カテゴリー:修理とメンテ

生きてましたよ
修理とメンテ

19.06.16

お持ち込み。初めはこんな感じ。このくらいの状態だと、やってみるまで使えるかどうか分からんです。中が生きていれば何とかなります。めっっっっちゃ時間かかりますけど。むしろ、表面がつるっと綺麗でミントコンディションという謳い文句で買ってみても、水に浸けて爪でひっかいたらボソボソ剥がれるなんてこともあるので、まあやっぱり古いものは、いつになっても怖いですよね。

元のマイナスネジが舐めきっていたので、問答無用でプラスのレッドネジに変更です。ついでに鼻盛りも。

もちろん、型直しの際に、適切にフレームは温めて曲げていきます。ちんちん(方言です)に温めるわけでは無いのですが、割とそれによるダメージはどうだ的なことも訊ねられます。おそらく、この程度の温めでダメになったということは、そもそも生地がボソボソだったり、よく見たらクラックが入っていたり、そういう初めから元気がないフレームというパターンかもしれませんね。それかレンズがデカイとか、そんな感じなのかなぁとは思っています。

足の取り付け
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19.06.13

現行のMATSUDAのお持ち込みです。昨年、展示会のついでにドーバーで拝見しましたが、しっかり触るのは初めてでした。

まじかあ、という第一印象。リムを眉部分に留めるネジが、鼻盛り部分に掛かっています。ネジ2ミリくらいズラせなかったかな、、、ズラせなかったからこうなんでしょうけど。

やはり鼻盛りは難しそう。綺麗に鼻盛りのプラスチックに穴をあける自信が無いので、こうなります。足の取り付けです。これも足がネジ穴に掛かっていますけど、コレは避けてネジ止めすることは容易に出来ますから、良しとします。

横から覗くと、空隙やえぐりが大きいので、埋め込む箇所には気をつかいました。とりあえず上手くいって安心です。フロントにも貫通しないようにもちろん気をつけています。

いまはチタンのパッドがありまして、それなんかはMATSUDAの世界観にはピッタリです。フィッティングが向上しつつ、メガネの存在感が増してカッコ良くなるならお得ですね。

今年もこの季節になりました
修理とメンテ

19.05.22

鼻盛りです。

驚きました。ストレートテンプルのトムフォードがあるんですね。しかもクリアの濃紺。60年代によくあるパターンなんですけど、カッコいいです。参りました。

レンズの形状がミソです。例えば向かって右側、業界では左レンズの第2象限にあるカーブが、リムの下がり方に沿わずブリッジ上部に向けて突き出しています。そして目線をテンプル側へ移しますと、レンズの輪郭はそのまま緩やかに第1象限に向かって下がっていまして、リムにブローフレームのようなグラマラスな余白が生まれています。アウトラインは普通のウェリントンより堅い雰囲気なのに、レンズとリムの余白はやや女性らしさも含む色っぽさがあって、尚且つレンズ端はタレ目でどこか優しい雰囲気も秘めています。雰囲気のお子様ランチです。全部入っています。

セルのゴツさを、テンプルの真っ直ぐ抜けた感じ、視線移動の潔さと、クリア生地の透明感で相殺しているところもポイント高いです。なんとなくアクティブな感じもするけど、フォーマルな感じもします。別にトムフォードの代理店からマネーが発生しているわけでも無く、取り扱う予定がある訳でもなく、ただただ驚いたので書き留めておきます。プロのデザイン凄いですね。

で、このタイプのストレートテンプルは、フィッティング不良の場合は耳が千切れるように痛いです。難しいんです。眼鏡屋泣かせです。

消えた構造というのは、やはりそれなりに理由があります。プラスチックのストレートテンプルは、やはり下がりやすいです。しかも、耳の上端に負荷が一点で掛かりやすく、メガネを上げ直す回数が増えると擦れて痛みを生じます。今回のケースも、おそらく過去に、上が切れて出血を伴っていたような痕がありました。

今回は、いつも以上に気を使って鼻盛りです。具体的には、鼻パッドの角度です。土台を斜めに残して融着させました。パッド先が鉛直方向を完全に向くようにしました。

テンプルを水平にしてみますと、パッドの先が地面を向いています。これによって、メガネの重みが、鼻にも分散してしっかり乗っかるようになり、耳への負荷が軽減出来ます。

この辺の見た目はいつもと同じです。

整髪料でやられたテンプルも磨いて戻しました。メガネも、1日一回は洗いましょうね。

あとはフィッティングで、耳の添わせを適切に合わせて終了です。

ガラスの枠入れ
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19.04.24

タートのお持ち込みがありましたので、ガラスのフラット、ノンコートを枠入れしました。温めなくても、コツが分かればレンズ外せます。ギリギリの大きさを狙いました。レンズを拭く際に、フレームの中でガタつかないので、ひさびさながら良い仕上がりです。クリア部分が生成りっぽいので、出来る限り干渉を抑えたいという判断に依るものです。

