コク出し
目のことレンズのこと

19.06.02

久々に真面目なことを書いて、店にコクを出そうと思います。

皆さんも、何本かメガネを所持し始めると感じたことがあると思います。同じ度数、同じ芯取り(光学中心を適切にフレームにセットする)でも、使用感と見え具合に若干の差があると。

よくあるのがセルフレームとメタルフレームの掛け替えの時で、セルの方が総じて眼にピッタリしますから、度数効果で強く出る場合です。セルのフィッティング不良で、メガネが下がった状態が恒常的であれば、度数は弱く出ます。これはコンタクトの話にも繋がります。

今回の考察したいケースは、それとは異なります。2本ともメタルフレーム、おそらく頂間距離も傾斜も殆ど同じ、瞳孔と光学中心の関係も同じ、レンズ設計も球面設計で屈折率も同じで、長く使った時に、集中力や眼の疲れ方に差があるケースです。

この2本とも私が加工したので、残すはアレしかありません。アレとはレンズの中心厚です。プラス処方の方でした。中心厚の違いで生じる、像の拡大・縮小効果の差でしょう。業界用語では Spectacle Magnification と言います。略してS.M.と表記します。

1本目は、フレームからご購入頂きレンズはコーティングまでしっかり拘って、どうせ特注ならと、ついでに外径指定をしてプラスレンズの中心厚を削りました。2本目は、既に持っていたフレームのレンズ交換でして、費用の面もあり、在庫レンズから交換しております。

ちなみに、球面度数は+1.00です。レンズが小さい場合は、プラス度数のみ外径指定で薄く出来ます。費用も安いです。

外径指定前。屈折率1.60選択で中心厚2.7ミリ。ごめんなさい、こっちが2本目
屈折率1.60選択、外径55ミリ指定。0.7ミリ削れます。こっちが1本目

今回の状況ですと、1本目は中心厚が2.0ミリで、2本目は中心厚が2.7ミリです。ここで注意しておきたいのは、“屈折率、レンズ設計、度数”は、同じという点です。

では、度数も屈折率もレンズ設計も同じレンズ、異なる条件が中心厚のみという条件で、像の拡大効果にどれほど差があるかを調べていきます。ここまで読んでくださった皆さん、お気付きの通り、森道とサカスプと日曜日という条件が重なって、ブルバキは暇です。

まずは、S.M.の式を調べます。認定眼鏡士であれば一度は計算をしたはずです。流石に私も公式は覚えていません。資格は、必要なときに必要な箇所が引き出せることが肝心だと、個人的には考えています。

眼鏡光学Ⅲ (キクチ眼鏡専門学校) p.31

こういう式が出てくると、それだけで確かにコクが出そうですが、実際は難しくはありませんしコクはまだまだこれからです。複雑さに惑わされずによく見ると足し算・引き算・掛け算・割り算しか含まれていない、簡単な構成です。それに、大人になれば、こういうのは得意な人に任せればO.K.でしょう。

計算は得意な人に任せるとしても、この式の大事な心は掴みたいところです。それはS.M.がM1とM2の掛け算でわかることです。そしてM1を形状要素倍率と呼び、M2を度数要素倍率と呼びますが、つまりレンズを通って出来る像は、レンズの形(厚みや前面のカーブ)でも、レンズの度数でも、どっちでも変わりますよと、伝えてくれています。何となく自然な認識通りで良くて、レンズのアレコレが変わるとやっぱり連動して像も大きくなったり小さくなったりしますというわけです。

おそらくM2の方は、何となく皆さんご存知なはず。強い近視の人は、レンズ越しの眼が小さく見え、逆に遠視や老眼が強いとレンズ越しの眼が大きく見えます。それです。

そして、馴染みのないM1、今回はこれを比較することで1本目と2本目の像の大きさを比較出来ます。念のため、両者M2は同じですから。

ちなみに、D1という項は、とりあえず共に+3.00にしています。外径指定によって前面のカーブに変更があり、若干差が出ているかもしれません。むしろそう。ただ無視できる差として仮定し、レンズの中心厚の差が、像の大きさにどれくらい影響を及ぼすかのみに絞って計算してみました。

