カテゴリー:目のことレンズのこと

バイフォーカルのハードコート
無垢のメガネ(925silver,サンプラチナ,木)

目のことレンズのこと

22.08.13

バイフォーカル(二重焦点)です。銀無垢の丸メガネに入れてみました。

30年くらい前は、私が幼稚園児のころは近所のスーパーへ買い出しに行くと見かけた記憶が薄っすらあるんですけど、昨今はほとんど見かけなくなりました。今もちゃんとあります。CR39のハードコートもまだ製作しているため、こういった一山のメガネに入れてみると、ヴィンテージ感が強く出ます。ガラスは調べてみないとですけど、マルチコートは製作していたはずです。

遠近両用のレンズとなると、一般的には累進タイプと呼ばれる、境目のないレンズが主流となりました。そんななか、バイフォーカルやEX等々境目のあるレンズたち、用途が見た目にダイレクトに反映されたやや原始的なレンズはどうなんだ?ただの退行か?みたいに思ってしまうかもしれません。実際にはそんなことはなく、最新の累進レンズでも克服出来ない利点がちゃんとあって、まだ残っています。レトロだから良いよねにプラス、光学的な特性が付加されてもうちょい良い感じになります。

従来の認定眼鏡士では、色々なタイプの遠近レンズの光学的な長短を考察し、主訴に合わせた提案をしましょうというスタンスです。ということで、主訴・ご要望次第ですけどバイフォーカルもアリですよ。フレームのレトロブームに乗っかって、レンズもレトロブームが来ると良いですね。バイフォーカルを見たことがない人が増えたときに、それが新鮮に見えてカッコいいとか。レンズに境目があるということが、美観に於いてネガティブな評価が下されやすかったんでしょうけど。そもそもそれって何でだっけ?境目があると何でカッコ悪いんだっけ?みたいになって、あっても良いじゃんみたいな風潮が出来ると、眼鏡屋としては主訴に対してのアプローチが増えるといいますか教則本通りに戻るといいますか、色々と解決がしやすくなって良いことだらけです。

認識
目のことレンズのこと

22.08.01

周りから野菜を頂く機会が増えました。私も大人になってしまったなあと感じます。

7月はジャガイモ強化月間で、これで方々から頂いて3回目です。コロッケを作ってクリンナップしましたが補填されましたので、また作ろうかなと思います。

コロッケを作ったことってありますか?ジャガイモから。特に牛肉コロッケを。私みたいに、たまにしか料理しない人間こそ、牛肉コロッケを一度作ることをオススメします。私は今のところ、世界で一番面倒くさい料理だと思っています。

料理レシピをのぞいても、工程数は少なく、パッといけそうな雰囲気を出していますけど、そこは魔宮です。安易な心持ちで挑むと、返り討ちにあいます。ちなみに、ジャガイモを茹でずにチンすれば時短で簡単よねって感覚だと返り討ちです。そんなもんじゃ無いですコロッケとは。ちなみにちなみに、遠足が帰り道を含むように、料理は調理器具の洗い物を含むと個人的には思っています。コロッケも、そこまで含んだコロッケをここでは指しています。

いまちょうど、一年ぶりくらいに三島由紀夫の『金閣寺』を読み直しました。世界を変えるには行動か認識かという相克に主人公が悩まされるんですけど、そうそう認識を変えるにはコロッケを作ることを私はオススメします。コロッケを作っていれば、主人公の溝口は金閣寺を焼かずに済んだのかもしれません。ともだちの柏木が小難しく言うから、あぁなってしまった訳でも無いんですけど、優しく「そうだ、コロッケを作ってみたら。」と言うだけで良かったのかもしれません。

一度作れば、スーパーのお惣菜のコロッケ、冷凍のコロッケ、なぜこんなに安いのか感動するようになります。そして、お惣菜の中でもやや控えめで位が下っぽい雰囲気で佇んでいる様子をみると、ニーチェが馬に抱きついて泣いたように、パックやフィルム越しにコロッケに頬ずりして泣きたくなります。

もちろん大人なので分かっていますよ。海外産のアレを使って…とか、工場で大量に作って…とか。効率化合理化の先に、惣菜のコロッケがあるんでしょうけど、そういう字面にちかい知識の話では無いんです。自分の経験を基にした実感をもってそれらを眺めると、そうだとしても凄いなとしみじみ思うようになります。この値段でこのクオリティかぁとか。効率化合理化に対しての、インディビジュアルなコロッケに向けられる努力とは違う種類の、凄まじい努力を感じることになるはずです。

クリピのダブル
目のことレンズのこと

22.07.19

スカッとした、エロい雰囲気の無いピンクのレンズを探していました。それがようやく見つかりました。

欲しかったイメージとしては、オックスフォードシャツのピンクが帯びている、あの感じです。男が着ても甘過ぎな雰囲気が出なくて、良い感じなお父さん感がプラスされるあのピンクっぽいレンズカラーを求めて、求めてとか言いつつ特に何もせず日々過ごしていましたが、急に見つかりました。

