストックで出ますが、さすがに…という仕上がりの物もあります。同時代のローデンストックやマルヴィッツやツァイスのメタルフレームや、フランスのモレルに比べると、やや劣ります。

だからこそおそらく70年代までは、良いメガネ=ドイツみたいな認識が、日本にあったわけです。古いメガネ屋さんの看板には、大体「ローデンストック」の文字が入っています。

そして、81年に日本が世界初のチタンフレームの開発し、じわじわ盛り返していくのでしょうね。

自分で試しています
目のことレンズのこと

17.03.16

ヴィンテージのメガネに対して、今回はレンズの質感とか見た目ではなくて、性能を重視してレンズを選びました。

上の眉毛のメガネは、70年代のドイツ、ローデンストックのフレームに被写界深度が深くなる単焦点レンズを搭載しました。また、夏場のサングラスとしても使いたいので、青色光カットの第1世代である、短波長吸収のカラーレンズを搭載しました。

下のツーブリッジのメガネは、同じ年代のフランス製です。メーカーはホヤで、この時代ですと製造がフランスのエッセルです。レンズは目線から10ミリ下に、手元をアシストする度数がちょっとだけ入ったレンズです。単焦点ぽく紹介されることもありますが厳密には累進レンズです。420ナノメートルの波長をカットする素材を染み込ませていますので、若干グレーのレンズです。

上も下も、短波長吸収カラーを入れたり420ナノの短波長をカットする素材で、チラツキを軽減しております。それにより遠くがパキッと見えるようになります。手元は、被写界深度を上げてピント調節がしやすくするのか、はたまたサポートする度数を入れるのか、という違いです。いずれにしましても、普通の単焦点レンズに比べて手元も楽になることを意図して選びました。

今のところの実感です。上は、やはりパンフォーカス気味になるのか、遠くも近くも綺麗な感じがします。空間が迫ってくるような感覚があります。手元よりも遠くが鮮明になったのを強く感じます。

下は、手元の作業が今はあまり無いので実感はありませんが、揺れや歪みが無いので、確かにほぼ単焦点と変わらない使い心地で、累進の入門としても進めやすいなぁという感想です。左右上下の視線移動も滑らかな気がします。本は読みやすいかもという感じです。特に、今は室内灯が全てLEDの所為か、420ナノの楽さはちょっと有るかもしれません。

私の場合は、どちらも夜になった時の目のしょぼつきが軽減出来ておりますので、それなりに効果はありそうです。しばらく続けます。もう少ししましたら、度なしの体感キットみたいなのが出来るはずですので、お店で試してみて下さい。今のメガネや裸眼にかざすだけお試しできるキットを作ります。

新レンズの到着
目のことレンズのこと

17.03.16

420ナノのレンズがようやく届きました。一番右です。

(左は通常、真ん中は白コートのレンズ、右は420ナノ)

短波長とか青色光とかあれこれ聞きますが、420ナノメートルの波長は可視光となります。可視光を遮っていますので、色味が出ます。グレーぽいです。茶色っぽいメーカーさんもあります。

自分の度数なので、厚めです。

遠視について
目のことレンズのこと

17.03.15

視力表を載せてみました。

例えば近視(遠くが見えない)の場合。視力0.2くらいの人は、おおよそ S-1.50 くらいの度数が入ります。視力0.2の場合は、間違いなく生活に支障が出ますので、メガネかコンタクトの着用をされていると思います。

では逆に、遠視というものを考えます。近視の逆になりますので、近くが見づらいひとです。

人間は、筋肉を使って近くにピントを合わせることが出来ますので、遠視の「近くが見づらい」という症状は、潜伏しがちです。特に若いうちは筋肉がフレッシュなので、筋肉が衰え始めた老視の訴えの時に、結果遠視でしたという発見が多いです。

遠視の場合、例えば先の例と比較出来るように S+1.50 の遠視は、どのように風景が見えるかと言いますと、年齢や様々な条件にもよりますが、基本は視力1.0以上は見えると思います。ハッキリとしたクリアっぽい視界でしょう。同じパワーの近視は、風景がぼやけて不安を覚えますが、遠視の場合は遠くもクッキリ見えていて、近くも若ければ見えていますから、裸眼で生活していることが多いと思います。メガネなんて考えたことが無いかもしれません。

視力の数値が高ければ高いほど良いという風潮の中では、遠視なのか正常な眼なのか、簡単な検眼では消去されがちです。あれこれ見えておりますし、メガネにも慣れにくいというのもありますので、結局老眼で近くが見えなくなるまで放置されがちです。ただ、自律神経は働きっぱなしですので、種々の身体への影響はあるでしょう。そこが怖いところです。