M1(t=2.0)=1.0389 裸眼より3.9パーセント像の拡大

M1(t=2.7)=1.0533 裸眼より5.3パーセント像の拡大

およそ、1.4パーセントの差でした。うん、思ったより小さい。ただ、これくらいの差でも、使用感の違いを感じる場合もあるようです。統計を取った訳ではなさそうですが、本の例題に近いものが載っていました。そして、1%の差も侮れないですよの警句も載っており、実際にそういう症例がぼちぼちありそうなことが読み取れます。あるから例題なんでしょうね。

レンズの値段について、やっぱり皆さん気になりますしブルバキでも沢山尋ねられます。物の違い、経営状況の違い等々の沢山の違いがあって簡単には返答できません。他所の値段を聞いても、そうでしょうねぇくらいしか反応出来なかったりもします。まあでも、差について、自分の中から言えることの一つは、こういうコクの違いです。あんまり自分から言うことではないんですけど。ほとんど自慢ですし。

そしてブルバキも、まだまだ足りていないです。もっとコクを出したいなと、いつも考えています。ちょうどお客さんに使用感の違いを教えて頂いて、その疑問にお答えしたかったので書いてみました。

欲しいものがありましたら
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

19.05.31

銀無垢のオーダー承ります。オーダーといっても、パーツを自由にデザイン出来るとかのアレじゃなくて、

・テンプル長を自分の長さに合わせる

・玉型変更(レンズサイズ・形状)

等々です。

そろそろ2年間、銀無垢のラインは動いておりません。ということで、特別に動かしてもらいます。6月末か、7月頭くらいまで希望をとりまして、年内に完成の予定です。

パーツを自由にデザインする等々を受けないのは、型代という障壁も理由です。ですが、それ以上の理由があります。ある程度、餅は餅屋でプロが細部をデザインした物の方がバランスが良くて美しく、最終的にはそれらの組み合わせの方が納得のいく買い物になると、ブルバキでは考えているからです。なので、頭部の形状等々を鑑みて、構造的に必要な箇所を補うような特注品を作るという流れです。一から好きなデザインを…ということは考えておりません。

店頭のみ特注は承ります。内金もある程度は頂きます。もちろん、キャンセルになっても返却しません。前は性善説で内金なしでやってたんですけど、アレコレありまして不可になりました。

私でお役に立てれば幸いです。頑張ります。

ビル、廊下、個人商店
営業案内

19.05.31

明日も明後日も、ちゃんと開けます。世間のフェスの動き、モノよりコトの雰囲気に負けずにモノだけでお店開けます。よろしくお願い致します。

ちなみに通常のレンズ枠入れは、全て終わりました。受け取り出来ます。手直し、修理と、見本カラーの方は今日は間に合いませんでした。ごめんなさい。

サピエンス全史、上巻読み終えました。普段、メガネとその周辺と若干のスケベしか考えておりませんから、人類史なんて触れようと思ったことも無いですし、自分のスケール超えて考えてみる余裕も無かったんですけど、たまには良いですね。賢くなった気分です。

上巻の個人的ハイライトは、冒頭の写真のここでした。正直、途中で本の着地点を見失いかけましたが、多分これなんだろうなとスッと入ってきました。この為に読んだなと、いまはそんな気分です。

認知的不協和という言葉をここで覚えました。小林秀雄さんか岡潔さんのどちらかも、葛藤の無いものはつまらない的なことを言っていた気がしております。どの本か忘れましたが、そういうことらしいです。スパイスとしてやっぱり矛盾も要るらしいです。

特に本の、認知的不協和の例が絶品でした。そうですよね、ブルバキで言えば、お店同士の理解もそうだと思います。経営課題と、検眼の課題、フレーム(ファッション)の課題等々の、葛藤の相互の告白だけで終われば、仲良く出来そうなんですけどね。基本は手法の差異を突いて駄目のレッテルを貼られて終わりになりがちですから、理解までは程遠いときが殆どでしょう。

ひさびさに映画
ヴィンテージのメガネ

19.05.31

面白かったです。主人公ではなくて、この黄色いレンズのウォルターが最高でした。

主人公では無いです。ウォルター

レイバンのアウトドアーズかと思っていましたが、別っぽいです。よって、レンズもアンバーマチックでは無いようです。ティアドロップに薄い茶やアンバーカラーというスタイルは70年代くらいです。ベトナム戦争を引きずっている役にはぴったりです。

ということで、真似して作りました。度無しで裏面マルチです。相変わらず HOYA の青色光カットカラーが、絶妙な黄色よりの茶色でカッコ良いです。さすがに、オフィスじゃ無理ですよねこの色味。