乾レンズのクリスタルピンクです。ちょっとオレンジっぽいのかもしれません。それか赤強めのピンクでは無くて黄色強めのピンクという表現が良いかもです。そのクリピを重ねて、見本色で作ってみました。ヴィンテージのアメリカやフランスフレームにある、fleshカラーみたいですね。

まさにfleshということで、肌にはぴったり。ピンクが勝たないです。日焼けが強化されるように見えます。

クリピはなんと言ってもコバが綺麗です。ツーポでは無くても存在感ありです。

銀無垢のサーモントのときに、こんな感じのカラー見本を作ってインスタに載せています。あれは調べたらヴァイオレットでした。あれも良かったんですけど、もっとしっかりピンクと認識出来て、なおかつ掛けたときにピンク感が強く出ないということで、いまはコレがオススメです。

可視光調光
目のことレンズのこと

22.05.06

4月27日から受注開始で、昨日届きました。HOYAの可視光調光レンズです。

いままで、眼鏡業界の調光ムーブメントに乗って来なかったですけど、今回は乗ります。理由は一つで可視光調光で緑のラインナップがあるからです。それがカッコ良さそうだったからです。そしてカッコ良かったです。

結局、調光の色抜けがどうのこうのとかありますけど、本当に瞬時にしっかりと抜けないと嫌だという感覚が強いと、眼鏡とサングラスの二個持ちになると思います。調光を使っていて、色が抜けているのか不安になって眼鏡を都度外して確認しているのであれば、二個持ってパパッと変えた方が、「色の眼鏡のままでどうしよう…」的なソワソワした気持ちもパッと切り替え出来ますので。

そこで“可視光”調光です。光があれば、基本色が入りっぱなしです。色が入りっぱなしというマインドが先に立っていることが大事です。色が抜けることを期待しない、期待しないことは心の平穏の基本です。

色抜けを期待しないとか言いつつも、結構濃度変化はありました。晴れた日(5月4日)の日中の店の中でこんな感じです。南側の窓全開で、作業机の周辺で濃度15%くらいでしょうか。窓に近づくと35パーセントくらいまで発色します。ある程度の光の強さはいるので、太陽の光が入らないLED照明下で、ほぼ透明でした。

外に出したらこんな感じです。30秒くらいで70パーセントくらいまで発色したっぽいです。結構暗いですね。

緑色の具合が、アリアーテトレスよりも青味が強く、涼しい感じです。一個前のアリアーテのアイスグリーンぽいです。そこも推しです。

今回は、フレームの難点を回避する為にも可視光調光にしております。たまにある、畳むとテンプル先がレンズに直撃するパターンです。そこで、掛け替えなく過ごせるように可視光調光にしてみました。

レンズもごちそう
目のことレンズのこと

22.02.04

ペルソールのメガネ化でした。近視のs-6.00付近で乱視もあり、クラウンガラスで製作出来なかったので、今回はガラス1.70の非球面、アッベ数52の良いレンズ入れました。基本的には、高屈折になるほどアッベ数が落ちる傾向にありますが、1.70のしかも非球面のみアッベ数52が存在します。特異点的存在です。

80年代ブーム、シティ・ポップブーム、色々あるんでしょうけど80年代に対するイメージとしてフワッとしていて丁度良い感じとか、優しい柔らかい印象を抽出しているっぽいですけど、意外にメガネは真逆のしゃきっとした雰囲気があります。スクエアのフレームとなったときに、タートとかモスコット的な柔らかい雰囲気のスクエアフレームをあまり見たことが無いので。この年代のスクエアフレームのキリッとした感じが、それだけで新鮮に見えます。

さすが高屈折、枠内に縁が収まります。比重が大きいので、それなりに重みはあります。

フラット
目のことレンズのこと

22.01.21

プラスチックのフラットレンズの改編がありまして、ようやく価格も決まりました。遅くてすみません。

今まではフラットCR(屈折率1.50)のみでしたが、新たにフラット60(屈折率1.60)とフラット67(屈折率1.67)が増えました。住宅ローンみたいな名前ですね。

改編のポイントは2つで、1つは度数に応じて屈折率を上げるようになったことです。度数が低い方は関係ないですけど、s-2.00,s-4.00の区切りで高屈折を選択することになりました。ざっくり、度数が強い方は薄くなる代わりに価格が上がる感じです。