もう一年くらい前ですけど、この周辺のフレームを取り扱っていないことを伝えたときに、「専門外じゃん」みたいに言われまして、それ以降、専門外でも良ければ頑張りますよの精神で承けております。むしろ、物が置いてあれば専門店になれるんだったら、ヴィンテージ眼鏡店って簡単だなと感じたことをいまも覚えております。そのときからヴィンテージメガネの専門店にはならずに、街の眼鏡屋を目指そうと誓いました。ヴィンテージも置いてある店くらいな雰囲気です。まあでも、一応古い眼鏡しか置いてないんですけどね。ヴィンテージは手段であって、ひとつの入り口くらいに考えています。ブルバキは別の入り口からでも歓迎ですよ。

お持ち込みの際に、フロントの歪み直し云々のご要望を伺いますが、レンズのご注文であれば不要です。枠入れの際に、もちろん可能な限り直します。リムの歪みが原因のことが多いので、実際には枠入れと同時に直ることも多々です。

直してねと、よく言われるので本当にただ嵌めるだけのケースが多いのでしょうね。値段もありますし、それぞれの店にそれぞれの経営課題と方針がありますから、眼鏡屋であれば必ずやるべき、とは言えない項目だと思います。

面取りは、ガラスなのでやや多めです。前面はプラスチック同様少なめです。

箱足取り付け
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19.04.23

ネイティブサンズのメガネ。ブルバキも、とうとうアパレルの流れが来はじめましたかね。初です。ウェイファーラー系なんですけど、リムの緩急のつけ方と横幅を小さくすることで、ウェイウェイ感が控えめでカッコいい感じになっています。リベットもゴツくていい感じです。

で、問題はこれを女性がつけているということです。男向けで鼻幅が21.5(ボクシング表記で0.5というのは初めてかも)、さらに腕が145ミリです。

鼻盛りのご依頼でして、プラスチックを付けようか足を付けようか迷いましたが、足にしました。

修正前です。水平になるようにテンプルを置いた時に、鼻パッドの方向が鉛直方向に向いていません。お客さんの要望の中に「フロントが重たい」というのがありました。テンプルの添わせがありませんでしたから、フィッティング不良による重量バランスの崩れも考えられます。それともう1つはこのパッドの方向です。掛けた時に鼻パッドが鉛直方向を向いていない場合、鼻で支えきれません。懐かしい、物理のモーメントが発生します。それでメガネが飛び出ます。重量バランスは一層崩れ、重みを感じる訳です。

このフレームのカッコよさは、横にも潜んでいました。テンプルの傾斜もウェイファーラーみたいにキツくかかっています。頬っぺたに触れれば化粧が落ちるので、そこも回避したいところです。そうなりますと、やはりフロントとの距離を確保しつつ、鼻パッドの方向を鉛直方向に持っていくべく箱足の装着となります。

もうちょっと鼻パッドの角度をつけてもいいかも。とりあえずほぼ鉛直方向に向きました。確かに箱足をつけますと、セルフレームのスッキリとした醍醐味が失われますが、昨今はチタンパッドがあるおかげで、さほど野暮ったくなりません。箱足の取り付けも、必要であれば積極的に施していきます。

よくある修理
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19.04.19

鼻のところが、ゴキッと捥げちゃうパターンです。この手の時代のものは、全然全ての観点において最強最高でも何でも無くて、金属は柔らかくロー付け部分は弱いです。気を付けないと、こうなっちゃいます。熱処理なのか何なのか、金属の鍛え方は、今のほうが当然優れています。だからこそ、これはフルビューの保護メガネタイプでしたが、なんとか堅牢さを付加するためにリムも智も全部太くゴツくしてあって、それが現代には無いカッコ良さを秘めているという感じでしょう。

オススメ修理は、両方箱足に変える、です。どうせベークライトの鼻パッドもいつかは割れてしまいます。交換パーツを手に入れることは、まず難しいでしょう。そしてロー付け箇所が、また折れる可能性もあります。であれば、交換パーツの供給が豊富で、尚且つ折れにくい現行の箱足に変えた方が、長く付き合えると思います。

やや、刻印部分にはみ出してロー付けが。
交換後。チタンパッドがチラリしてます

古っぽさと、堅牢さが売りのフレームですから、チタンパッドは素材としては最新ですが、堅牢さを加えるにはもってこいです。色付きのパッドが差してあれば、遠目で古っぽく見えますから、これくらいで良しとしています。