完成させました
ヴィンテージのメガネ

19.05.30

コラーニのメガネも、初期の物は凄まじいです。ライセンス物だからと、侮れないです。

濃い青を入れました。アリアーテに濃度75%以上の青が無いので、見本色として置いておけば良いかなぁという感じです。

これに関しては、「メガネっつーもんは、こうこうこうで、あれがアレじゃ無いと駄目なんだよね…」というのは一切必要なくて、むしろそれらが介在する余地が無いところが良さです。メガネという制約条件、フロントの板1枚とテンプルの棒2本で、どれだけ面白くやれるか?みたいなことが示されているだけで最高です。

ビジョントレーニングの話を聞けました
雑記

19.05.30

昨日は、無事に聴講出来ました。

眼の力の抜きにくさ、ピント調節が残りやすいことを握り拳で説明する方法が、実感を伴った理解を提供できるので絶品でした。真似します。

拳に力を入れようと意識します。グッと力一杯握ります。しばらくして、緩めようと意識します。拳の力を抜きます。するとどうでしょう。初期状態に、瞬時に戻りましたか?おそらく戻っていなくて、拳に力を込めた時の感覚が残っているはずです。力を抜いたのにも関わらず、力を込めた余韻が残っている状態に移行したということでして、しばらく、拳全体がジワッとしているはずです。その状態からさらに経つと、初期状態に戻れるはずです。

これが眼でも起こっています。拳を握るという行為を、例えばスマホを見ると置き換えるだけです。んーなるほど。

明日休みます
営業案内

19.05.28

明日は休みます。ビジョントレーニングの講習会を聞く予定です。

なぜ聞く予定か?それは返信ファックスをもらっていないからです。今日確認しようと思っていたら、ありがたく検眼になって17時過ぎて確認とれず。

あす現地に直で行って、予約取れてなくて断られて暇になっても、とりあえず休みます。加工は溢れてますし。

よろしくお願いします。

意図してなのか不明
ヴィンテージのメガネ

19.05.28

鼻から耳側にかけて、拡がりと迫力が絶妙なので、なんでかなと考えていました。先日、4本仕入れた最後が売れたので、目の前から消える前に観察し尽くしました。

リムのブリッジ側からテンプルにかけて、生地の厚みが違いました。鼻側で3.8ミリ、テンプル側で4.3ミリでした。ラインの拡がりと連動して、質量も増大させていました。狙ってやっているとすれば、相当手が掛かっています。

掛けると、顔に張り付くように、あたかもマスクのように顔の一部になります。黒色のフレームでは珍しいです。大体ゴリっと迫力で眼鏡顔にしてしまうのが黒枠の特徴なので。

質量のグラデーションは、自分では思いつかないですね。プロのデザインならではの良さがふんだんに盛り込まれた一本でした。


雑記

19.05.27

久しぶりに店を手直し。鏡の照明を変えただけですけど。今まではチューリップが掛かっていた箇所です。ここだけがレトロポップ過ぎて、1年くらい納得していなかったわけですが、今日で仕上がりました。スタンドミラー側がコレだったのに、窓際の鏡用の照明が全然関連性のないチューリップでして、その対称性が崩れていたのも気になっていた理由です。これで空間に調和がもたらされたと思います。

今日のニュースから
目のことレンズのこと

19.05.26

インスタあれだな、メガネ載せるとフォロワー減るけど、吊革と本栖湖のペナント載せたら4人増えたから、なんかもうあれだなー。前々から感じていたけどやっぱりアレだわー。

本題です。気になるニュースがありましたので。

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6b324568

片眼性の内斜視の症例がぼちぼちあるみたいです。非利眼の開散に関係があるようで、なるほどそういうことも起こりうるのか!という印象です。眼はどちらかと言えば開くのは苦手ですからね。この辺の眼の動きの話は、仮性近視云々にも関係してくる内容ですね。

確かに、近視の“内斜位”という今までにない組み合わせが増えているとは聞いていましたが、まさかこういう症例も出てきているんですね。確かに1件だけ、高校生のときにゲーム中に突然複視になったという方に会ったことはあります。少ない症例と言えども無視出来ないですね。

令和は、如何に良好な視覚を保持出来るかにかかっていますね。体調、気分、思考にもある程度、眼が関わってきますので。くどいですが、高い視力の値では無いです。

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