もう一つポイントは、度無し(業界では平面と呼んでます)のカテゴリーが増えました。グッと値段が下げられます。これは嬉しいですね。

フラット強し
目のことレンズのこと

22.01.08

今年に入ってからもフラットレンズのご要望は多いですね。そういえばと思って、在庫分を改造してみました。

この前紹介した、フロントセルで腕がSPMのフレームです。敢えてのぺったんこな前枠なので、それに拍車をかけるようにぺったんこなレンズ入れるのはどうかなぁと思ってましたけど、良い感じに仕上がりました。丸いレンズ型に、フラットレンズ入れるのはブルバキを始めたときから推し続けていますが、今も変わらず良いなと思います。丸いレンズのもたらすふわっと優しい雰囲気と、平らなレンズの反射光からうけるシャキッとした雰囲気が、真逆な組み合わせのようで相性良い気がします。

ということでガラスのフラット、ノンコート入れてみました。

ツインカラー
目のことレンズのこと

21.09.24

久々のツインカラーでした。色の組み合わせは、アリアーテの前身であるアキュートカラーから。ほわほわ感があるんですけど、いまのアリアーテトレスと違うのは、色の違いをしっかり感じるのに、やっぱりなんだかほわほわしているところでしょうか。

染色見本を2つ送り、ツインカラーの指示を出すと出来ます。あくまでも近似ということですが、パッと見で同じくらいで仕上がってきます。

今回のご要望は仕上がりで上の黄色部分が多めで、ということでした。ツインカラーをそのまま注文すると、光学中心がレンズの真ん中に(幾何中心)あり、色の切り替えポイントもその辺に位置します。一般に遠用メガネをツインカラーで作りますと、ツインカラーの下側に指定した色が多めに表現されることになります。

ツインカラーの上側多めとなりますと、操作が入ります。アイポイントをある程度上下に動かすこともあるでしょう。あまりにもレンズとフレームのレイアウトが崩れるような配分になりそうなときは、注文時に始めからハーフラインの指定をします。

一応7:3で指定した生地がこちらです。6:4にも見えなくないですが、そこまで厳密にはいかないのであしからず。微調整は、枠入れのレイアウトでカバーです。

トップ画像よりも、色の移り変わりが分かりやすそうなので載せます。仕上がりで、上の黄色が7くらいで下の青が3くらいになりました。 この色の組み合わせ良いですね。

雑談
目のことレンズのこと

21.09.19

話のついでに、不同視について。

定義が曖昧で、具体的にどれくらいの左右の度数差を不同視と呼ぶのかがはっきりしていませんが、だいたい絶対値の差で、(2.00〜2.50)離れるとそう呼ばれます。なので、お客さんから検眼前に「私って左右の視力に差があるんだー」的なジャブを頂くことがちょくちょくありますが、基本的にはこの不同視と呼ばれるくらいまで差があるケースに当たることはあんまり無いですね。例えば、人間の顔面も完全な左右対称では無いように、目もそんな感じに多少の差はあるのでしょう。

不同視は、とにかく考えることが増えます。理論をそのまま形に出来ないケースが何パターンもありまして、点の答えが得られないときが多々だからです。領域を示すことで解の存在を述べることは出来ますが、具体的な表示は得られないわけです。絶対的な答えが消失します。この辺にあんな感じのがあるわーというくらいまでしか言い切れない、ここにコレがあるとまでは言い切れないという感じです。

度数に応じて、像の拡大縮小効果の大小があります。プラスレンズであれば拡大効果が、マイナスレンズであれば縮小効果があり、共に数値が大きければ、それぞれの効果も大きくなります。近視の矯正にはマイナスレンズが使われており、程度の差はあれ、目ん玉が小さく見えてしまうことが避けられないのはその為です。

それでですね、他にもまだ考えることはありますが、この拡大縮小効果を取り上げてみます。この効果も、不同視においては数値通りの眼鏡製作で良いかどうかに一石を投じます。

例えば、右s+2.00・左s+5.00として、像の拡大率を計算してみます。初等の光学では、理想的な状態のみを扱って理論を習うことが多いです。薄レンズとして厚みを無視できるものとして習いますが、実際のレンズはもちろん厚みがあり、もう少し複雑です。

レンズの前面カーブの値が要るので、その仮定次第で拡大縮小率も変動しますが、大体右で5パーセント、左で12パーセントくらいの拡大率となりました。この拡大率の差が、今回では7パーセントくらいありますが、大きいのか小さいのかが問題です。大きければ、それは人間が頑張って慣れて、埋めようと努力しても埋まらない差となりますから、度数を矯正しようとして別の問題に直面することとなります。