顔幅
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19.04.18

未だ、ネットはすごいなと感じるタイミングがありまして、それは入店早々「鼻盛りして下さい」と伺うときです。業界用語が、さも標準語のように浸透しているのは、ちょっと考えると凄いことです。むしろフレームの方を盛っているのに、それでも鼻盛り。フレームの鼻当ての部分を盛るから鼻盛りか。

暖かくなってくると、メガネが下がる季節です。本当にややこしくて説明しにくいですが、何だかんだ鼻だけ直して、メガネが下がるのが解決出来ないことが多々です。もっと複合的です。

トップの写真は、修正後です。顔幅(業界では側頭幅)140ミリに修正しました。この修正も、腕の付け根の部分をこちょこちょ弄って曲げただけでは無くて、レンズサイズを小さくして、リムも曲げています。正確には、初期のレンズサイズが0.3ミリくらい大きく、尚且つ非球面レンズで1.5カーブくらいの割と平らなレンズをちょっと無理矢理嵌め込んだ感じでした。それに従って、フロントが開いてしまったのでしょう。解決すべく、レンズを小さくして、フレームのカーブを元に戻した感じです。

今の若いひとたちは、総じて顔が小さいです。平均でマイナス10ミリ、男の人で150ミリくらいかなと思います。今回、フレームが下がり易かったのも、耳後ろの添わせの不良で摩擦が足りずに滑り落ちるのもありますが、もう一つ原因は折角のバネが活かしきれていない状態でした。

まつ毛が当たることもあって、鼻盛りも行なっています。バフがけもして、気持ちよくリスタート出来るように準備しました。

進化
修理とメンテ

19.04.11

トムフォードの鼻盛り(アジア用)が、さらに良くなっていました。リムのラインより内側から、鼻パッドのカーブが迫り出しているのが何となく分かりますでしょうか?段差をつけて、正面からは鼻パッド部分が迫り出しているようには見せない工夫がしてあるので、実物見ないと分かりにくいかもしれません。

ヴィンテージ眼鏡店と言いつつトムフォードをずっと見てきましたので、進化・成長を見守っている感覚が芽生えています。昔の、美宝堂のCMを見ている気分です。

平たい顔族の私でも、ガシッと顔に乗りました。


今回のご依頼は、それがゴツゴツして痛いので取るという作業です…。鼻が高くて、尚且つ目と眉毛の距離が近いから、眼鏡をかけるとリムと眉毛が重なって可笑しくないか?みたいな相談も受けましたが、それはつまりイケメンということであって可笑しくないし、皆んな羨ましいと思っていると返事をしております。お互いに無いものねだりなんだなと、改めて感じます。

リムの修正も行なっています。他所で枠入れをした物でしたが、全体の傾向としてレンズがデカイ場合が多いです。尚且つ、面取りをする店が減ってきています。そして一回り以上大きく角が立ったレンズを無理やりはめ込む際に、リム周りを浅く抉っています。フレームを温めていれば、なおさら抉れます。

写真は修正した後です。レンズ周辺に擦り傷がある場合は、枠入れで擦ってます。折角のメガネなのに美しくないので、ここに届いたものに関してはある程度直します。今回は-0.4ミリくらい調整し、面取りのあと熱を加えずに枠入れを施しました。度数も弱く薄いレンズだったので、歪みが出ていたかもしれませんね。

とりあえず滑らかに、2ミリくらい広がったと思います。

シリコン
修理とメンテ

19.03.29

向かって左です、右テンプルに被せて反対は比較の為、そのままです。もとは肌色の樹脂がコーティングしてありましたが、バリバリに劣化して剥がれ落ちてしまいましたので近い物で代用です。だいたいテンプルの径が1.2ミリ、このシリコンチューブが0.9ミリですから、ぴったりと被さります。抜け落ちません。空気をしっかり抜けばより密着して色々と安全です。

巻きつるかと思いきや、ただの長いテンプルを巻きつる風に曲げただけのタイプでした。先が尖っていますから、樹脂を捲って終わりといかず、シリコンで保護です。

本物のケーブルテンプルでも、そのまま使えばいつかは地が見えてしまいますから、早い段階で被せてもいいかもしれません。滑りにくく、やわらかいので装用感の向上も見込めます。

被せる前
被せた後

斜面に対する鼻盛り
修理とメンテ

19.03.12

色々悩みましたが、ひさびさに水平面では無いところに盛りました。貼り付けタイプという手もありましたが、幅も高さもどっちも求めたい場合でしたので、パッドも土台も切削が要るやり方で行いました。

斜面に対する鼻盛りで、全く気泡無しは初めてかも。明日以降、磨いていきます。

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