あとは、遠視は潜伏しがちです。簡単に言いますと、弱く値が出ます。検眼の方法や被検者の緊張の有無等々で、値が +1.00 くらい多めに振れることもあります。

とりあえず、眼が良いと思っている方も検眼をお待ちしておりますよ、という話でした。軽めの遠視のような、昔は問題無かった眼の屈折状態でも、電子機器の長時間の使用・固視によって支障が出始めそう・出始めた、ということでしょうね。

フレームは古いですが、最新の検眼の理論が乗っかるというのが、良いなあと感じて日々過ごしております。

検眼について
目のことレンズのこと

17.03.13

何度目かのご来店。安めのメガネ屋さんで買った、手元用のレンズが使えないのを直したのがきっかけです。

今回は2回目の検眼です。

「メガネは使いやすくなったが、酒に酔いやすくなった」

とのことでした。遠視の方は筋肉が弛緩して自律神経も緩むので、酒が効きやすくなったのかもしれません。ただ、悪酔いするようになったとのことでしたので、再検査です。私から申し出ました。休みを使って来てくれたので有難いです。

1回目の検眼のときも、そこで出た数値をそのまま仮枠で試して実際のメガネにするわけではありません。メガネへの慣れや年齢、度数を加味して加減します。今回は、加減の操作による未矯正分の度数を足すのでは無く、初めから検眼しました。

検眼への緊張、店への緊張が解けてきていると思われましたので、数値が大幅に変わりそうな予想がついた為です。実際に遠視の検眼(主訴は、老眼鏡:手元が見えない)をしましたが、潜伏していた遠視が前回に比べて4ポイントも出てきました。そうしますと、乱視の検眼の回答もハッキリしますので、矯正が上手くいきます。

もちろん、検者である私のスキルにも依存します。加えて、被検者の緊張具合とか検眼への慣れも加わります。回数を重ねるとわかることは多々です。気楽に検眼にお越しください。また、経過観測は大事なことですので、ご購入して頂いたお客さんもボチボチ時間のあるときは来ていただけると助かります。

リムの種類
メガネのはなし

17.03.11

細かい話。1920年代のメガネの写真です。ヴィンテージメガネの好きな方は、掘りまくると、この辺りに大体たどり着きます。

正面から見た感じだと分かりませんが、一番上と三番目のメガネは、カットリムと呼ばれるリムの形状です。昨今のメガネで、敢えてカットリムをすることが無いので、多くの方は新品でも見たことが無いかもしれません。

そもそもですが、リムとはレンズを囲む部分を指します。通常は、内側がレンズを止めるために薬研型に凹み、外側は平らです。

ですが、カットリムの場合は、リムの外側も薬研型に尖っています。リム自体に厚みがあります。もちろん、デザインの為でもあるのでしょう。ですが、強度枠という呼び方もありまして、強い度数のレンズの、ふち厚が目立ちにくいようにする為に誕生したとも考えられます。

通常のリムを引くのと違い、形を作ってから内側の薬研を切削する(カット)します。作るのに手間がかかりますので、あんまり見ないです。写真を撮りたかったですが、私のストックにもカットリムはありませんでした。

メガネ屋さんを覗くときは、よければ気にしてみてください。なかなか綺麗です。

ローダフレックス
メガネのはなし

17.03.08

ローデンストックのネタ続き。

ローダフレックスというバネ蝶番があります。スライド式のバネ蝶番でして、バネのテンションのかかり方がしなやかです。テンプル開閉の時、特に閉じる時ですが、バネの力が一気に抜けないので、パチンと閉じません。おかげでバネ切れもしにくい、良い蝶番です。

スライドバネ蝶番ですが、昨今は海外製のメガネにもついております。ですが、スライドするケース部分に高い精度がいるため、海外製でも、スライドバネ蝶番部分のパーツ供給は日本です。

一般的にバネ蝶番となりますと、箱バネが多いですが、そんなに見ごたえのあるものではないでしょうね。ローダフレックスのようなスライドバネ蝶番の場合は、日本の技術が込められているので嬉しくなります。

今日も磨いております
修理とメンテ

17.03.08

現行のローデンストック。私がメガネ業界に入る前に買った物を、今は父が使っております。

さすがに4年くらい使用しており、こまめに洗浄をしていないので白化が進んでおります。

スライドバネ蝶番のローダフレックスも固着しております。

磨きと、超音波洗浄で、ほぼ元どおりになりました。

自分の仕事を、直接家族や親戚に届けることが出来るのはいいもんだなと思い始めました。

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