この差が大きいかどうかは、不同視が絶対値の差で2.00〜2.50以上を指す場合が多いことを鑑みますと、経験的にそして一般的に大きいんでしょうね。一般的には大きいんでしょうけど、当たり前ではありますが個々人にとって大きいものであるかどうかは、分からないと言う方が正確だと思います。科学というものは、どこまで分かってどこから分からないのかを明瞭にすることを目的としますから、ちゃんと科学的なステップを踏んで、分からないに到達すること自体はネガティブで落ち込むようなことでもなかったりします。ですが、最後は物として販売する以上、分からないままは許されません。許されないと言いますか、分からないままどれかの方針に決定をし、アウトプットをしなければなりません。また、例えば臨界期というような不可逆な時期であるというような条件が加われば、その決定の重みは増します。重みが増すので、慎重になって考えれば考えるほど分からないが増えますし、それぞれの方針が対立してきてしまい、製作者は迷宮にはまります。

不同視をキーに、雑談してみました。デザインと葛藤みたいな話もあると思いますが、科学とか医学とかの領域の、それこそ絶対的っぽい度数にもありますよというだけの話でした。

参考値
目のことレンズのこと

21.05.21

もう何年も前に、ガラスレンズは各屈折率で比重が異なってくるので、レンズの選定はむずかしいですなぁみたいなことを書いた気がします。例えば屈折率をあげたことで縁厚が削れますが、比重を加味しますと本当に軽くなったんかな問題が立ち込めてきます。しかも盲点なのが、凹レンズの中心厚(一番薄いところ)が要素として入ってきます。度数によっては屈折率を上げた時に、縁厚は薄くなっても設計上中心厚は増すなんて事も起こり得るからです。さてさて。

ブルバキさんの目がテン!ということで、実際に擦り分けてみました。ガラスの球面設計で、1.70と1.52です。

  • FPD70(48□22) 天地38.5ミリ
  • PD 右:35.0ミリ 左:34.0ミリ
  • 高さ 右:中心より2ミリアップ 左:中心より3ミリアップ
  • 度数 右:s-5.25 c-0.75 ax180 左:s-4.50 c-1.00 ax165

ざっくりどういう状況かと説明します。度数は、そこそこ強めです。ピントが20センチくらいで合っている眼です。たとえば、風呂は眼鏡なくても入れる程度の近視です。それぞれのお店でどういう方針かは分からないですが、どうなんですかね、セット料金からちょっと増額してプラスチックの屈折率1.67とか1.74とかの薄型レンズを勧めるお店もあるんじゃ無いでしょうか?そういう度数です。

FPDとかPDとかは、フレームの右目も左目も(特に右目側)それぞれ真ん中付近にレンズの焦点があることが読み取れます。加工するとぐるっとレンズの厚い部分が都合よくカットされて、割とそもそも縁は薄く、つまり軽く出来るセッティングであるということを意味します。

今回、屈折率1.70は比重(2.99)です。屈折率1.52は比重(2.41)でした。プラスチックレンズは、だいたいどの屈折率も比重は(1.30)付近でして、ガラスはプラスチックの2倍くらい重いというのはここからきているのだと思います。

右レンズ同士、向かって左が屈折率1.70で右が1.52です。写真上が、ともに右耳側の縁です。FPDとPDの関係から、仕上がりが自然に薄くなることが読み取れますが、実際に比較するとこれくらいの厚みでこれくらいの差です。だいたい、面取りのさじ加減もあるのでなんとも言えませんが、1.70で3.2ミリ1.52で4.2ミリでした。さぁ、ここで重さを比較してみます。

1.70の右レンズ
1.70の左レンズ
1.52の右レンズ
1.52の左レンズ

私の予想は、1.52が2割くらい軽いかなと思っていました。そこまでの差は生じませんでしたが、やはりペアで1.52のほうが軽い結果となりました!!縁の厚いレンズの方が軽いという結果です!!左レンズだけで比べると、もちろん1.70の方が縁は薄いのですが、重さは色々あって一緒なんですね。右は、これも色々あって1.52の方が中心厚が薄いとかその辺もおそらく合わさって、軽かったです。

ガラスの特色や利点の一つとして、薄く出来るというポイントがありますが、薄く出来るということで留めなくてはなりません。これが軽くするために縁を薄くする、つまり屈折率を上げるとなると、そうならないケースがあるわけです。今回の条件では、見事にそうでした。ひょっとすると、s-8.00くらいなら(風呂入るのに眼鏡が欲しいくらいの近視)、やっぱり薄型で縁の少ない屈折率1.70の方が軽いという結果だったのかもしれません。

ということで薄くすることと軽くすることの分裂は、比重の差によって生じます。それは実際に加工してみるまで分からないということになります。

ちなみに表題を参考値としましたのは、秤が家庭用の食品用なので。金地金じゃ無いので、、まぁ、、、その辺はいつの日か設備を整えます。一応説明書見る限りは、計量精度(±0.2グラム)です。今回の差では、いずれにせよ1.52の方が軽いという結果になります。ちなみにちなみに風防無いので、閉め切って息を止めて計測しています。

_170831bk

pageTopLink